くらしとバイオプラザ21

くらしとバイオニュース

HOME
What's New

くらしとバイオニュース

バイオイベント情報

やさしいバイオ

リンク集

バイオカフェ

くらしとバイオプラザ21とは

遺伝子組換えイネ栽培試験が始まりました

 5月20日(火)独立行政法人農業技術研究機構北海道農業研究センター(札幌市豊平区羊が丘1番地)本館大会議室において、説明会が行われました。また、20日の説明会では説明が不十分として再度説明会の開催が求められたため、29日(木)にも、再度、標記説明会が開催されました。(30日には消費者の立会いのもと田植えが行われました。)
 くらしとバイオプラザ21ではイネゲノム解読のニュースでも愛知農業試験場で開発された除草剤耐性イネ「祭り晴」の商品化申請取りやめについてお知らせしましたが、今年は、農林水産大臣の確認を受けた遺伝子組換えイネを北海道の開放系(試験場内の水田)、茨城県と岩手県の隔離圃場において、研究のための栽培が行われます。
 5月20日、29日の2回の説明会では、はじめに所長より本説明会開催の趣旨について説明がありました。試験栽培されるイネについて、試験栽培の方法、イネの花粉飛散や品種育成の意義等の説明が行われました。主な説明内容は次の通りです。

 北海道農業研究センター(説明会資料など)

第1回説明会 北海道農業研究センター
第1回説明会 北海道農業研究センター

「組換えイネ」の花粉飛散とその対策について
北海道農業研究センター作物開発部長 山口秀和

 イネの花粉の寿命は一般に3〜5分で、最大で10分程度です。一般圃場における花粉飛散は10数メートルの範囲に収まっているため(同センター周辺の地図を示しながら)、近隣の一般農家の水田まで4キロメートル以上あることを考えあわせると、花粉飛散による交雑が起こるとは考えられません。

「組換えイネ」の育成経過および研究計画について
農業生物資源研究所 田部井豊

 今回栽培される組換えイネは、北海道で育成された品種「キタアケ」に、トウモロコシなど高い光合成能力を示す植物のC4型ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)の遺伝子を導入したものです。根から有機酸を分泌することから酸性土壌に強い株としての利用も検討されています。本組換えイネは、平成8年に開発が始まり、11年度に閉鎖系温室、12年度に非閉鎖系温室(文部科学省の指針に従う)、14年度に隔離圃場(農林水産省)の安全性試験に進み、平成15年4月28日に開放系利用に関する農林水産大臣確認を得たイネです。これまでの安全性評価試験において、導入遺伝子の存在や発現の確認や、雑草となって生態系に影響を及ぼさないかなどの試験を行うとともに、花粉飛散性についても、組換えイネの周辺に植えたイネから得られた種子3,600粒を調べたところ、交雑が起こらなかったことと、非組換えイネとの差の無いことが示され、確認されています。ただし、食品(厚生労働省)や飼料(農林水産省)としての安全性試験はまだ行われていません。また、本組換えイネはすぐに商品化する予定はなく、栽培適地である北海道で栽培を行い、収量向上のための品種開発研究の一環として栽培試験を行うものです。

北海道農業研究センターにおける「組換えイネ」の栽培試験と
基本方針について
同センター研究基盤部長 奥野員敏

 遺伝子組換えイネは開花期と風向を考慮し、同センターの水田の一画に栽培する予定。開花は7月末、収穫は9月末の予定。今後の試験の進め方として、本試験は完全公開とし、分析等に興味のある団体についてはその参加を歓迎します。開花期には組換えイネの周囲に花粉飛散を確認するためのイネを配置し花粉飛散性を確認し、栽培水田の周囲にはフェンス等を張り盗難等に備え、試験場で栽培されたイネは全て試験に用いて一般には流通させません。


 質疑応答では数名から活発な質問、意見が出ましたので、会場での聞き取りをもとに大体の内容を次のようにまとめました。

環境への影響のこと

1) メキシコのトウモロコシの原種が組換えトウモロコシと交雑したという話を聞いたが、説明された花粉飛散試験の結果だけでは、もしも、少しでも花粉が飛んで来たら栽培している有機米に交雑が起こらないか不安を感じる。
2) 酸性土壌の耐性農作物の開発というが、それは発展途上国の問題である。それらの国に手を差し伸べたいのなら、それらの国に対して特定の企業が遺伝子種を売りつけることをやめるべきである。そのように開発された遺伝子組換え農作物の栽培に日本が関わるのはおかしい。
3) 試験栽培した遺伝子組換えイネの収穫後に回りの水田に植えたイネの遺伝子を調べて、その交雑の具合によって、更に外郭の水田(試験場内)のイネを処分するかどうか判断するという説明だった。危ないものは今から処分を決めるべきで、収穫後に検討するとは花粉飛散に対して真剣に考えているとは思えない。有機の認証を心配する我々の気持ちがわかっていない。
4) とにかく今年は隔離圃場で栽培してほしい。有機米と交雑したときに責任がとれるのか。

説明会の開催のこと

1) この説明会の開催時期が農家が忙しい時期、時間を選んだことに不満を覚える。
2) 市役所にチラシを置くぐらいでは開催を知らせる意志があったと思えない。
3) 説明会の案内と開催日に時間的余裕がなく聞かせる意志があるのか、単なるアリバイ証明をしたいだけではないかと思う。

食品としての安全性のこと

1) 大腸を切除した人の人工肛門から分解されていない挿入遺伝子(遺伝子組換え作物に組み入れられた)断片が見つかったそうだが、それは今までのように組み換えられた遺伝子やそのためにできたたんぱく質は分解されるから危険はない、という説明を覆すものである。そのような食品として不安なものを、この時期に北海道で試験栽培する必要性が認められない。
2) 日本は遺伝子組換えイネを使わなくてもうまくいっているのに、そのような食品として不安のあるものを栽培する必要はない。

組換え技術の推進について

1) 開発から開放系利用まで8年もかかっているのは時間をかけすぎである。もっと速やかに進めることを考えてほしい。
2) 有機農業を行っている人は有機農業こそが正しいようなことを言っているが、いろいろな方法や価値観があることを認識すべきで、遺伝子組換え技術が必要で重要であると考える人間も多い。

その他

1) 遺伝子組換え技術ばかりでなく、ガンマ線照射などでつくられた従来の品種改良で作られた作物の遺伝子も自然にうまれている遺伝子ではなく、これらも生態系に移動することがあり、従来の品種改良によって作られた作物の遺伝子の移動を論じないで遺伝子組換えの遺伝子だけが生態系に影響を及ぼすと考えるのはおかしいのではないか。


 参加者から遺伝子組換えイネ試験栽培に関する質問以外にも日本の農政への不安、不信を訴える発言があり、私たち消費者は日本の農業のことを含めて「食」を真剣に考えなければならないことを感じました。また、このような取材の場で、農業の研究をする立場と農作物を作ったり売ったり食べたりする立場の間に飛び交う、厳しいことばのむなしさを考えてほしいと思います。私達は敵対するのでなく、「今」考えたり取り組んだりすべき時だと思うのです。

 北海道農政部道産食品安全室では「食の安全・安心フードシステム」の検討を2002年6月から行っており、道産食品独自認証制度(検討会議資料など)を設けることを決定しました。対象は農産・畜産・水産物と加工食品で、遺伝子組換え農作物、遺伝子組換え農作物を用いた加工食品は対象としていません。遺伝子組換え食品に対する消費者の根深い不信感がその背景だとされております。しかし、まったく科学的根拠のないものだといわざるをえません。








ご意見・お問合せ メール bio@life-bio.or.jp

Copyright (c) 2002 Life & Bio plaza 21 All rights reserved.