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バイオカフェレポート「トクホの効果について」 |
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2008年5月9日(金)、茅場町サン茶房にてバイオカフェを開きました。お話は農林水産先端技術振興センター河野敏明さんによる「トクホの効果について」でした。初めに目黒裕子さんによるフルート演奏がありました。
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目黒裕子さんのフルートの演奏 |
河野敏明さんのお話 |
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河野さんのお話の概要 |
はじめに
トクホとは、特定保健用食品のこと。厚生労働省の審査を受けるといわゆる人形マークをつけることができる。当初研究者や企業は機能性食品と呼んだ(1984年)が、厚生省が特定保健用食品という呼び名を決めた(1992年)。
食品の機能性には3つあり、一次機能は栄養、二次機能は感覚機能(味、香り)、三次機能は体の調子を整える働きで、機能性食品はこの三次機能を備えている。
いわゆる健康食品(法的・学問的定義なし)は1970年代に登場し、問題も起こしたが、効果もあった。当時からの誤解は、天然物は安全、試験管の実験や動物実験への過信、値段が高い方が効く、飲み合わせで医薬品に影響することはない、など。また、テレビや新聞報道への過信などがあげられる。
トクホとは
健康・栄養表示が可能な保健機能食品と呼ばれ、特定保健用食品と栄養機能食品に分けられる。トクホは、効果と安全性が厚生労働省と食品安全委員会によってしっかり審査されてはじめて表示ができる。
- 科学的根拠の判断基準(以下の条件を満たさないとだめ)
ヒト試験の実施 有効成分の明確化 作用メカニズムの明確化 査読者のいる専門誌に掲載されている
- 有効性の評価
試験管レベル・動物試験 ヒト容量設定試験、有効性確認試験
- 安全性の評価 食品安全委員会による
トクホの種類
1993年に登場し、779品目まで増えた。働きには次のようなものがある。
「お腹の調子を整える」、「血圧が高めの方に適する」「コレステロールが高めの方に適する」、「血糖値が気になる方」、「ミネラルの吸収を助ける」、「虫歯の原因になりにくい」、「体脂肪がつきにくい」、「骨の健康が気になる方に」
現在あるトクホの40%は「お腹の調子を整える」目的のもの。成分はフラクトオリゴ糖などのオリゴ糖、ビフィズス菌等。
フラクトオリゴ糖について
私の研究していたフラクトオリゴ糖とは砂糖を酵素によって形を変化させたもので、砂糖とは異なる働き(お腹の調子を整える他にミネラルの吸収を助ける)を持っている。フラクトオリゴ糖は機能性食品研究開発ブームのきっかけになった物質でもある。
フラクトオリゴ糖を摂取しても、砂糖と異なり血糖値があがらず、インスリン分泌も変化しない。一方、砂糖は小腸で分解されて小腸で吸収される(大腸に行かない)が、フラクトオリゴ糖は大腸で発酵されて乳酸や酢酸になって吸収される。カロリーも砂糖の半分の2kcal。フラクトオリゴ糖を食べるとビフィズス菌が増える。ビフィズス菌増加は気づかないが、便通がよくなるのは自覚できる。便通の少ない人ほど、回数が増え効果が現れる。便通は美容にも影響すると言いたいが、そこまでは表示、宣伝できない。
また、ビフィズス菌が増えて有機酸が出来るとカルシウム吸収が促進されることがわかった。カルシウム吸収にはビタミンDと関係しており、ビタミンDは小腸でのカルシウム吸収を促す。大腸は水分を吸収して排泄物をまとめるだけの場所だと思われていたが、ビフィズス菌の研究を通じて大腸はミネラル吸収にも関係する大事な場所だとわかった。
トクホでなくても健康によいもの1 チョコレート
ポリフェノールは、健康によく、お茶に含まれるカテキンというポリフェノールは体脂肪を減らすトクホがある(ヘルシア)。90年代にフレンチパラドックス(フランス人はフランス料理のようにコレステロールが多い食事をしていても心臓疾患が少ないのは赤ワインのおかげ)から、ポリフェノールの効果が注目されるようになった。
チョコレートは油、砂糖が多くおいしいけれど太って健康には良くないと思われていた。しかし、ココア・チョコレートにはポリフェノールが多く、動脈硬化予防作用があることがわかったが、食品に動脈硬化予防や改善の表示できない。動脈硬化になるメカニズムに活性酸素説がある。それは、LDLが活性酸素により酸化され悪玉となり、酸化LDLをマクロファージ(白血球の一種)が食べるなどして血管の内皮を膨らませ、血管が狭くなるというもの。
健常人ボランティアの試験で、血漿(血液の赤い部分を除いたのが血漿)の酸化LDL濃度や酸化抵抗性はココアを飲んだ人の方が良かった。8週で明確な効果が現れ、やめると効果はなくなった。まだトクホとはなっていない。
トクホでなくても健康によいもの2 カシス
カシス(フランス語)とは、日本名クロフサスグリ、英語ではブラックカラントと呼ばれる。カシスポリフェノールはベリー類でアントシアニンを最も多く含んでいる。主成分のデルフィニジンは遺伝子組換え技術で作られた青いカーネーションの色素としても利用されている。
カシスのアントシアニンは眼精疲労(毛様体筋がパソコン作業を長くすると疲れるなど)の抑制効果がある。若い弱度近視者(年配の人は応答が良くないので)に眼科の器具を用いて毛様体筋の伸び縮みにカシスが影響するかどうかを調べたところ、効果あり。疲労感(首、腰、目、肩、腰)の変化も問診で調べた。
私の場合、半信半疑でカシスを飲んだら、眼精疲労、肩こりで自分の場合は効いた。まだトクホになっていないが、やがて認められるのではないかと思っている。効果の出ない人もいる。私はには効果があったが、肩がこらない家人には効果がなかった。
まとめ
トクホは自分にあったものを探し、効く!と思って摂取するのが良い。効果を体感できるものは良いが、バイオマーカー(血液検査など)で出るものは、頭で理解すると良い。
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会場風景 |
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話し合い |
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は参加者、→はスピーカーの発言 |
- サプリメントとトクホの関係は→トクホには食品も錠剤もあり、サプリメントは商品形態のひとつ。
- 私の飲んでいたオリゴ糖にトクホマークがなかった→トクホには有効量があり、量が入っていないとトクホとして認められない。
- トクホは値段が高いのか→一般的には高い。オリゴ糖入りと書いてあっても、どの位の量が入っているかわからない。オリゴ糖が効くのに必要な量がある。「オリゴ糖入り食品」は健康ムードを売っている。販売者は付加価値のついたトクホは高く売れるはずと考え価格設定をしている。
- フラクトオリゴ糖がある量で効くとわかっているなら、トクホでないもので量をとれば効果は得られるのではないか→3g含まれていればトクホマークがなくても効くはず。
- クロウーロン茶と普通のウーロン茶の違い→クロウーロン茶はポリフェノールの重合体を集めていれてあり、有効成分を濃縮している。
- クロウーロン茶を取材したが、ポリフェノールの構造も異なっていた。
- オリゴ糖ならなんでもいいのか→オリゴ糖にもいろいろあるが、トクホで認められているオリゴ糖が5〜10種類あったと思う。有効量とれば同じように効く。
- 甘みとオリゴ糖の種類は関係があるのか→オリゴ糖の甘味は程度の差はあるが砂糖より少ない。フラクトオリゴ糖は砂糖の半分の甘さだがおいしいのが特長。
- お腹の調子を整えるトクホと薬の違いは→整腸剤は臓器に働きかけて臓器の運動で便通をつける。オリゴ糖は臓器に直接働きかけるのではなく、ビフィズス菌を介して有機酸ができ、それが作用して腸が動くようになる。それだだけでは効かずに漢方薬を飲む人もいる。オリゴ糖も腸の運動を起こさせる点では薬と近いが、直接的ではない。
- フラクトオリゴ糖をスプーンで飲んでもいいのか→もちろん良い、量により効果が現れる。
- 今日の話で整腸剤はビフィズス菌と乳酸を濃縮した物なら、トクホと同じだと思った。→ビフィズス菌をたまたま錠剤にするか、ヨーグルトでとりいれるかという違い。
- ビオフェルミンは医薬品だが、成分はトクホの濃縮。→同じ効果があるもの。
- 運動しないと腸も動かないので飲むだけではだめ→生活習慣病改善には運動で代謝を促すことが大切である。運動不足になりやすい現代社会ではトクホの出る幕があると思っている。オリゴ糖の効果は食物繊維を食べたときと同じような効果がある。現代の食生活は食物繊維がとりにくい。サプリメントの発想で補う。オリゴ糖は体との相性が第一で、コストも大事。
- 効果は人によって違うのか、値段が高い方がいいのか→高濃度で高価ということはあっても値段とは無関係と思う。種類は体との相性なので、いろいろ試してみる事を勧める。
- 市民のトクホの選び方は。値段、濃度、試してみることですか→第1に何を改善したいか、自分の問題点を明らかにしてトクホを選ぶ。次にその食品が自分にとって使いやすいかどうか。錠剤か、風呂上りに冷たいドリンクとして飲みたいか。第3に長く続けられること、そしてコスト。
- 血圧、血糖で治療中の人にトクホの被害が出たことは→よく知らない。効きすぎは問題だが、医者は食品・トクホを余り知らない場合がある。降圧剤服用者に、トクホには注意喚起の表示がある。
- 血糖値を下げる薬を飲んでいる人が血糖をさげるトクホはだめだといわれた→問題が起こる可能性があると思う。血糖ではないが、グレープフルーツとワーファリンの飲み合わせはだめという話は有名。情報は販売企業に聞くのがいい。
- カシスとブルベリーのアントシアニンは同じか→カシスの方が量が多く、効果の強いデルフィニジンが多い、ブルベリーには多様なアントシアニンが含まれている。
- カシスとブルベリーでは、アントシアニンの種類が違い、眼精疲労にはカシスが効く。
- テレビ情報では韃靼茶のルチンも眼精疲労にいいそうだ。
- テレビ番組制作の立場からいうとトクホは扱いにくい。過剰な期待をさせる。黒酢や、「あるある」問題が起り、テレビ関係者は神経質になっている
- プラセボ効果があるなら、何でも効いてしまうのではないか→医薬品はプラセボ効果よりも大きい効果が認められたもの。トクホでもプラセボ効果も含めた試験をしている。
- ポリフェノールはまだトクホになっていないという意味は→トクホでなくても最近の科学的知見で良い効果が明らかになったものがあるということ。カカオもカシスもトクホマークはとれていない。食品にどこまで効果を期待するのか、医薬品と食品の区別をどうするのかという二つの問題があり、厚生労働省も悩ましいようだ。しかし、生活習慣病に対する食生活による改善への期待はふくらんでいる。したがって、医薬品と同じような試験がトクホにも求められている。
- トクホはどのくらいの期間、飲めばいいのか→カシスは3時間以内、オリゴ糖は数時間頃から効果が現れた。一方、ココア・チョコレートは4−8週間かかった。血圧、コレステロールは効果が体感しにくいものと思う。
- 健康の指標として献血をしている。あるものを食べたときにコレステロールが下がった経験がある→コレステロールは食事の影響を受けて食後に変動しやすい。トクホでは着実に下げるものが選ばれている。
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