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カルタヘナ法施行から5年

2009年2月24日、経済産業省産業構造審議会化学・バイオ部会組換えDNA技術小委員会において、カルタヘナ法施行から5年後の検討が行われました。経済産業省の分野では、2008年12月までに、620件の遺伝子組換え生物(植物が1件、残りはすべて微生物。事業者数は70社)が大臣確認を終えて、広く産業利用されています。
化学・バイオ部会 http://www.meti.go.jp/committee/gizi_1/17.html

カルタヘナ法とは
カルタヘナ法は正式には「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」という名前の法律で2004年2月19日に施行され、今年でちょうど5年経ちます。これは、2003年11月に日本が、遺伝子組換え生物など(生きている改変された生物LMO: Living Modified Organisms)が生物多様性に悪い影響を及ぼさないよう、特に国境を越える移動に焦点を当て、安全な移送、取扱い及び利用について定められた国際条約「生物多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(カルタヘナ議定書)」(2000年1月南米コロンビアで開かれた生物多様性条約特別締約国会議で採択)の締結国となって、この議定書の取り決めを守っていくための国内での取り扱いを示したものです。日本では、財務・文部科学・厚生労働・農林水産・経済産業・環境省の6つの機関が、それぞれに関係する分野を所管しています。
カルタヘナ議定書関連情報 http://www.bch.biodic.go.jp/bch_1.html
カルタヘナ法関連情報 http://www.bch.biodic.go.jp/bch_2.html

カルタヘナ法の働き
カルタヘナ法では、拡散防止措置を執って閉鎖系(実験室内、培養タンクなど)で使用する第二種使用等と、開放系(田畑など)で使用する第一種使用等に分けて、LMOが生物多様性や永続利用性(Sustainability)に悪影響を及ぼさないような、使用、管理、輸送方法などを定めています。この経済産業省の組換えDNA技術小委員会では、産業利用分野として、主に酵素や試薬を作る遺伝子組換え微生物に関する第二種利用について審査しています。なお、産業利用であっても、作物や飼料は農林水産省、食品やヒト医薬品は厚生労働省、酵素などの産業利用は経済産業省というように、分担して確認を行っています。また研究段階にある遺伝子組換え生物の使用については、文部科学省が所管します。
これまで、組換えDNA技術小委員会で審査されたのは、酵素、試薬、医薬品の原料などを作るために、閉鎖系で利用される生物等(主に微生物)です。

  植物動物微生物

閉鎖系
(第二種使用等)
産業利用なし疾患モデルマウス(農水)酵素・試薬・医薬品などを産生する微生物(経済、厚生、農水)
研究開発抗体産生植物(文科)疾患モデルマウス(文科)酵素・試薬・医薬品などを産生する微生物(文科)

開放系
(第一種使用等)
産業利用除草剤耐性作物
害虫抵抗性作物
色変わりカーネーション
高オレイン酸ダイズ
(日本国内では商業栽培なし)
なしなし
研究開発環境ストレス耐性植物
栄養価の高い作物
環境浄化植物
有用物質を産出するカイコ環境浄化微生物
金属の回収・固定化を行う微生物

GILSP(Good Industrial Large-Scale Practice)とは
優良工業製造規範のこと。GILSP遺伝子組換え微生物とは、特殊な培養条件下以外では増殖できず、病原性なく、最小限の拡散防止措置で使用できる、つまりこの工業規範に則っていれば安全に使用できるものです。従って、GILSP遺伝子組換えを産業利用二種省令で決められた拡散防止措置に従って使う限り、確認申請をしなくてもいいのです。
実際には既に確認された宿主・ベクターと挿入DNAを掲載した2つのリストがあり、これらを組み合わせて構成された遺伝子組換え微生物は確認申請なしに拡散防止栃を執って使用でき、2008年12月現在、宿主・ベクターが198組、挿入DNAが450個、告示されています。
現在GILSPを他に定めているのは厚生労働省だけです。
産業利用二種省令、GILSPリスト http://www.bch.biodic.go.jp/hourei1.html

確認や違反の状況
2003年から行われた大臣確認は、工業化指針からカルタヘナ法に切り替わった2004年の207件を除き、毎年100件前後。2月24日の審査結果を加えると2008年度までで685件となる見込み。
これまでには、扉を開いたまま遺伝子組換え実験を行っていた、遺伝子組換え生物を不活化しないで廃棄してしまった、遺伝子組換えマウスを適切な手続きを経ずに他機関に譲渡してしまったなどの不適切な取り扱いが研究段階ではあったという報告はあるが、経済産業省が所管する産業利用での事故届出はない。
経済産業省の分野では、(独)製品評価技術基盤機構(NITE)が立入検査を行ったり、GILSPの説明会を開いたりして、組換えDNA技術の安全で適切な産業利用を進めている。
(独)製品評価技術基盤機構  http://www.nite.go.jp/index.html

カルタヘナ議定書を巡る国際的な状況
現在、カルタヘナ議定書に関する国際会議で取り上げられているのは、第27条LMOが越境して損害が生じたときの「責任と救済」の問題で、2008年COP/MOP4で合意にいたらず、2010年の名古屋に向けて交渉は継続される。
2009年2月23〜27日にメキシコシティで、来年、2010年2月22〜26日にクアラルンプールで、議長フレンド会合が行われる。

審査委員会の5年の活動を振り返って
まず、バイオインダストリー協会安全環境部会長戸坂修氏より、産業界からの意見として、同協会が行った企業へのアンケート結果を基に、大臣確認等の審査期間の短縮(現状、最長で5ヶ月待ち)、GILSPリストへの掲載基準の緩和等の意見が述べられ、これをベースに話し合いが行われました。

全体としては、今まで審査してきた閉鎖系での使用において、審査では問題はない、GISLPリストの自動化など、審査の迅速化の改善も行われているのではないかという議論の展開でした。

次回は5月に開催される予定です(公開)。