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武庫川女子大学バイオカフェ開かれる |
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2008年2月2日(土)、武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科地域社会活動委員会と共催により、同学クリステリアでバイオカフェを開きました。お話はNPO法人くらしとバイオプラザ21専務理事真山武志の「ジョンウェインはなぜ死んだ」でした。参加者全員がサイエンスカフェ初参加でしたが、青木浩子さんによるアイリッシュハープ演奏も行われ、和やかな話し合いができました。
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瀧井幸男先生によるスピーカー紹介 |
「ジョンウエインを知らない人も増えました・・・」 |
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お話の概要 |
ジョンウェインをはじめとする往年の西部劇のヒーローを演じた俳優にガンで亡くなっている方が多いのは、原爆実験場のそばで、ロケがおこなわれたために、放射能によってガンが誘発されたのではないかという仮説がある。これは検証されていない。これはガンを起こす1番目の理由で放射線によるもの。
ヨーロッパで暖炉や煙突の多い地域に、煙突掃除人に陰嚢ガンが多かった。疫学的に検証され、すすの成分であるベンツピレンによってガンができたことから、煙突掃除人の職業病として認められた。ベンツピレンは後に発ガン物質とされた。これは2番目の理由の、化学物質によって引き起こされたガン。
化学物質によるガンでは、ウサギの耳にコールタールを塗って人工的にガンを初めて作った研究があり、これは日本人の山極先生によって行われた。ウサギの耳は皮膚が薄くコールタールがよく吸収されてしまった。
3番目はガンウイルス説。ウイルスは細胞がないと生きていけず、結晶にもなる。ラウス先生がウイルス説を確立。ニワトリのガン細胞をすりつぶして、実験をした。細菌学全盛時代だったので、ラウス肉腫の研究が認められのたは50年後で、そこでノーベル賞を受賞した。
4番目に遺伝に関係するものがある。ガンは遺伝するという言い方は間違い。しかし、ガンの多い家系の家系図を作ると、ガンになる傾向は誰でも持っていて、発症のきっかけになる環境が関係することがわかる。
ガンとは、指を切ると、その部分の細胞が増殖して傷が治るが、細胞が増殖し続けばガンになる。体細胞は、新陳代謝するが、そのときにはガンは受け継がれない。
心臓、赤血球にガンがないのはなぜ。胎児の赤血球(赤芽霊には核があるのに、生まれた後に造られる赤血球には核がない。毛細血管に入れないので、核を捨てた赤血球が体中に酸素を運んでいる。
ガンができるには理由には、先に説明した、放射線、化学物質、ウィルス、遺伝の4つがある。またDNAがある細胞にガンはでき、このDNAに傷がつくとガンができる。
このことを、黒木登志夫先生はDNAが3文字を1組としてアミノ酸の暗号にするというルールがあることから、「バラが咲いた、バラが咲いた」という歌詞が、点変異を起こすと「バカが咲いた」となるようなものだと例えて説明している。
しかし、人間の体には防御システムを持っているので、DNAが傷つくとすべてガンになるのではない。免疫系のNK細胞(natural killer cell)はガンにとりついてこれを殺してしまう。これも防御システムのひとつ。免疫が活発ならばガンにはならない。したがって、ガンにならないようにするには免疫系を元気にしているとよい。
疫学調査によると、タバコをすわない、運動、緑黄色野菜を食べるなどがいいとされているが、一番大切なのは、楽しく暮らしてストレスを少なくすることだと思う。
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アイリッシュハープ演奏 春木浩子さん |
西部劇にちなんで、フォスターのケンタッキーの我が家、金髪のジェニーが演奏されました。合間にアイリッシュハープの説明がありました。アイリッシュハープはグランドハープより小さく、赤がド、青がファと弦には色があるなど。
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会場風景 |
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アイリッシュハープの説明 |
春木さんのハープ演奏 |
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話し合い |
は参加者、→はスピーカーの発言
- 西部劇の映画関係者にもガンが出たのですか→調査されていないが、恐らくそう考えられる。
- 放射能によって起こる特徴的なガンがあるか→放射能は体の深部に届くので、臓器にガンができる可能性がある。紫外線は透過性が弱いので体表面で皮膚がんを起こす。オーストラリアでは、皮膚の弱い子供の日焼けに気をつけているそうだ。
- 体調が悪いとヘルペスが出るが、ヘルペスウイルスとガンは関係があるか→ヘルペスウイルスの仲間でパピロマというウィルスは子宮頸ガンと関係があるといわれている。ヘルペスが出やすいときは、疲れて免疫が弱っている。ウイルスは体が弱っているときを狙っているので、休養、消毒、栄養、睡眠に気をつけられるといいのではないか。
- ヘルペスは抗ウイルス剤で治まるが、かえって出やすくなる気がする→抗ウイルス剤では全ウイルスを殺せないので、対症療法的になり、体が弱るとまた出てくる。
- 肝臓がンは遺伝しますか→肝臓がンは先ほど述べたような理由で偶発的にガンになっているだけだと思う。研究されているのでは、消化器系のがんに遺伝性のものがあるようだ。しかし、両親がガンでもその子供もそうだとはいえない。
- パーキンソン病もガンや遺伝と関係があるのか→パーキンソン病は神経伝達化学物質のバランスを欠いているために起こる。今はいい薬があり、以前のように心配なさらなくても大丈夫でしょう。
- ガンでは「疫学研究による」ということば出るが、疫学研究とはどんなものか→これを話すと長くなりますが、森鴎外は陸軍軍医総監でコッホのもとで細菌学を学び、兵隊の脚気に対して細菌説を考えていた。これに対し、海軍の軍医総監高木兼寛(後に慈恵医科大学を創設)は、兵隊に白米食とパン食を与えてアルゼンチンの南極よりにあるTAKAGI岬まで往復し、脚気はパン食で治ると考えた。この結果、白米食の陸軍は日露戦争で脚気のために苦戦し、パン食の海軍はバルチック艦隊に勝利した。この話は吉村昭著「白い航跡」に描かれている。これは、まさに現代の臨床試験にも通じる「疫学の考え方」によるものだ。疫学研究ではこのように病気そのものだけでなく、患者を集団で捉え、数、時期、分布などを分析・検討する。ロンドンでコレラが発生した時、ある井戸の周りにコレラが多いことから、井戸水が原因であることを突き止めた。これも疫学研究の好例。
- アスベストによるガンが疫学で注目されたが、今後増えそうなガンは?→日本の食事が欧米化し、ガンの発生する臓器が欧米型になってきている。日本人は塩分や刺激物で胃がんが多かったが、最近は欧米に似て大腸がんが増えてきている。同時に高齢になると起こる高齢者悪性リンパ腫もある。これは長生きと一緒に増えるガン。
- 我が家では野菜を気をつけてよく食べていて家族は元気。野菜も高くてもよいものを選ぶ。
- 食品添加物とガンの関係は?食品添加物は大丈夫と思いつつも気になる→国が出している食品添加物公定書というものがあり、変異原性試験(遺伝子に傷を与えるかどうか)など多くの試験を行ったデータをもとに使用量、食品の種類による使い方、など厳しい制限が加えられている。日本人は自然嗜好を伝統的に持っており、外から何かを加えると不安を感じるようだが、現代生活は食品添加物がないと流通させられない。よい、悪いを決め付けるのでなく、消費者の選択が重要。
- 悪い業者が公定書に従わないときは?→全部ではないが、検査をしていることで抑止力も働いている。
- 表示に増粘多糖類というのは何か?化学物質名でないと調べることもできない→こんにゃくのようなもの。糖のつながった構造をしていて、どろっとさせる働きがある。山芋もそれにあたる。増粘多糖類というのは公定書で定めている用語。
- 賞味期限が切れても大丈夫だろうか→私は甘いものが好きで饅頭をよく買うが、保存料何も入っていない饅頭にはその日を食べないとだめ。いつ食べるかも考えて選んではどうか。
- 〜会場で挙手したところ、会場参加者の全員が賞味期限の日までは食べて、90数%は翌日でも食べると回答〜
- 製造者は、賞味期限では味の保証し、消費期限は品質保証なので、区別してみたほうがいいと思う。
- 生産地からスーパーまでの距離を考え、遠方からの食品は止めて、近距離を選びましょうという国があるそうだが、日本はどうか→フードマイレージといって、消費地までの距離を加える考え方があり、日本はフードマイレージが多い。自給率を45%にできる農業政策が実現するようにと思う。 昭和55年には、75%だったのだから、何とかしたいもの。欧州はほとんどが自給率100%かそれ以上。
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