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第1回草の根バイオカフェ「いのちの星・地球〜宇宙に生命は存在するか」

2010年1月23日(土)、三鷹ネットワーク大学で、第1回三鷹草の根バイオカフェを開きました。お話は国立天文台普及室長・准教授縣秀彦さんによる「いのちの星・地球〜宇宙に生命は存在するか」でした。 この企画は、「生命の星、地球」と言われながら、天文とバイオが一緒に考えられる機会が少ないことから、国立天文台のお膝元でバイオカフェに興味のある方、星が好きな方、両方が集って何かできないだろうかと考えたものです。三鷹ネットワーク大学は初めてのお客さんも半分いらして、楽しいひと時となりました。

縣先生のご紹介 会場風景

お話の主な内容
 1.宇宙に生命は存在するのか

大昔から人は宇宙人がいると思っていた
ナスカの地上絵に宇宙人らしき絵がある。2年前にペルーに行く機会があり訪ねたが、予想より小さく100メートルくらいのものだった。私は直感的に人が描いたものだと思った。500年前くらいにできたそうで、当時の計測の技術で十分できるものだと思った。
とはいえ、人はいろいろな地域で昔から、「宇宙に生命がいる」と感じていたようだ。
4000-5000年前から、世界のいろいろな地域の人が星を点でつなげて星座を考え出している。古くに生まれた星座のテーマは神や生き物。これは宇宙に生命があるという、人類共通の思いがあったからではないか。
〜会場で宇宙人はいると思う人、いないと思う人で手をあげたら、いると思う人が7割くらいで、いないと思う人は2割くらいでした〜

第二の地球を探す
宇宙人はいると思う人が、10-20年前は半分だった。最近「宇宙人はいる派」が増えてきた。一般に天文学者は楽天的で「いる派」が多く、生物学者は現実的で「いない派」が多いようだ。
面白いたとえ話がある。ラザフォード(物理学)、ポアンカレー(数学)、エディントン(天文学)が3人でスコットランドを旅したとき、金色の羊が見えた。
エディントンは「スコットランドの羊は金色だ!」といい、ラザフォードは「少なくとも黄金の羊が1匹はいるというべきだ」といい、ポアンカレーは「スコットランドには体の半分が金色に輝く羊がいるというべきだ」といった。このように天文学者は少ないデータから宇宙を研究するので、楽天的だという笑い話。
宇宙の生命に関する研究の歴史を語るときに次の3人は登場するだろう。それは次の3人。
1)エピクロス 紀元前3-4世紀 ギリシャ 空を見上げて宇宙にはきっとどこかに地球に似た星があり生物がいるだろうといった。
2)ブルーノ エピクロス同様に宇宙の生命の存在を主張した。コペルニクスの地動説を信じて、16世紀火あぶりになった。
3)ローエル 火星の表面に溝があるとイタリアの天文家が観測したときに、運河と訳されたために、資産家のローエルは私設天文台をつくって観測した。火星に生命は見つからなかった。
しかし、現在、宇宙にはまだ微生物すら見つかっていない。

地球の周りの星を見てみよう
月:
月には大気がないので生物はいない(できたときには空気はあったが、時間がたつと宇宙に逃げてしまう)。月の南北極に氷があることが最近わかったが、だから生物が棲めるとは言えない。大気や液体の水がないと有機物で構成される生物は存在しないだろう。

火星:
地球の200分の1くらいの大気があり、水は地下で凍結している。おいしいカレーを作るときに沸騰したお湯が必須なように、化学反応を起こすために液体が必要。
火星にはバクテリア程度の生物の生存の可能性はある。
昔、火星には大量に水があった。証拠は、マースグローバルサーベイヤー(火星探索のためにNASAから打ち上げられた)から撮影した写真(2005年)で、クレーターの淵に水が流れ出したような以前になかった跡が見つかった。間違いなく、今でも水がある!
火星の質量は地球の10分の1。軽い惑星ほど進化が早いので、火星の進化のスピードは速い。地球は重くて進化が遅いので深部はまだ融けたままだが、火星がもう少し重ければ地球と同じような進化の段階になるだろう。温度の条件は過酷だが、火星の地下に今、生物がいることも十分、考えられる。また火星の大気は金星よりずっと少ない。

金星:
金星の大気は地球の約100倍と多く、分厚い。高速で大気がまわっていて、地球の自転とは逆方向に自転している。日本の「あかつき」が金星を観測する。太陽に近すぎるので、水は水蒸気となり、さらに水素と酸素に分離して宇宙に逃げしまい、二酸化炭素が大部分。
一般に太陽に近すぎると水は水蒸気になり、遠いと氷になる。また星の質量が小さいとき、大気も逃がしてしまう。

地球:
地球に生命が存在できるには、いくつも幸運が重なって、水と大気がいい具合になっているから。
地球の磁場が太陽や宇宙からくる放射線を防いでいるのもそのひとつ(南北極から放射線がはいってきて、オーロラになって見える)。

エウロパ:
生命が存在しそうな星の候補に木星の衛星のひとつであるエウロパがある。
ガリレオはガリレオ衛星と呼ばれる、木星の4つの衛星(ガニメテ、カリスト、イオ、エウロパ)を発見して名前をつけた。イオは火山活動をしている。エウロパには100キロの厚さの海があり、凍っているが中心はとけた状態。ガニメデには、海があるかどうか解釈はいろいろ。エウロパが生命存在の可能性が高いと言われている。


2.太陽系外の惑星が見つかった!

1995年ペガサス座51番星の周りに惑星が見つかり話題になった。間接的な証拠から、技術的に確かめられるようになった画期的なできごとだった。今日現在、系外惑星は424個見つかっている。そのうち、国立天文台もいくつか発見している。太陽型の恒星の7-8割に惑星があると考えている研究者もいるが、見つけるのが難しく直接撮像されているのは2-3例。
系外惑星のほとんどは木星型惑星(ガスでできている)で、地球型(地球ぐらいのサイズで岩石でできた星)は少ない。
見つけ方は、ドップラーシフトという方法。ドップラー効果は近付く発音体の音波が短くなって高音に、遠ざかる発音体の音は低音になること。音と同じで、星の光の波長が長くなったり短くなったりする現象が見つかると、惑星が近付いてきたときに力の引き合いで星が動くから視線速度が変化し、光の波長の変化が観測され、惑星の存在がわかるという考え方。回ってくる惑星が重いほど、中心の星は首を振る。これはハンマー投げの選手が投げる前にハンマーを回しているとき、首をふるのと同じ原理。惑星の質量が小さいため、太陽はほとんどぶれない。

生命体存在の可能性
水が液体のまま存在できる温度の領域を「ハビタブルゾーン」と呼び、太陽からの距離で決まる。地球、火星はハビタブルゾーンに属し、水が液体で存在できるようなエネルギーを太陽から受け取っていることになる。
グリース581という星の4つの惑星のうち1個はハビタブルゾーンに属し、水があるかもしれないので、生命存在の可能性も考えられる。


お茶のコーナーには火星儀 「私は宇宙に生物はいると思います」


3.系外惑星を直接調べたい

系外惑星かどうかを確かめるには、惑星は恒星の光を反射しているだけだから、中心星と系外惑星らしき星の光が同じかどうかを調べればいいが、望遠鏡から光の星が見えないように遮光して観察するなどの工夫(コロナグラフ機能)が必要。
GJ758という恒星の周りに、ガス惑星を国立天文台すばる望遠鏡が発見したが、これは大気のゆらぎを補正する仕組みができたためで、このあたりが地上からの観測の限界。
大気圏外のケプラーという宇宙望遠鏡から、光の変化をもとに星の前を横切る系外惑星をみつけ、地球型惑星をみつける方法は2008年から行われている。一方、探査衛星で惑星をみつける計画が、米国、欧州、日本で計画されている。

光スペクトル
地球型惑星が見つかったとき、その光のスペクトルを見ると、二酸化炭素があるとき700μmの波長の光が吸収され、水があるとき1300μmの波長の光が吸収される。
オゾンがないと地上に生命は存在できないだろう。

コスミックカレンダー
宇宙が誕生した137億年前を1月1日として、今日までを1年とすると、
2月15日 銀河系誕生 120億年
8月31日 太陽誕生 地球誕生 46億年
9月下旬 生命誕生 38億年
31日夜8時 600-400万年前 人類出現
31日24時 現在

90歳の人間の寿命はたった0.2秒間
ドレークの式で、知的生命体の調べ方が示されている。宇宙の中の生命体に出会うには、人間がどのくらい長生きできるかと関係がある。人間の寿命はコスミックカレンダーでは0.2秒だが、人間は記録を残せる。記録を積み重ねることで文明・文化ができる。人類として長生きすることで生命体に出会えるかどうか。

長生きするアイディアの紹介
地球に優しいみどり人間になろう!植物の細胞は葉緑体を取り入れ、生物はミトコンドリアを取り入れて、今日生きている。
ところが、私たちの体表面積に葉緑体を埋めても生活に必要なエネルギーを賄えない。植物にはたくさんの葉があり、効率的に光合成をしている。
21世紀は、バイオ、ナノ、ITの時代という、宇宙の生命を探る旅はこれからも続くと思う。

三鷹ネットワーク大学の大朝さんのご協力を得て この会場ではアストロノミーパブやリテラシーカフェも開かれている

話し合い 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • 火星や金星に磁場はないのか→磁場は生命の存在に関係がある。金星には磁場はない。地球に生命体が存在できることには、木星のような大きな惑星があって地球への隕石のインパクトをカバーしてくれていることや、月があって日本の自転軸を安定させ、四季が穏やかであることなどの影響があげられる。動物学会長だった星元紀先生は微生物はしぶといから宇宙でも生き延びられるといわれている。
    • ヒトは水がないと生きられませんか。他のもので代用はできないか→炭素には4本の手があり、これが有機体を合成するキイになっている。ケイ素にも4本手がある。ケイ素で置き替わる仕組みもあるかもしれないと思が、化学反応は進みにくい。
    • 土星にはエタンの海があり有機物がある。水以外にエタンもキイになるのではないか→土星には有機物の海がある。7年かかって土星にカッシーニという探索機を送り、タールの海を観察したが、生命存在の可能性は低い。温度が低すぎる。
    • 天文学者のほうが宇宙人がいるというのはなぜだろう。生物学者が逆な理由は?→生命体があるといったほうが天文フアンを増やせるし、研究予算もつくかもしれないからではないか、バイオ関係者は生物はとても複雑で生命の存在そのものが奇跡に近いと考えているので、そう簡単に生命が宇宙にいるとは思えないのではないか。
    • 生物学者の方は、生命の定義などにこだわったりするので、簡単に生命がいると言わないのではないか。
    • 今日のように、生命体いる、いないと相反する意見が出て単純な話しあいをするのを会場で見ているという形式は面白かった。こういう話し合いなら、若い人も参加しやすいのではないか→バイオアストロノミーという分野があり、天文屋と生物屋が一緒に研究をしている。井田茂先生が有名。将来、バイオアストロカフェをしてもいいかもしれませんね。
    • 困ったこと、わからないことが起こると、宇宙人がした!という考え方をする人もいると思う。宇宙の生命体とは人間のロマンみたいなもの。わらかないことを宇宙人で片づけないのもロマンだろうか。
    • 例えばダークマターの研究はとても大きい予算が必要。スイスのセルン研究所で行われている。系外惑星の研究にも何百億もかかる。天文学者は知りたいが、ビッグプロジェクトとして進めるかどうかは市民の判断だと思う。
    • パンスペルミア仮説(生命の起源が地球外で生まれた生物にあるとする仮説)などがあるが、地球生命の誕生について最新の知見はどうなっているか→アミノ酸合成まではわかっている。しかし、地球の環境は他の天体に比べて特殊。そこまでくると、生命誕生の説明がつかなくなり、宇宙から生命の素は運ばれてきたという考え方が出て来るのかもしれない。例えば地球に生命の種が落ちて来た、彗星がぶつかって生命の種が受け渡された、地球の水は彗星がもたらしたという考えもある。生命について知りたければ火星探査、エウロパ探査をするしかないのではないか。系外惑星に知的生命体がいて、そこからの情報を受け取るとする研究もある。電波などを受けることに関する研究や、何億年前にコンピューターを送ったとする研究もある。
    • 太陽系の探査をして、太陽系に地球の生命体が汚染をもたらす可能性があるのか→宇宙船は宇宙に細菌を出してしまっているはず。直接的接触を天文学者は考えていない。不老不死の薬ができて50億年太陽がなくなっても生きていかれる仕組みがないかぎり、電磁波の情報だけのやりとりは可能性がある。5光年離れた星と10年かかってコンタクトするなど
    • 地球で火星の隕石が発見されたことがあるか→逆に地球が衝突した破片が金星や火星で見つかれば、金星、火星に生命存在の可能性が出てくるのではないか。