バイオカフェレポート「うま味の秘密“アミノ酸と核酸”」
2009年7月10日(金)、茅場町サン茶房においてバイオカフェを開催しました。
お話は、秋田県総合食品研究所 所長(前 日本食品添加物協会専務理事)」の高野靖さんによる「うま味の秘密“アミノ酸と核酸”」でした。
始まりは池澤卓朗さんのバイオリン演奏でした。
池澤卓朗さんの演奏 | 高野靖さんのお話 |
お話の主な内容
高野さんは、うま味の成分として、アミノ酸の一種であるL-グルタミン酸ナトリウムと核酸の一種であるイノシン酸ナトリウムがあり、両者を混ぜるとそれぞれの単品よりうま味が増します(相乗効果のある)。こういう理由の研究をしながら、わたしは「だし屋」なので、プロのお蕎麦屋さんに使ってもらえるようなだしを作れないかに挑戦してきました。
参考ページ
「カツオと日本文化」
「うま味発見100年」
「日本人とカツオ文化」
会場風景1 | 会場風景2 |
話し合い
- カツオを燻製するときに使う木は何か
→クヌギが主でカシの木、桜の木も使う。インドネシアではマングローブを使ったこともあるがマングローブの保存のこともあり禁止された。 - カツオ節フレーバーの保存による変化についてガスクロ分析がされていたが、ガスクロの分析データを使って蕎麦屋さんはソバだしの評価に利用できるか
→できない。しかし、蕎麦屋さんは保存劣化のことをよく知っている。ガスクロは定量的に保存劣化を検討するのにはいい道具である。 - 甘味のグルタミン酸はL型であるが、D型は甘みが少ないと聞くがそのわけは
→体の蛋白質を構成するアミノ酸はL型であって、舌の受容器がL型にあうため - 関東と関西でのカツオ節の使い方の違いについて
→関東は厚削りの節を時間をかけて、しっかりした味のダシをひくが、関西は薄削りの節をサット引いて、香りを大事にする。会わせる醤油が関東は濃口、関西は薄口ということに符合すると思う。
参加者からの説明:そばつゆに関して、しょうゆとみりんで約1週間ねかす(「かえし」を行うという)。様子を見ながら「かえし」を行う。味付けには最終的には砂糖も使う。 - カツオのダシ引き釜のポイントは
→対流をうまく行い、水面は落ち着かせて、酸化を防いでいること - うま味の中での核酸の成分について
→新鮮なカツオで作る節はうま味の成分であるイノシン酸が多い。今は解決していると思うが、20年前の経験では、インドネシアでのカツオ製造は、温度管理ができず、うま味を引き出せなかった。 - 荒節から作る「ほんだし」について
→昭和45年から売り出した。昭和50年の後半から口コミでだんだん広がり、売れ行きが良くなるにつれて、これまで使われていたケズリ節が使われなくなった。それで「ほんだし」が食文化を壊したとも言われた。
今のスーパーマーケットのそばつゆはおいしくなっている。 - カツオの頭は何に使っているか
→自己消化させて調味料用として使っている。枕崎と焼津では鰹節製造の副産物を有効利用するシステムがある。
カツオも煮干し(煮てほす)にするカタクチイワシも鮮度が最も大切、パッと加熱することである。
香りとうま味を高めた節を求めて、製法、用途、品質の多方面の研究のために、味の素(株)はカツオ技術研究所をつくった。 - 味も食べ続けていると麻痺してくると思う。初心者もクロートの人にも長く売れるおいしさとは
→味になれる、飽きる、麻痺するなど、いろいろ研究されているだろうが、私はよく知らない。売れる商品は、家庭(消費者)で味付け加減ができるような工夫を持たせるものが長続きすると思う。 - うま味の歴史について
→第5の味として言われるようになってから20年程度の歴史。古くから中国等で昆布のうま味は強く認識されていた。函館周辺でマコンブが生産され、北前船、薩摩や琉球を経て、中国に輸出されていたが、今では、中国でも生産されるようになった。
古くはイタリアでガルムという魚醤*が使われていた。コロンブスがアメリカを発見してから、トマトが入ってきて、トマトが食用にされ、トマトの旨み成分(グルタミン酸)がガルムにとってかわった。
魚醤、穀醤を持つ、うま味文化圏は米(コメ)文化圏とかさなる。コメにはアミノ酸が含まれている量は少量であるがバランスがとれている。これに対して、小麦文化圏は、肉を食べて足りないアミノ酸を補給した(肉とミルク)。
魚醤*:魚を塩漬けにして重石をかけ、できた汁を濾しとったもの。魚肉タンパク質が魚の内臓にある酵素で分解されてできる。秋田のしょっつる。香川のいかなご醤油、石川のイカ醤油、ベトナムのニョクマムなど。調味料とする。うおじょうゆ。(大辞林)