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食品トレーサビリティ・システムって何でしょう

 3月11日一ツ橋ホール(東京千代田区)において(社)農協流通研究所主催による「食品トレーサビリティ推進普及セミナー〜農場から食卓までを結ぶ食の安心安全システムの構築に向けて〜」が約800名の参加を得て行われました。トレーサビリティというのは「追跡可能性」といって具体的には私たちの食物がどのように作られ、どのように保管され、運ばれ、店頭に並んで食卓までやってきたかの「道筋を追うことができる」ことをいいます。
 トレーサビリティということばは、BSE(牛海綿状脳症)が発生した頃から新聞でよく見かけるようになりました。BSEにかかった牛が発見されたとき、どこでどんな飼料を食べて育てられたかがわかると、原因解明や被害増大を食い止めるのに役立つからです。
 トレーサビリティ・システムとは生産現場から食卓までの食品の道筋の情報が記録、管理できる仕組みのことです。トレーサビリティには厳密にいうと、生産者へさかのぼる「トレースバック」と消費者に向かう「トレースフォワード」があります。食中毒の原因になった生鮮物をまとめて箱詰めして出荷した場所が特定できたり、誤って異物が混入したロットを特定でき、すばやく製品を回収したり、製造、流通の段階で止めたりすることができるようにさかのぼることはトレースバックです。

 すでに公開されているシステムやセミナーで紹介されたものにアクセスしてみました。

 トレーサビリティ・システムとは


食品トレーサビリティガイドラインの策定について

 食品トレーサビリティガイドライン策定委員会(座長新山陽子(京都大学大学院農学研究科教授))では、トレーサビリティのガイドライン案策定と並行して、実際に即したガイドラインにするための実証実験を行いました。ガイドライン案は近く農林水産省のホームページで公開されるそうです。

 安全・安心情報提供高度化事業(日本版トレーサビリティ・システムの開発:平成14年度予算152,626千円、事業実施期間は平成13年度から17年度)


実証実験について

平成14年度に行われた実証実験ではオレンジジュース、鶏肉、野菜、青果物、コメ、養殖牡蠣、魚肉ソーセージの7品目について7つの団体が原料を集め、加工し、製品にし、運送し、保管され、消費者の手にわたるまでを記録し、消費者が確かに生産の現場からの工程を追跡できるかどうか、どのような方法で追跡するのがよいのか、消費者の求めている情報、現場での使いやすさなどを実際に市民にシステムを利用してもらい、アンケートなどをとってシステムの有効性について調べました。

 平成14年トレーサビリティ・システム実証実験の実施について


いくつかのシステムにアクセスしてみて

 全農とイトーヨーカ堂のお米の安全安心システムでは、栽培記録から土作り、施肥、田植え、除草、病害虫防除、刈り取り、感想、調整などの作業内容の記録を見ることができます。減農薬米を作るときに使う消毒薬、害虫や病気の予防薬、除草剤などの使用計画と実際に使用した月日や使用量を知ることができます。

 イトーヨーカ堂と全農 お米の安心システム


 みかん濃縮果汁、香料、ビタミンCを調合して作られるオレンジジュースでは、関連企業が果汁飲料トレーサビリティコンソーシアムを設立して、紙パックの番号からそのパックのジュースにはブラジルで作られたオレンジが使われていたことや、ビタミンCは日本の会社が作ったものであったことがわかるようなシステムを作っています。

 果汁飲料トレーサビリティシステム


 宮城生協の今回の実証実験では生牡蠣のパック番号と加工日から生産者、水揚げ海域などがたどれるようなシステムの実験を行いました。このほかにHPでは、牛、豚、鶏肉の生産地、加工した場所と日時、いちご、長ネギ、ほうれん草、小松菜についての病気予防、防虫のための農薬散布回数や時期を知ることができるようになっています。

 宮城生協


 独立行政法人食品総合研究所では「SEICA」という青果システムをつくり、イオン、こうべコープ、生活クラブと協力しシステム広域トレーサビリティ実用化実験を1月15日から走らせています。
 このシステムの優れたところは、生産者はSEICAシステム1箇所に登録するだけで複数の団体に情報提供することができ、流通側は自分でシステムをつくったり管理したりする費用をかけなくてすむことです。

 独立行政法人 食品総合研究所


 いろいろな食品の履歴の情報にアクセスすると、私たちの食べ物がどうやって食卓に上がるかを学ぶことができます。そして私たちは自分の食べるもののことを知らなさすぎることを自覚します。
 また、セミナーのパネリストの一人は、多種の原料を使うマヨネーズづくりでは、異物混入などの事故に備え、電子化こそされていなくてもトレーサビリティを確保できる仕組みは昔から築いてきていた、といわれました。中小の食品工場や販売店では電子化したシステムの管理や実施が難しいところも実際にはあるでしょう。そういう場合には永い間培ってきた知恵を活かした紙媒体の仕組みでもよいわけです。コンピューターは持っていてもインターネットの使える環境の整っていない家庭が多かったり、誰もが店頭の端末機を利用するかはやや疑問です。
 またトレーサビリティ・システムを整えるには、かなりの費用がかかります。生産者、食品メーカー、流通業者などはこれらの費用を負担しなくてはならず、一部は消費者自身が負担しなければならなくなります。全国消費者団体連絡会前事務局長の日和佐信子氏がセミナーで発言されたように、安全が確保されていれば、市民は毎日インターネットで生産者の顔まで見ることができなくてもいいのです。費用面も考えあわせて、本当に必要な実施可能な仕組みを考えていくことが必要ではないでしょうか。何か起こったときに速やかに状況の説明がされて、対処法が示されるシステムができていて、「偽装表示など決してないのだ」「証拠の隠蔽など決してない」という信頼関係が確立されてこそ、整ったシステムが食の安全に寄与するのです。トレーサビリティという形で市民への情報提供を行わなければ、行政や流通業者への監視が十分に行き届かない、というのは残念なことです。市民の求める安心は、行政や流通業者との信頼関係に等しいのではないでしょうか。

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