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平成19年度一般向けバイオテクノロジー実験講座開かれる

茨城大学遺伝子実験施設;8月25日(土)、26日(日)
東京都立科学技術高等学校;11月17日(土)、18日(日)

茨城大学遺伝子実験施設の講座には、同施設、同大農学部とNPO法人くらしとバイオプラザ21の共催で、一般の方15名と高校生6名の21名が参加、東京都立科学技術高等学校の講座には、同校、日本科学未来館友の会、茨城大学遺伝子実験施設、NPO法人くらしとバイオプラザ21の4機関の連携で開催、一般の方15名と高校生5名の20名が参加しました。
科学技術高等学校では、同校の鳥居校長から、「本校は立派な実験設備があるので、皆さんと連携して、本講座を開けて喜ばしく、長く続けていきたいと思う」と挨拶がありました。
いずれの会場でも、熱心に講義を聞き、実験をしました。
本講座は2003年開始以来今回で10回(茨城大学遺伝子実験施設5回、日本科学未来館3回、東京都立科学技術高校2回)を数え、参加者には2003年までは教育目的の組換え実験指針及び、2004年以後は2004年2月制定のカルタヘナ法について説明し、規制に基づいて実験をしました。

茨城大学遺伝子実験施設で開催した講座の参加者 講義する久留主先生
都立科学技術高校で開催した講座の参加者 鳥居校長先生の挨拶

実験講座の主な内容
1.講義
 1)バイオテクノロジーの基礎
 2)植物バイオテクノロジー最前線
2.実験
 1)DNAをはさみ(制限酵素)で切る⇒電気泳動で見る
 2)光る大腸菌を作る
 3)納豆菌からDNAを取り出す 他
3.施設見学



講義「バイオテクノロジーの基礎」 

     久留主泰朗先生(茨城大学遺伝子実験施設長)

 進化論を発表したダーウィンが生まれてもうすぐ200年になろうとしている。
例えば、大腸菌からヒトまでの全ての生き物は遺伝情報としてDNAを持ち、DNAは複製して子を作る情報とmRNAに転写されてたんぱく質をつくる情報を担っている。RNAには、mRNA以外にアミノ酸を運ぶtRNA,タンパク合成の場(リボゾーム)に存在するrRNAがある。mRNAは3文字でひとつのアミノ酸をコード(指定)している。リボゾーム上でmRNAが読み取られ、たんぱく質が出来る。
 DNAの2本鎖は高温にすると1本鎖に解離(変性)するが、ゆっくり冷やすと元の2本鎖に戻ると性質があるが、たんぱく質は加熱すると変性して元には戻らない(ゆで卵は生卵に戻れない)。
 制限酵素はDNA上の特定の塩基配列を認識してDNA鎖を切断する。その切断が糊しろの形で切断されると、相補する糊しろDNA鎖があればつなぐこともできる。
 今日と明日の実験で、オワンクラゲの蛍光たんぱく質(GFP)を作る遺伝子を組み込んだプラスミドを使って、大腸菌に入れる実験を行い、光る大腸菌を作る。
 ホタルの光は発光だが、オワンクラゲは蛍光である。 現在では、蛍光や発光たんぱく質は生命科学分野で、特定物質の生体内での場所と量を調べることに使われている。
 今年から、遺伝子組換え研究の対象生物として病原菌を組換えると、これは感染症法の対象になる。これらの規制はバイオテロを想定して厳しくなった。

<2007年4月感染症法の改訂>
一類 エボラ出血熱、マールブルグ病ペストなど
何人も所持・輸入・譲り渡し・譲り受けをしてはならない
二類ジフテリア、SARS、結核菌など
所持・輸入しようとするものは、厚生労働大臣の許可を受けなければならない
三類コレラ、腸チフスなど
所持・輸入しようとするものは、厚生労働大臣に事後届出をすること
四類高病原性インフルエンザ、デング熱
同定したら届け出て、10日以内滅菌。無害化をしないと罰金、懲役刑

参考サイト:http://www.pref.gifu.lg.jp/pref/s11223/kansenshouhou/index.htm




講義 「植物バイオテクノロジー最前線」 

     安西弘行先生(茨城大学遺伝子実験施設 准教授)

 バイオ技術を使った身近な果実には、種なしスイカ(コルヒチン処理で3倍体にした)、種なしブドウ(ジベレリン処理)がある。最近では、種なしビワ(コルヒチン処理とホルモン処理)が商品化一歩手前にある。ハクサイとキャベツ(カンラン)との細胞融合でできたハクランが、一時期商業栽培された。
 ブロッコリーやトリのレバーなどのDNAは洗剤やアルコールを使って取り出せることなどから、私たちは食物としてDNAを食べていることがわかる。
 植物を対象にした遺伝子組換え技術は、根頭がんしゅ病(アグロバクテリウム ツーメファシエンスという名前の土壌微生物が起こす病気)がヒントになってできあがり、アグロバクテリウム法といわれている。他の方法には、パーティクルガン法がある。
遺伝子組換え技術の利用で、園芸用の花の開発は日本でも進んでおり、青いカーネーションが売られている。ダイズやトウモロコシを中心とする遺伝子組換え作物の世界での栽培面積は、アメリカ、ブラジル、カナダなどを中心にして10年で50倍に増加した。ハワイ島では、リングスポットウイルス病耐性遺伝子組換えパパイアの栽培により安定生産を確保した。マラリアの病気に対するワクチンバナナが研究されている。実用化できれば、注射などの器具がなくて、医者や看護師がいなくても、バナナの苗を植えかえるだけで、病気の予防が可能となる。更には、暑さ、寒さ、乾燥などの環境に強い作物や品質のよい作物を作ることや汚染土壌などの環境浄化をする微生物や植物を作ることが期待されている。
 日本で遺伝子組換え作物が受容されないのは、消費者にメリットがみえないからではないか。私は、日本の消費者が求める付加価値のある遺伝子組換え食品の研究・開発を目指した研究をしている。ヒト母乳に含まれるラクトフェリンを入れた遺伝子組換え米を作る研究は残念ながら特許で負けてしまった。今、テーマの一つとして、ヤーコンからフラクトオリゴ糖を作る遺伝子を取り出し、この遺伝子を入れたテンサイを作る研究をしている。サプリで栄養を整えるのか、付加価値のついた遺伝子組換え農作物を食べるのかという選択もあるのではないかと思う。



実験室風景

実験は安西先生の指導の下、各実験台に一人のTA(ティーチングアシスタント)が補佐して行われました。実験だけでなく、施設見学も行われ、珍しい機器への質問もありました。最後には、修了証書が授与されました。

(茨城大):茨城大学遺伝子実験施設撮影の写真 
(技術校):東京都立科学技術高等学校撮影の写真
安西先生の講義(技術校) 実験の説明をする安西先生(茨城大)
TAさんの説明風景(技術校) TAさんの説明風景(茨城大)
TAさんの説明風景(技術校) 実験をする参加者(技術校)
実験をする参加者(茨城大) DNAに制限酵素を加える(茨城大)
37℃での酵素反応(技術校) 寒天ゲルにサンプルを注入(茨城大)
電気泳動後にDNAバンド(技術校) 電気泳動結果の説明(技術校)
茨城大学遺伝子実験施設の見学 茨城大学遺伝子実験施設の見学
 
修了証書の授与(技術校)
 


茨城大学実施の21名のアンケートから
  1. 実験に参加して:
    @面白かった 21名 Aどちらでもない 0名 B面白くなかった 0名
  2. 実験講座に関心がもてましたか
    @関心が持てた 21名 Aどちらでもない 0名 B関心がもてなかった 0名
  3. 遺伝子組み換え食品の開発に賛成ですか
    @賛成 9名 A反対 1名 B条件付賛成 8名 Cどちらともいえない 3名

都立科学技術高等学校実施の20名からのアンケートから
  1. 今回の実験講座は如何でしたか(複数回答)
      @面白かった  19名 Aつまらなかった 0名 Bわかりやすかった 15名
      Cわからなかった 0名 D簡単だった  4名 E難しかった  2名
      Dもっとやりたかった 11名  Eもうやりたくない 0名
  2. 遺伝子組み換え技術についての、今回の実験講座を通じてどのように感じられたかを教えてください
    (1)参加者の認識の変化
      @認識が大きく変わった 6名  A認識が多少変わった 8名
      B新しい知識は得られたが認識そのものは変わらない 3名
      C特に変わらない    2名  D未回答       1名
    (2)内容
      @これまで感じてきたほど危険でないと思った   5名
      Aこれまで感じたより危険だと思った       2名
      Bこれまで思っていたよりも有用なことがわかった 10名
      Cこれまで思っていたより有用でないことがわかった 0名
      Dその他   3名

実験講座に参加して、「面白かった」や「もっとやりたかった」と答える人が多く、このような実験講座は、遺伝子組換え技術に対する理解を深めるのに良いと思われました。今後も改善しながらこれまで通り実施したいと考えています。


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