アクセスマップお問い合わせ
バイオカフェレポート「バーボンで走る自動車〜トウモロコシから作るバイオエタノール」

2009年3月13日(金)、茅場町サン茶房にてバイオカフェを開きました。お話は、八木田浩史さん(日本工業大学システム工学科准教授)の「バーボンで走る自動車〜トウモロコシから作るバイオエタノール」でした。はじめに、向井理絵さんのフルート演奏、曲目は、ドップラー作曲の「ハンガリー田園幻想曲」とアルルの女〜メヌエット。フルートは木管楽器で、金製、銀製、木製のものがあり、音色もそれぞれ変わるというフルートにまつわる小話もありました。

フルートを演奏する向井理恵さん 八木田浩史先生

お話の内容

Ⅰ.はじめに
バイオマスエネルギーに関する用語の説明があった。

  1. LCAとは
    ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)とは、各工程で必要な資源の量、排出物の量を科学的に算出し、総合的に環境への影響を評価(環境影響評価)すること。分かりやすく言えば、「ものを作る、使う、廃棄する;ゆりかごから墓場まで」の全体を評価すること。
  2. カーボンニュートラルとは
    一般的に生物由来のバイオマスを燃料としてエネルギー使用する際には、燃料中に含まれる炭素分は空気中にあったCO2が光合成により植物に固定されるものであり、これを燃したときにでてくるCO2は温室効果には寄与しないと整理すること。ただし、厳密に評価する場合は、バイオ燃料の製造、輸送などで使うCO2排出を考慮する必要がある。
  3. バイオマスのLCA的評価とは
    バイオマスハンドブックには、エネルギー変換技術に関するエネルギー効率のみにとどまらず、バイオマスの生産、前処理、エネルギー変換といった一連のバイオマス利用のトータルのエネルギー効率や環境負荷を考慮する必要があると記載されている。

< LCA評価の例>
  • 冷蔵庫;冷蔵庫を製造するアルミニウム、鉄の採掘から製造、プラスチックの石油からの製造及び部品の加工などと冷蔵庫の製造、輸送、使用及び廃棄(空気、水)の全てに環境負荷を数値化し評価する。
  • 自動車1台に関する排出するCO2で言えば、製造までに3tのCO2の排出、使用時に17tのCO2の排出(10年間 1万km/年走らせるとして)となる。
  • バイオマスのエネルギー消費量とCO2排出量について言えば
    植林(バイオマスの生産)、成木のチップ化・乾燥(前処理)、輸送、使用(燃す、液化等)の各段階での①必要エネルギーと生産されたエネルギー、②CO2排出量を計算する。化石燃料(石炭や石油)と比較検討する。

Ⅱ.バイオ燃料のライフルサイクルCO2について
1.BDF(バイオディーゼル燃料)
 1)マレーシアのパーム椰子を現地でパ-ム油製造、BDF製造を行い、輸入する場合
   事業化構想段階であるが、生産方式は連続式で、生産能力は〜10万kL/年(約300kL/年)である。 
 2)①廃食用油等の活用や②休耕田で菜種栽培・利用による国内でBDFを生産する。
   一部自治体等で実用化、生産方式はバッチ式で、生産能力は 310L/日である。
 3)比較する化石燃料(軽油)の場合
   商業生産(連続式)で、生産規模 約2.4万kL/日である。      
  BDFは、化石燃料に比較し①小規模生産である、②稼働率が低い点などが上げられる、③カーボンニュートラルを考慮するとCO2排出量は少ない。因みに、日本にある30ヵ所のBDFの生産設備は、最高でも450kL/年であり、その9割の設備が200kL/年。又、年間の稼働率は150日以下が7割を占める。

2.バイオエタノール
 1)海外からのエタノールの輸入
  1. ブラジル、インドで生産されたサトウキビを現地でエタノール生産、海上輸送で輸入する。この場合、輸送費が5割以上を占める。
  2. 商業生産をしているブラジルのプラント規模は約16万kL/年(960kL/日)である。
    また、石油の生産規模は24, 000kL/日である。ブラジルは20年の実績があるが、その規模は、石油に比べれば小さい。
 2)木質系バイオマスを活用した国内でのエタノール生産
  1. 国内で発生する建築発生木材、製材工場残材を用いエタノール発酵を経て利用、又は、エタノール発酵でリグニンを利用する。研究開発中で、エタノール生産能力は、〜約10kL/日である。
  2. バイオマスの燃焼分をゼロカウントするなら、バイオエタノールはガソリンよりLC-CO2排出は少ない。
 3)比較する化石燃料 ガソリン
   わが国で実際に使用されている精製プラントの生産能力は約2.4万KL/日である。

◎バイオエタノール生産では無水化処理が必要ということ
  エタノールは水とは良く混じりあい、吸水するために、バイオエタノールを自動車燃料として使用する際には、含まれている水を蒸留や膜分離で除去することが必要となる。このためのエネルギー消費及びCO2は無視できない。無水化処理をすると処理をしない場合に比較し6割から7割り増しのCO2排出量が増す。

3.バイオ燃料のLCA評価のポイントとして以下の3点があげられる。
  1. CO2排出以外の部分の評価として、自動車排ガスの性状があげられる。
  2. バイオマス生産の評価として①バイオマス生産時のN2O、CH4排出量、②土地利用の評価、③地域性の考慮、④食料生産との競合などがあげられる。
  3. 将来の効率改善が期待される。

Ⅳ.再生可能エネルギー(①太陽光、風力、②地熱、水力)とバイオマスエネルギー及び化石燃料との比較(---以下の「大」「小」は4者間における比較)

①太陽光、風力は、設備製造時のCO2排出が大きいが運転時のCO2排出は小さい特徴を有し、エネルギーを継続して得られない。
②地熱、水力は、太陽光、風力と同様、設備製造時のCO2排出が大きいが運転時CO2排出は小さい特徴があり、大規模設備を必要とする。
③バイオマスは、設備製造時及び運転時のCO2排出は中ぐらいであり、食料生産との競合がある。
④化石燃料は、設備製造時のCO2排出は小さく、運転時のCO2排出が大きい。資源の枯渇と価格変動がある。
  
Ⅴ.まとめ
かつては、人口の増大を上回る勢いで穀物の生産量は拡大していたが、一人当たり穀物生産量は頭打ちの状態である。肉で食べると穀物の利用効率は悪くなり、言い換えれば、肉食は穀物を大量消費していることになる。
持続可能な発展をするためには3つの基本を充実することである。
1.社会的な面(文化、教育、資産、平和、人権、-----)
2.経済的な面(費用分析、ライフサイクルコスト、-----)
3.環境面(LCAによるグローバルな環境-----)

Think globally, act locally by LCA as a Tool(世界規模で考え、手段としてLCAを使って身近なところで実践しよう)


演奏風景 お話風景

話し合い 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • バイオ燃料に期待してきたが、休耕田の活用について→バイオ燃料についてネガティブなお話をしたが、休耕田に飼料用の米やBDF(バイオディーゼル燃料)用のナタネを作るのは良いことと思う。収支はマイナスにはならないが、工夫が必要である。ただ単に、バイオマスはカーボンニュートラルで万歳というのは問題だと思う。
    • バイオマスとして別の利用方法は→例えば、アルコールまでにせず、火力発電させるときに燃料として使うと効率が良い。
    • 食料(農業)作物について→生産コストを下げて食料以外に使う場合とおいしさや特定成分を増やすなど付加価値を上げた食料にする場合がある。
    • 作物資源以外でバイオエネルギーとして利用できるものは→雑草や海草がある。
    • なぜ、ナタネなのですか→雑草は刈り取って集める、乾かすのが大変。雑草をあつめて焚き火はできても自動車を動かすまでにはいかない エタノール1ℓを作るために3キロの雑草が必要。50リットルだと150キロの草がいる。
    • 植物のエネルギーを利用することに関して、植物は天候不順に左右されること、また、季節による貯蔵には問題はないか →振れ幅として1〜2割の減少のあることは考慮されている。世界全体では大きな問題とはならないのではと思う。季節性のあることは確かであるが、貯蔵はできる。 又、食べ物は自給が基本なので、貿易上では食料は、大きくは、動いていない。バイオ燃料は少なくても困らない。車の乗り控えはできるが、食事を減らすことはできない。
    • 食料と燃料の違い→燃料は使用を1年分とか半年分とか控えることが可能であるが、食料はできない。
    • 日本の食料自給率は低い、エネルギーの自給率は→日本の食料自給率を60%にあげることは可能かもしれない。イギリスは食料自給率を40%から70%にあげた。日本は休耕田の活用がある。放棄農地の利用を上手に行うべきである。都会の人が農業や林業を目的として就職しようとする人(第1世代)はいない、親が農業や林業に就いていないと現実的ではない。日本のエネルギー自給率はあげられないと思うが、一つとして、手のつけていない間伐材の利用がある。日本の農業や林業を国策として考えることであり、従来の縦割り行政に囚われないことが肝腎である。
    • アメリカにおけるトウモロコシの生産能力は→現状では輸出余力はあまりない。その一方でアメリカの人口は日本の人口の2.5倍であり、面積は何十倍と広大な国土があり、自国でも生きていける国。にも係わらず石油を輸入しており、穀物は輸出したくないであろう。ブラジルは親日国であるのでトウモロコシを日本に食料として廻してくれるかもしれない。
    • メタンハイドレート(水にメタンが入り込んでいる化合物)の利用は→日本の近海に100年分はある。太平洋岸や奥尻などにある(メタンハイドレート資源開発コンソーシアムで検討されている。http://www.mh21japan.gr.jp/mh-2.htm
    • 地球の温暖化にについて、科学的に気温は上昇するか→20年前、地球は寒冷化に向かっていると言っていた。その後、CO2の上昇により温暖化に進んでいるといわれている。温度の上昇は1.5〜4℃と不確実性が含まれる。温暖化対策について、アメリカは、1国がやっても効果は上がらないことに加えて、欧州がイニシアチブをとっていることから積極的でなかったという部分があるかも知れない。オバマ大統領になりグリーンニューディール政策が出てきた。
    • バイオエネルギーは自国で考えないとだめですね→国策が必要である。
    • BDFプラントの稼働率を上げるには→設備を共有利用する。
    • 得られたエネルギーは電気として保存するのと液体(例えば、エタノール)として保存するのとではどちらが有効か→エネルギーの保存という観点では、液体燃料の方が便利である。