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マリンバイオカフェレポート「お皿の上の水族館」

2009年1月17日(土)、新江ノ島水族館なぎさの体験学習館で、第3回マリンバイオカフェを開きました。 お話はきしわだ自然資料館の風間美穂さんと藤田吉広さんによる「お皿の上の水族館」でした。初めに寺井庸佑さんと今村恭子さんによるチェロとバイオリンの演奏でした。曲目は「お皿の上・・・・」にヒントを得て、テレマンが作曲したターヘルムジーク(食卓の音楽)でした。

中世の貴族が食実のときに演奏させた
ターヘルムジーク
お話の始まり

1.チリメンジャコ漁 きしわだ自然試料館 学芸員 風間美穂さん

きしわだ自然試料館で作成したDVDを見ながら説明をうかがいました。
午前3時から漁が始まる。大阪湾の沿岸には漁港が多く、漁場は明石海峡と紀淡海峡にはさまれた楕円形の領域。年間総漁獲量 35,000トン 
イワシシラスが最も多く、チリメンジャコの原料になる。
汚いといわれる大阪湾には場所によっていろいろな魚介類が棲んでいる。

 沿岸の砂・泥地 :カレイ、エビ、カニ
 磯       :イシダイ、マダコ、クロダイ
 河口      :スズキ、ボラ
 中・表層    :イワシ、サワラ、マサバ


大阪湾で何種類かの漁が行われている。
(1)石げた網漁(底引き網)
石げた網を海底に沈めて引く。鉄の錘がついていることからこの名前がついた。シャコ、カレイ、カニ、エビの仲間がとれる。
1隻の船で4-5個の網を15-20分引いては、海底の生き物を集め取る。引き上げるとまた網をおろす。次の網をあげるまでに前にひきあげたものを仕分けする。これを1日に20回ほど行う。
(2)板引き網
沿岸の砂や泥地や磯のカレイ、エビ、カニをとる。
(3)巾着網漁 
1キロメートルもある網を広げ、巾着のように口を閉める。イワシ、サバがとれる。 
 大阪湾で最も規模の大きな漁で、5隻の船が船団を組んで行う。魚を探す船、網を曳く船、運搬船。2隻の船で曳いた獲物を運搬船にいれ、運搬船は数往復して港に運ぶ
(4)ふなびきあみ漁業 
イワシシラス、イカナゴシラス
 2隻の網船が平行して網を1時間ほど曳き、運搬船でひきあげる。 
バッチ(ももひきのような形をしているので)網とも呼ばれ、目の細かい袋状の網を使う。網の先端部分を運搬船で引き上げ、先端部分の網はチャックでとりはずして、換えの網をチャックでとりつけて次の漁をする 
 とれたシラスは氷を入れて運搬船で港へ。加工場では、洗浄→釜揚げ→乾燥→選別(風で軽いものを飛ばす。もっと細かいものは人が針でついて取り除く)→乾燥の度合いでよく乾いたチリメンジャコ、やわらかいシラス
(5)小型定置網漁業
 スズキ、アマゴ
(6)その他
刺網漁業:網に魚を絡ませて(刺す)取る。底刺し、囲い刺し、流し刺しの3種類がある
引き縄漁業:タチウオ、サワラ
あなご籠漁業:アナゴ
たこつぼ漁業:タコ
その他に、観光漁業(体験漁業などをするイベントの開催など)、ワカメやコンブの養殖、稚魚の飼育や保護、適正な漁獲の実施などを行っている。
漁業は食を支えるだけでなく大阪湾の自然を守っていることがわかる。汚いといわれる海といわれる大阪湾で、今は漁業生物230種類確認されている。大阪湾では、1000人の漁師ががんばっています。応援してください。



藤田吉広さん 風間美穂さん

2.チリメンモンスターについて きしわだ自然試料館 専門員 藤田吉広さん

チリメンに混じっているものをチリメンモンスター「チリモン」と名づけた。
昔は、イカやタコの混じったチリメンジャコがあって、見つけて遊んだりしたが、今はエビなどの甲殻類のアレルギーを防ぐ観点から厳しい選別が行われ、めったにチリモンは見つからない。
乾燥させたチリメンジャコに風をあてて、軽い甲殻類(エビやシャコのこども)を除去し、その他のものは人が針で突いて取り除く
チリメンジャコはカタクチイワシ(アンチョビ、いりこ、丸干しにする)のこども。
関西で主に消費されるチリメンジャコは主に和歌山(有田湯浅沖)や大阪湾、神戸沖のもの。土佐湾のものは生食する場合「どろめ」といわれている。
チリメンモンスターには、主に
1)甲殻類 ゾエアとよばれれるカニのこども、エビのこども
2)魚のこども タツノオトシゴ、ハギ
3)浮遊物(浮いているもの、浮いて生きている貝やそれについているもの、藻についているもの) ワレカラ、ブンブクウニ ヒトデ

チリメンモンスター探し

2008年10月、関西空港沖、明石沖で漁獲した材料を使って、チリメンモンスター探しを参加者全員で行いました。3年間で200種類以上見つかり、専門家に聞いてもわからないものも何種類もあり、チリモン探しには未知の部分も多いそうです。

方法
大皿からシャーレにチリモンをとって、区分けし、名前を調べて、チリメンカードにボンドではりつける。
初めに、無脊椎動物(エビのこどもなど)と脊椎動物(魚のこども)の見当をつけて、区分けを始めるとわかりやすい。
イカとタコの見分け方はイカは頭と胴がわかれる、タコはユデダコのように足がクルクルとカールする。イカのこどもは海の上を漂うので取られやすい、タコは成長すると海底に行くので獲られにくい。今日の材料はタコが多いのが特徴
チリメンモンスターを区分けするときは、親を想像するとわかりやすい。


会場風景1 チリモン探し1
チリモン探し2 チリモンの分類

最後に、全部の参加者がカードにはったチリモンを風間さん、藤田さんが判定し、テーブルごとにベストチリモンを発表。ウマヅラハギ、ヒラメかカレイの子などが選ばれました。
未知の生物もひとつ見つかりました。参加者の全員が、面白かった、楽しかったという感想で、昔はチリモンが混じったチリメンジャコを食べていて、楽しかったといわれた方も数名ありました。


サイエンスチャンネルの収録もありました 見つかったチリモンの名前をホワイトボード書き出しました
 
ワークショップの道具やテキスト  

参考図書
沖山宗雄編集 日本産稚魚図鑑(東海大学出版会)
千原光雄・村野正昭編集 日本産海洋プランクトン検索図説(東海大学出版会)
風間美穂・日下部敬之編集「これがチリメンモンスターだ!」(きしわだ自然資料館)
近日中に、図鑑なども出版予定あります。