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バイオカフェレポート「コンビニでOTC医薬品が買えるの?〜薬事法改正」

2009年5月8日(金)、茅場町サン茶房にて、バイオカフェを開きました。お話は、くすりの適正使用協議会理事長 海老原格さんの「コンビニでOTC医薬品が買えるの〜薬事法改正」でした。初めに福田徳子さんによるフルート演奏がありました。「アルルの女」などなじみのメロディが奏でられました。

福田徳子さんの演奏 海老原格さんのお話

主なお話の内容

お医者さんからもらう薬と大衆薬
新聞の5つの4コマ漫画を使って、お医者さんからもらう薬と大衆薬はどのように、一般の人に捉えられているのか、みてみましょう。

  1. 何でも予防注射があるなら、生活習慣病の予防注射もして!
  2. お医者さんの薬を余らせているうちに、「わからない薬」の箱がいっぱいになってしまった。
  3. お医者さんからいただく薬の種類が多いので、まとめてご飯茶碗に入れてかきこんで飲んでしまう人。
  4. 行動に伴って予想される症状に対する薬(大衆薬)を事前に用意している人
  5. 深夜、急に起こった症状に対する薬をコンビニに求める人

〜会場参加者に手をあげてもらった所、15人中10人がなんらかの薬飲んでいました〜
このように、薬については必ずしも、適正な認識がされていないことが示唆されたり、急場に薬を手に入れようとの思いが漫画から伝わってくる。 

薬の有効成分とジェネリック
薬は効く成分だけでできるのではない。効く成分(有効成分という)と賦形剤(ふけいざい)でできている。賦形剤は、味をマイルドにしたり、日光などで変化しないように安定化させたりするために必要。副作用は、有効成分だけでなく、賦形剤も考える必要がある。
ジェネリックとは後発医薬品のこと。開発した製薬会社以外の会社の医薬品には銘柄名でなく、ジェネリックネーム(generic name、有効成分の一般名称)が販売名につけられたことに由来する。ジェネリックは1番手と有効成分は同じでも賦形剤の部分が異なるので、同じとはいえない。

医薬品に関係する規制
一般用医薬品の定義:薬事法25条第1項第1号(効能効果が余り強くなくて薬剤師やその他の専門家から情報をもらって、買う人が自分で選び用いる医薬品)
医薬品を売るときのルール:第37条第1項(医薬品はお店で販売すること。なお配置販売(置き薬)はお客の所へ伺い配置する。薬事法ではお店で対面して販売することになっており、通信販売やネット販売は認められていない。ただし、行政指導で一部の医薬品については今まで郵送やネット販売を認めているがこれは例外)
一般用医薬品を扱える人のルール:薬事法36条の4(薬剤師以外に扱える専門家(都道府県知事の試験に合格、登録)である登録販売者も一般用医薬品を扱える)
店舗の条件:第26条(店舗が一般用医薬品を扱うに適した構造設備基準を充たしていなくてはならない。だから、コンビニも、基準にあった設備基準を満たすこと、また、専門家がいないと一般用医薬品を扱えない)

医薬品の種類
医療用薬品(お医者さんの薬)には処方せん医薬品と処方せん医薬品以外のものとがある。いずれも医療保険が使える。
薬局製造販売医薬品は薬局でつくられる。
一般用医薬品は企業がつくる。コンビで買えるようになる大衆薬は一般用医薬品に分類される。さらに。一般用医薬品は第1類から3類に分かれている。

薬局医薬品一般用医薬品
医療用医薬品薬局製造販売
医薬品

1

2

3
処方せん医薬品処方せん医薬品以外の医療用医薬品
(処方せんに基づく公布を原則とする)

第1類: 効きかたがやや鋭い。薬剤師から説明を受けてからでないと手にすることも買うこともできない(その際、薬剤師の後ろからカウンター越しに渡されるので、本当の意味でのOTC(over the counter)医薬品と呼ぶ)。有効成分は30種類くらいと数は少ない。例えば、胃潰瘍にも効く胃腸薬、発毛剤などである。市場規模は400億円で全体の4%。
第2類: 第1類ほど注意はいらないが、薬剤師(25万人)と登録販売者が扱う。例えば、去年から始めて2回の試験で6万人がすでに合格しており、他に同じとみなされる人が1万人ほど。具体的には風邪薬や解熱鎮痛薬などで、成分は699種類で数は多い。市場規模は5,600億円で全体の52%を占める。
第3類: 多少の注意が必要とされる。薬剤師と登録販売者が扱える。例えば、洗顔薬、ビタミン剤。成分は746種類と数は最も多い。市場規模は4799億円で44%。
このように市場規模でみると、登録販売者が扱えるものが96%にもなる。

第1類は特殊なものしかないと考えることができる。第2-3類は薬剤師の手を離れたと言えるのではないか。第2類には、風邪薬や解熱剤などのように、注意が必要なものもある。
一方、家庭においている常備薬はどんなものかを尋ねたアンケートを見ると、圧倒的に多いのは第2類であることがわかる
実際には、薬剤師の給料は高いので、コンビニでは専門家として薬剤師でなく登録販売員が置かれるのではないか。

スイッチOTCとダイレクトOTC
一般用医薬品は、文献で効果が示されている成分を含むもの、古き時代から伝承されてきた伝統薬(例えば反魂丹、百草丸、養命酒、実母散、宇津救命丸など)、そして近年お医者さんの薬であったものを一般用医薬品に転用したものなどがある。最後のものは転用したということから、「スイッチOTC」といわれ、第1類になる。ただし4年後には類別が見直されることになっている。なお、例外的なものとして「ダイレクトOTC」がある。ダイレクトOTCは医者での使用経験なしに一般用医薬品となったもので、直接なったということから「ダイレクトOTC」と呼ばれる。当然、第1類に入る。例えば、発毛剤。禿頭は生命にかかわらないので、毛生えは保険になじまず、こういう位置づけになった。ダイレクトOTC開発には膨大な試験データが必要で、時間とお金がかかる。いずれにしても「スイッチOTC」「ダイレクトOTC」については、企業はペイすると考えたものを開発するはず。

まとめ
薬は人体に対しては異物。様々な作用があるものと理解して下さい。薬は副作用があってはならないものという考えはやめ、副作用を抑えて有効な働きを引き出すものだと理解して下さい。医薬品は一面で見ずにいろんな角度から見て下さい。
医薬品には化学合成されたものだけでなく、バイオテクノロジーを使ったものもある。バイオテクノロジーの弱点も理解して利用する。これは医薬品と同じ。薬は多くのお金と時間、人手で作ってきたものだから、暖かく育ててください。
6月以降は情報を薬剤師、登録販売者から得て買う仕組みができるので、値段だけで決めずに情報を得てから医薬品を選んでください。


会場風景1 会場風景2

話し合い 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • 第1類に分類されるものは何か→スイッチOTCとダイレクトOTCが大部分。それと一般用医薬品を分類するとき、一般用医薬品での、患者に使ったときの情報が意外となかったので、お医者さんの薬での情報を利用した。
    • 薬事法改正はどうして行われることになったのか→平成11年と平成16年にも改正され、作用が緩和なものが医薬部外品になった経緯がある(例えば栄養ドリンク)。今回の改正は1)夜中に薬が欲しいときに買えると便利、2)薬種商が店舗でなく個人として独立したい、3)医薬品は情報提供して選べるようにすべきなどの意見があった。
    • コンビニは24時間営業だが、専門家がいない時間には一般用医薬品は扱えないのか→はい。
    • 日本は薬の規制は厳しいのか→日本は規制が強く、今回は規制強化と考える。
    • 第1類が増えると医者に行く患者が減るのではないか→そのためにスイッチOTCに反対する意見がある。
    • ネット販売を広げたいという意見があるようだが→第3類を増やして、薬が入手しにくい離島などの人を助けたいという意見がある。
    • 買う人はどの程度の情報をもらえるのか→皆さんも登録販売者か薬剤師かに注意してみてください。一般用医薬品には余り情報がないので、製薬企業が説明資料を作る役目を負うことになるが、買う人が質問したりしてそれを助長してください。
    • インターネットで副作用を公開してはどうか→インターネットでも、平行して情報提供する。
    • 第1〜3類の分類と薬価基準は関係があるのか→ない。
    • 医療用医薬品は全部の薬の何%か→91%。お医者さんでもらった方が7割負担でもらえることから、そのようになった。
    • 漢方薬はどこに分類されるのか→副作用も考えられるので、第2類になる。
    • 有効期限が切れた薬は効かないのか→医薬品をある条件下で長期に保存したデータをもとに有効期限は決められる。期限が切れても効かないわけではないが、期限が切れたら廃棄してください。
    • 禁煙補助剤を買いに行くと、副作用は大丈夫かと尋ねられる。なかなかやめられないことへの皮肉なのか、そのくらい危ない薬なのか→きちんと使えば危険なことはないが、ニコチンは毒なので心配されているのだと思いますよ。
    • 今後出てくるスイッチOTCはどんなものか。アレルギー緩和などか→日本OTC医薬品協会(http://www.jsmi.jp/)で出した候補医薬品を審議会で審議する。高脂血症のように症状の変化がある程度固定しているものなど、症状緩和を目的とするものが候補になる。
    • ジェネリックの賦形剤で副作用が起こることもあるのか→はい。気をつけて使ってください。
    • 第2類や第3類のジェネリックも出てくるのか→一般にジェネリックは単味(有効成分が1種類)のものに用いられる。一般用医薬品は配合剤(有効成分が複数)なので、ジェネリックとするのは無理かもしれない。
    • 登録販売者の試験は難しいのか→出題範囲を国が決め自治体はその中から試験を行う。去年は初年度で2回試験をしたが、来年度からは各自治体で年に1回試験をする。受験資格として実務経験が1年必要。