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茅場町バイオカフェレポート
「お皿の上の水族館〜チリメンジャコに学ぶ」

 20008年1月18日(金)、茅場町サン茶房で、今年初めてのバイオカフェを開きました。お話は、きしわだ自然資料館学芸員の風間美穂さん、友の会の藤田吉広さんによる「お皿の上の水族館〜チリメンジャコに学ぶ」でした。始まりは高橋さんのバイオリン演奏。 参考サイト きしわだ自然資料館 http://www.city.kishiwada.osaka.jp/sosiki/k-nature/

ヴィバルディ四季より「冬」の演奏 風間美穂さん
 
藤田吉広さん  


風間美穂さんのお話の主な内容

チリメンモンスターとは
 チリメンジャコの原料になる小魚を獲ると、200種類以上の生物が獲れる。チリメンジャコになるイワシシラス(カタクチイワシの稚魚)以外のものを、私たちは「チリメンモンスター(略してチリモン)」と名づけ、大阪湾の生物、漁業、食などを学ぶ教材とした。チリメンジャコは2%の塩水で茹でて乾燥させるので、チリモンの同定に大事なヒレなどがとれてしまい、チリモンの同定は大変むずかしい!
 今、テーブルの上にあるチリモンは和歌山県湯浅で10月と11月初めにとれたもので、チリメンジャコ屋さんから購入した。チリメンジャコ以外の軽いものは送風機で飛ばし、残りの大きいものはおばさん達が針で突き刺して除去しお店に出す。チリメンジャコが高いのはこういう手間がかかっているから。
皆さんの前のお皿の上のチリモンの中で、赤いシャコやカニのこどもは11月に獲れ、タツノオトシゴは10月に獲れたもの。このように、季節によって混じり物の種類が変わり、チリモンには季節が現われる。イカやタコのこどもがいる時もあれば、カタクチイワチだけで、余りより分けがいらない日もある。

魚庭(なにわ)の海
 なにわの海は明石海峡と紀淡海峡からしか水が入らない閉鎖的な環境。紀淡海峡は地引網にナウマンゾウの化石が入ってくるような古い地層。今は海底ケーブルを傷つけるといけないので、底引網は禁止。日本の漁業の将来が心配されているが、なにわの海には20-30代の漁師さんがいるので、平均年齢は若い。
 大阪湾は汚いから、獲れたものは食べたくないという人もいるが、実際には食べられるものだけで230種類、食べられないウミガメ等も入れると400種類以上の生き物がいる。関西空港付近では、スナメリという小型クジラの生息も確認され、アカウミガメ、アオウミガメ、オサガメも入り込んでくる。けれど、埋め立てが進み砂浜が減少すると獲れる生物種も減ってきそう。。。。

漁業
 大阪湾では主にバッチ網(汽船船引き網)という方法でチリメンジャコを獲る。バッチとは、お父さんのももひき(ズボンした)のこと。赤旗の船と緑旗の船の間でバッチ網を引き魚を集め、途中にあるジッパから取り出して、運搬船で運びすぐに茹でる。チリメンジャコは傷みやすい。バッチ網には、育つと高く売れる肴の稚魚も入るので、バッチ網ができるのは1週間にたった2日から3日。しかも決められた時間内だけ。網目も工夫して獲り過ぎないようにしている。
以前、埋め立てがされていないころは地引網でとられていたが、今は、和歌山県美浜町煙樹浜の地引網漁業が、県の無形民族文化に指定されている。
このように、チリモンは海の生態の指標であり、海の環境は漁法にも影響する。

チリモンの誕生
 青少年のための科学の祭典のブースに生物系で出せるものを考えたのがきっかけ。
 「お好みチリメン」といって、地元ではよりわけてないものを食べるが、見場が悪く、エビ・カニのアレルギーの人がいるので、カタクチイワシだけを選別し、殺菌作用のある遠赤外線乾燥機で乾燥する。残りは、産業廃棄物で捨てられていたが、私たちが実費でチリモンを引き受け、業者には産業廃棄物が減ったと喜ばれている。チリモンからは、漁業や魚のことを教室にいて学べるので好評。去年は、水族館での親子あわせゲームも考案して実施。チリモンは漁業、廃棄物、食、生態と広く発展した幸せな教育プログラムだと思う。

チリメンジャコの中にタツノオトシゴが! えり分けたらカードにはって確認する



藤田さんのお話の主な内容

 私は、チリモン考案者と言われていますが、実際には友の会有志で作ったイベントで、チリモン誕生には(私を含む)3人の父と1人の母(風間さん)がいます。

チリモンから見る生態系を学ぶプログラム

  • チリモンコレクションカード:木工ボンドでチリモンをはりつけて、同定して持ち帰る
  • パズルカード:絵の書いてあるところにチリモンをはる 時間を決めて競争する。季節で内容を変えていきたいと思っています。
  • 水族館連携プログラム 親子あわせ:チリモンを木工ボンドではり、親の魚の種類のプリクラサイズの写真を、水族館の水槽の前ではる。近くの海に住む地味な魚もよく見てもらえるようになるが、魚の種類だけ担当者も必要なので、大人数のスタッフがいないとできないという問題もあります。
チリモンの種類
 脊椎動物である私たちの知っている魚以外にもいろいろな生物がいる。
節足動物:カニ、エビ、カイアシ(ケンミジンコ、ウオジラミ)、フクロエビ類(アミ・フナムシの仲間など)、メガロパ(カニの幼生)、異尾類(ヤドカリの仲間、カニダマシ)、口脚類(シャコ)、
端脚類:(タルマワシ)
軟体動物:タコ、イカ、浮遊性の貝(クリオネに近い仲間)
棘皮動:ヒトデ、バフンウニ、
毛顎動物:ヤムシ
刺胞動物:クラゲ
 チリメンジャコの生物の種の構成をみると、非常に多くの種類の生物がいるようだ。私たちはエビ・カニしか知らないが、甲殻類のなかには魚の餌になるものなど食物連鎖の重要な位置にいるものも多い。

海の食物連鎖
 海の中にも、植物性プランクトン→動物性プランクトン→小魚→大きな魚という食物連鎖があり、チリモンの多くは動物プランクトンの世界に属している。私たちが認識するのはせいぜい小魚以上。けれど、チリモンがいなければ、私たちが食べたり、鑑賞している魚は存在できないわけで、いわばチリモンは海の基盤といえます。チリモンは食卓で海の中のことを手軽に知ることができる教材だと思う。

チリモンのこれから
 これから、季節や年度をこえてチリモンを調べていくと、海の環境を調べるツールになると思う。小田原、名古屋の沖、瀬戸内海、天草、土佐でもチリメンジャコを食べているので、地域の特性と普遍性もチリモンを通じて見つけてみたいと思う。



 
会場風景  
大人もえり分けていると夢中になる お皿の上には不思議な形の生物がいっぱい


話し合い
  • は参加者、→はスピーカーの発言
    • 海水浴場にもチリモンはいますか→波打ち際にカニの子がいるところもある。防波堤を建てると入ってこなくなる。夜光虫は6-11月まで新月の夜に光って見えることがある。
    • 漁業ができるのはどこ→淡路島沖、関空沖がほとんど。チリメンジャコ漁では、同じ漁場で幾つも網を引いて獲る。
    • チリモンは世界中にいるのか→チリメンジャコをたべるのは日本くらいらしい。冷蔵庫、冷凍が発達して、傷みやすいチリメンジャコが食卓に上るようになった。昔はほしか(肥料)が多かったので、肥料屋さんがチリメンジャコ屋さんになったところが多い。歴史は浅いと思う。
    • 台湾でチリメンジャコを作っていた→安いチリメンジャコには、インドネシア産があり、見るとシャコが多く入っていた。
    • チリメンジャコとシラスは同じ物?→同じものだが、シラスは柔らかく、ジャコは硬いらしい。
    • 関東がシラスで、関西がジャコですか?→シラス船団はネットで築地と大阪の相場を比べて、チラスやチリメンジャコに加工している。
    • シラスのシーズンは?→大阪湾では春シラスはだいたい5-8月、秋シラス9-11月。カタクチイワシが何度も産卵するので、その間が漁期になる。イカナゴは北方系で温度が低くないと産卵しないので、温度が上がりぎみの現在では、漁期が短くなり、漁獲量も減っている。
    • チリメンジャコと棄てる物の割合は→割合は時期で異なる。獲れた物を見てチリメンジャコに加工するかどうかを決める人がいて、7割以上がチリメンジャコなら加工するらしい。
    • アレルギーはどの位エビが入ると出るのか→アレルギーが出て苦情がきたこともあるらしい。食べない約束でチリモンの学習をしても、感想に「おいしかった」と書いてくる小学生もいる。
    • チリメンジャコの発祥地は→いろいろな説がある。大阪・瀬戸内海、有明海など。余り資料がなく調査中。江戸時代に大阪の台所にあったという説もある。土佐は生で食べ、瀬戸内ではアナゴの稚魚(ノレソレ)を酢醤油で食べる。江の島にも生シラス丼がある。
    • チリメンジャコの北限は?→茨城まで。東北はないらしいがイカナゴを生で食べる。日本海はすぐ深くなり、稚魚の住める浅瀬がなく、日本海側は食べないようだ。
    • 大阪湾の魚のお薦めの料理は?→岸和田ではテンジクダイのこどもや干したエビ(ゴヨリ)をダイズや古漬けと煮る郷土料理(じゃここうこ・じゃこまめ)などがある。今は加工業者がいなくなり、郷土料理がなくなる気がする。
    • 4年間チリモンをやっていて珍しい種類は何?→コバンザメ、ワニギスの子、ウミノミ、クーマなど。これらは4年で1−2個体しか出ていない。
    • イワシが獲れなくなっているそうだが→チリメンジャコはカタクチイワシの子。昔はマイワシの子をチリメンジャコにしていたらしい。
    • 大阪府内の小学校で行ったチリモンキャラバンのきっかけは?→地場の魚が食べられにくい現在、大阪湾のいきものとそこで行われている漁業を知ってほしい、という気持ちで大阪府水産課と協同して行った。稚魚と漁業、食育の勉強にもなると好評である。魚庭(なにわ)の海の魚のレシピも作っている。
    • 私の会社は船底塗料の関連会社。大阪湾でテストして錫でない塗料でクリアできたら。どこの海でもOKといわれたことがある。大阪湾はきれいになったはずだと思う→海はきれいになったが、自然の干潟など、自然浄化するシステムがまだ整っていない。水は澄んでいるが、浄化の下げ止まりだそうです。
    • 地引網ができなくなったのはなぜ?→地引網のできる自然の浜がない。すると砂浜特有の生物もいなくなる。昔はガッチョを嫌になるほど食べさせられたのに、シャコやガッチョがいなくなり、環境が食生活も変えていると感じる。
    • 昭和46年より前のイワシシラスの漁獲データがないが、見る限り漁獲高は余り変わっていない。
    • 私はシャコを食べない富山生まれ。見るだけでも気持ち悪い→シャコは口脚類でエビ(軟甲類)で元は同じ仲間だったが、その後で分かれて進化した。インドネシアなど南に行く程シャコの種類が増える。
    • チリモンは科学コミュニケーションのやり方として面白いと思う。子供たちの反応は?→31校で実施し2000人にアンケートを行った。96%が「楽しかった」と答え、海の生き物の多さに驚き、生き物を守る運動をしたい、海につながる川もきれいにしようという子供たちも出てくる。大阪湾の生き物の多様性を目で見られ、小学生も1時間で40種類は見つけられる。助成金なしでも活動をしたいという学校もある。大阪府も乗り出してくれることを期待している。漁業者からも大阪湾を知ってもらいたいという声がある。大阪湾は汚いと思っている人が多かったが、チリモンの反響は予想以上に大きい。


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