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シンポジウムレポート「カラダに良い菌、悪い菌〜知って納得!食の選択」

2009年10月31日(土)、練馬区役所地下多目的会議室において、東京都練馬区主催「食の安全・安心シンポジウム」が行われました。本シンポジウムは今年で5回目となり、食品安全基本法制定を機に、消費者と食品について「リスクコミュニケーション」として、2004年から行われています。昨年は健康食品が採りあげられました。今年は、食品と密接な関係のある「菌」について、第一部では二人の先生のご講演、第二部は参加者からの質問にパネリストが回答する質疑応答がありました。


講演     西野徳三先生(東北大学名誉教授)

ヒトの身体には目に見えないが、沢山の菌がいる。皮膚には顕微鏡で見ると無数の菌が共生している。毎朝の糞便の大半は菌(生死は別として)である。微生物と言うが、その「微」は数漢字であって「毛」の千分の一であり、一番小さいものを表す語が「清浄」である。
腸内細菌は善玉菌と悪玉菌に大別される。約100種類約100兆個いる。ヒトの身体は約60兆の細胞からできているが、それより多い。腸内細菌の分布が大切で、病原性菌に代表される悪玉菌とビヒズス菌などの善玉菌のバランスが健康と関係する。花粉症と腸内細菌の関係も分かってきた。腸内細菌が免疫にも関与している。
腸内細菌のバランスは年齢とともに変わり生後2週間目ぐらいで一定化し、その後、成年期を経て老年期になると善玉菌のビヒズス菌が減り、悪玉菌の大腸菌とウエルシュ菌が増えてくる。
京都大学の家森先生は食事と健康の関連を調査すれば寿命を伸ばすのに役立つと考え、実験の代わりに世界の長寿地域や短命地域の調査をした。コーカサス地方の食生活は、動物性タンパク質は多いが脂肪分は除かれている。塩を少なく香辛料で味付けしている。魚を食する。果物、野菜を多く取る。ヨーグルト、無塩チーズを食べる。コレステロール値が低く、ナトリウムが高いがカリウムも高い。脳卒中、動脈硬化を防ぐお手本的食生活であった。
名古屋の動物園で、コアラが目玉なので大事にし過ぎて死なせてしまった。清潔にし過ぎたためである。逆に、後進国ではO157が発症しないのも同じ理由である。海外旅行の下痢を防ぐには食前に善玉菌を飲むのがよい。発酵食品はストレスを防ぐなどいろいろな利点をもっている。
今まで、動物の話であるが、植物も同じである。土壌中には、畑10アール(100坪)中700Kgの菌がいて、これが消化機能を果たし、植物は栄養を取っている。このように菌は動植物にとって大切なものである。


講演     甲斐明美先生(東京都健康安全研究センター)

カラダに悪い菌であるが、食中毒を起こす菌は20種類ぐらいある。手指に化膿した傷を持った人が料理すると黄色ブドウ球菌による食中毒となる。カンピロバクターは食肉特に鶏肉に付いている。ノロウイルスは「かき」による下痢などの食中毒で有名となった。その他、ウエルシュ菌、セレウス菌、ボツリヌス菌などがある。加熱保存、再加熱保存を徹底する。ボツリヌス菌は空気のないところでもいきるので密封容器保存を過信しない。密封容器の食品による食中毒はほとんどボツリヌス菌による。
平成19年の東京都の食中毒(106件)は飲食店45%で、家庭10%で、家庭でも発生していることに注意すべきである。原因菌別では、第1位カンピロバクター、第二位ノロウイルス、第三位黄色ブドウ球菌、第四位ウエルシュ菌、第五位サルモネラ菌で、今年はノロウイルスは少ない。腸管出血性大腸菌は潜伏期間1〜7日間で、小児・高齢者は重症化しやすい。牛の腸にいて牛にとっては問題にならない。生肉を食べないようにする。生肉は新鮮であるが安全と別である。発酵食品は善玉菌の乳酸菌などが多く悪玉菌が増えることができないので優れている。和風キムチと言うのがあるが、これは発酵食品のキムチと違ってサラダに調味料を掛けてキムチもどきにしたものである。塩辛は食塩が10%ぐらいであるが、塩辛もどき食品は数%である。いずれも悪玉菌が繁殖でき食中毒の原因食品となる可能性がある。もどき食品には注意する。
腸管出血性大腸菌の一種であるO157は数百個で食中毒を起こす。この9月にも飲食チェーン店で結着肉で食中毒が発生した。成形肉、結着肉は小さな肉片を集め肉塊にしたものでO157が表面だけでなく中の方まで入っている。鉄板260℃に熱しても肉塊の中まで260℃にはならない。徹底的に中まで焼かなければならない。カンピロバクターは鶏肉に付着している。牛の胆汁にもいる。2〜3日の潜伏期間で、数百個で食中毒を起こす。豚レバーはE型肝炎ウイルスで怖い。冷凍の肉団子を鍋に入れても団子の中まで熱は通らない。レンジでも同じで肉の裏側は熱せられない。
調査すると、若い人の半数が生肉を食べているが65歳以上は食べない。トリさし、ゆっけ、生レバー、などがあるが新鮮と安全は別である。生肉は食べないようにしましょう。75℃1分で殺菌できる。


第二部 質疑応答

コーディネーターの堀口先生が質問を整理し、分りやすくまとめ、パネリストが回答しました。

コーディネーター順天堂大学助教授 堀口逸子さん
パネリスト東北大学名誉教授 西野徳三さん
東京都健康安全研究センター部長 甲斐明美さん
明治乳業(株)食品開発研究所 課長 有江泰彦
練馬区消費生活センター運営連絡会 会長 大島いずみさん

話し合い 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • 質問1:ヨーグルトは何時食べるのがよいか→何時食べてもよい。食べたいとき食べればよい。食べる乳酸菌が腸に住み着くのではない。その人が持っている菌を育てる役目である。
    • 質問2:アトピーが腸内環境に関係あるか→腸内細菌のバランスが免疫に関係している」と言う報告がある。はっきりはしない。
    • 質問3:ヨーグルトは開封してからどのぐらい保存できるか→保存方法にもよるので一概に言えない。賞味期限は密封状態でのことである。成るべく早く食べる。
    • 質問4:肉の話が多かったが、魚・生かきはどうか→魚は腸炎ビブリオで、海水18℃で増える。増殖が早いので低温保存が必須である。買い物の最後に買い早く帰って冷蔵庫に入れる。生かきはノロウイルスで減ってきている。衛生的取扱いが徹底されたためである。
    • 質問5:ワサビの殺菌効果は→殺菌作用はあるが、食品の保存には大量のワサビが必要である。さしみにワサビを付けるが、殺菌作用はその位の量では期待できない。梅干しも同じで果肉に効果がある。過信はしない。
    • 質問6:牛の生肉は危ないが、馬刺しはどうか→料理の衛生基準ができているが、全国のどこでも守られているかは分からない。話は別であるが、熊本のカラシレンコンはお土産用に密封包装したものを売り出したが、ボツリヌス菌の食中毒を起こした。ボツリヌス菌は酸素がなくとも生きられる。密封包装を過信しない。
    • 質問7:菌の毒素は加熱してもだめなのでどうすればよいか→黄色ブドウ球菌の毒素は熱に強いが、食品100万個/gで毒素が出るので、まず増殖させないのが一番である。
    • 質問8:レンジでの殺菌作用は→レンジで菌が死ぬのではなく、発生した熱で死ぬ。中が冷たいと死なない。
    • 質問9:手術によって善玉菌への影響は→乳酸菌飲料などを飲んで影響をなくすようにすべきである。
    • 質問9:抗菌グッズがいろいろあるがどうか→常在する菌まで殺菌してしまうように殺菌グッズを使い過ぎると問題である。使い過ぎないようにする。


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