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遺伝子組換えダイズの交雑試験の結果が発表されました

2008年9月30日、(独)農業環境技術研究所から遺伝子組換えダイズとツルマメとの自然交雑に関する実験結果が報告されました。「遺伝子組換えダイズと交雑する可能性のあるツルマメとの自然交雑の確率は極めて低い」という結果でした。 http://www.niaes.affrc.go.jp/techdoc/press/080930/press080930.html

実験の背景
「生物多様性影響評価検討委員会」ではカルタヘナ法に基づき、日本国内に入ってくる遺伝子組換え作物の生物多様性影響評価について検討を行ってきました。同委員会は、2004年、除草剤耐性ダイズの野外での試験栽培の申請があったとき、生物多様性に影響を及ぼす恐れはないと判断すると同時に、ダイズと近縁種であるツルマメの交雑等に関する知見蓄積の必要を認め、公的機関で、このような情報収集を行うように求めました。今回、公開されたのは、その中のひとつの交雑試験の結果です。
また、2004〜2006年度には、農林水産技術会議事務局技術安全課より、「遺伝子組換え作物の長期栽培による環境への影響」という報告書が発表されており、除草剤耐性を持つ遺伝子組換えダイズ、ナタネ、トウモロコシおよび、縞葉枯病に強い遺伝子組換えイネを栽培したときの微生物、昆虫、その他の植物への影響について報告されています。
http://www.maff.go.jp/j/press/2006/20060718press_6b.pdf

本実験の目的
ダイズは自家受粉といって、自分の花の中でメシベに花粉がついて受粉するので、在来種との交雑の確率は低いと考えられていましたが、今回の実験では、遺伝子組換えダイズと在来種であるツルマメの交雑が距離、天候などを含めてどのように起こるのか、もっと明らかにしようというものでした。

調査の方法と結果
調査は2005年度から2007年度、農業環境技術研究所内のほ場で実施されました。

2005年度の調査
一般ほ場(3.4a, 1.3a)において2つの実験を行った。
(1)「開花数を計測する実験」
36個体のツルマメを栽培し、開花数を計測した。
(2)「ツルマメと遺伝子組換えダイズの開花期と距離を近づけた場合実験」
除草剤耐性遺伝子組換えダイズとツルマメ60組、用意し、遺伝子組換えダイズの種を3回に分けてまき、開花期を近づけるようにした。さらに、植物体どうしを絡みつくほど近づけ(混植区)、時期と距離が最も交雑しやすい状態になるようにして栽培した。収穫されたツルマメの種から生えた苗に除草剤を散布し、枯れなかった苗に交雑が起こったと判断した。

種をまいた月日 とれたツルマメの種(個) 枯れなかった苗の数
6月20日7,814
7月5日12,828
7月20日11,860
最も遅く種をまいた7月20日のグループが開花期が重なり、交雑が1個起こったことがわかった。


2006年度の調査
「ツルマメと遺伝子組換えダイズの間の距離を変化させた実験」
一般ほ場(20a)にいて、開花期が異なる4種類の除草剤耐性遺伝子組換えダイズとツルマメをからみつくほど近づけたり(混植区)、2,4,6,8,10m(距離区)をあけて栽培した。
混植区、距離区ともに、除草剤で枯れなくなったツルマメはなく、交雑は起こらなかったと判断された。
栽培の距離とれたツルマメの種(個)枯れなかった苗の数(本)
混植区44,484 0
距離区(2,4,6,8,10m)68,121 0


2008年度の調査
「種をまく日と距離を変化させた調査」
開花期の遅い2種類の遺伝子組換えダイズ(AG5905RRとAG6720RR)を用いて、種をまく日を2回に分けて(6月20日、7月19日)、さらに混植区と距離区(2,4,6,8,10m)を設けて栽培した。
交雑が起こって、除草剤で枯れなかったツルマメは以下の通りであった。
栽培の距離遺伝子組換えダイズの種類とれたツルマメの種(個)枯れなかった苗の数(本)
混植区 AG5905RR 25,741 10
AG6702RR   25
距離区(2m)AG5905RR 66,671 1
距離区(4m)AG6720RR   1
距離区(6m)    1
距離区(8,10m)   


実験のまとめ
3年にわたる実験の中で、2007年度が最も開花期を近づけることができました。2007年度にからみつくほどにツルマメと遺伝子組換えダイズを近くにおいて栽培したとき、自然交雑が生じる頻度は1,000分の1以下でした。このように、栽培実験では3年がかりで開花期と位置を近づける工夫をしましたが、交雑が生じる頻度は極めて低いという結果が得られました。従って、自然条件下で自然交雑が生じる頻度は更に小さくなると考えられます。


その他の交雑実験
2006〜2008年度、北海道では遺伝子組換え作物交雑等防止事業(予算額 1680万円)が、道立中央農業試験場、道立と価値農業試験場、道立北見農業試験場、道立畜産農業試験場、道立花・野菜技術センター、東京農業大学(オホーツクキャンパス)において進められています。これは、北海道食の安全・安心委員会が「遺伝子組換え作物と一般作物との交雑等を防止するための基準」において、正確性を高め、消費者などの不安に的確に対応するために科学的な知見蓄積、検証を行うように提言したことから、始められました。本事業では、遺伝子組換えでないイネ、ダイズ、トウモロコシ、ナタネを用いて、道内の環境下における交雑にかかるデータを蓄積し、交雑の有無に関する調査結果の信頼性を担保するための情報収集が行われています。