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バイオカフェレポート「食品添加物って何」

2007年10月12日(金)、茅場町サン茶房にてバイオカフェを開きました。お話は、食品添加物協会専務理事 高野靖さんによる「食品添加物って何」でした。始まりは、高橋晴香さんによるバイオリン演奏。

高野靖さんによるお話 高橋晴香さんの演奏


お話の主な内容

私の本業はだし屋で、多くのおそばやさんを回り、彼らがいかにだしを大事にしているかを目の当たりにみてきた。今もそれが印象に残っている。食品添加物協会に来て2年半。嫌われ者の食品添加物について知っていただくための活動をしている。

食物の保存
イギリスのスー・シェパードの著書「保存食品開発物語」によると、1861年、ルイ・パスツールは食品の腐食は微生物によると発表しているが、実は、1805年、アペールという料理人は滅菌した瓶にスープを入れて、加熱しておくと、3ヶ月後でも食べられることを確認している。科学は後付けになるのだなあと思う。
このように人々は、一年中、食材の確保をすることに昔から苦労し、その過程で、加熱、冷凍、塩漬け、砂糖漬け、スパイスを利用して、食材の保存方法を見つけてきた。
食料を保存すると、安く、大量に食材を確保することができる。今でも、3分の1の世界人口はいつも飢えていて、3分の1は食材を余らせているのが現実。日本は食を余らせている頂点にいることも覚えておきたい。

危険な食とは
ガンの研究者と主婦のアンケートで、主婦は食品添加物や農薬が原因だといい、専門家は普通の食品こそがガンの原因だとしている。2002年は食中毒で二桁の人が死に(O157食中毒)、毒キノコ、フグでも死ぬは毎年数人死亡者が出る。食の安全を脅かすのは食中毒であって、添加物や農薬ではない。
例えば、安い豚肉を高い牛肉だと表示したミートホープ事件は、偽装の罪であって、これで食の安全が脅かされたという報道は不適切ではないか。日本で認められていない香料を使った食品を作った会社はすべて回収し、香料会社は倒産してしまった。
食品添加物が食の危険を引き起こした例は次のふたつで、これは心しておかないといけない。この後、食品添加物による深刻な事故はなかったと理解している。
昭和30年、ヒ素の入ったミルクで赤ちゃんが亡くなり、今も後遺症で苦しむ人がいる。この事件は厳密に言うと、食品添加物の問題ではなかったのだが、pH調整に使った原料に砒素が入っていたために起きた。
昭和41年、ズルチン(甘味料)が肝臓に障害を起こし、後に食品添加物のリストから外された。

食品添加物が安全に使われている理由
食品添加物は規格が決まっており、すべて公定書に示されており、疑義があるものは、そのつどに削除されている。例えば、アカネ色素は天然色素だが、5%のアカネ色素を混ぜた飼料を2年間食べたネズミで遺伝毒性があることがわかり、即刻削除された。(色素を5%2年間も食べるだろうかという意見もある)
食品メーカーはこれに従っているから健康影響が出るような違反は起こさない。

食品添加物の大原則1
有用性がないものは添加物ではない
食品添加物とは、人の健康を損なう恐れがなく、消費者になんらかの利点を及ぼすもの(有用性と安全性があること)
食品の品質を保つ(保存剤、日持ち向上剤など)
食品の嗜好性の向上(甘味料、着色料など)
食品の製造又は加工するときに使用する(豆腐用凝固材、かんすいなど)
栄養価の補填・強化(ビタミン、ミネラル、アミノ酸類)
添加物は最低限の使い方でいいと思う。実際に、冷蔵庫・冷凍庫の充実で昔より添加物は不要になった。しかし、エネルギーの無駄ではないか。放射線殺菌などの殺菌技術や包装技術の向上で保存料も余り必要なくなるのではないか。
保存料を嫌う傾向があるが、そのために、砂糖、塩が多く使われ味が濃くなっているのではないか感じることがある。
かんすいはコムギ粉を練るときのアルカリ剤。食品添加物の「かんすい」と表示したくないために、木灰をいれて保健所の衛生面で注意をうけたという話もある。

使ってよい添加物は決められている(法律によって)
厚生労働大臣が決めたもの以外を使ったら、微量でも食品衛生法違反になる。使ってよい添加物は、一生食べても大丈夫だと認められた物で、ポジティブリストに掲載されている。日本では、昭和23年から添加物ポジティブリストを使用(米国より10年早い)。

安全性が科学的に確認されているもの
多くの試験を経た食品添加物がポジティブリストに掲載されている。北米、欧州ともほぼ同じ評価方法による。一般毒性試験(28日・90日・1年間反復投与毒性試験)、特殊毒性試験(繁殖試験、催奇形成試験、発がん性試験、抗原性試験、変異原性試験、薬理試験、代謝試験)がある。
「添加物はアレルギーの原因」と言う人がいるが、抗原性試験で一つ一つの添加物がアレルギーの原因にならないことは確認されている。例外として、カゼインナトリウムはミルクに感受性のある人にはアレルギーを起こすことがある。この添加物を含むときは、「乳成分を含む」と表示される。

添加物には食べてよい量(ADI)が決められている
リスク評価は用量と作用のS字カーブをもとに考えられる。作用が出るところと出ないところの境目(閾値)を調べる。食品は作用がでないところ、薬は作用するところでそれぞれ議論することになる。
閾値に100分の1(種差が10分の1、個体差が10分の1の積)の安全率をかけてADI(毎日一生摂取してもよい用量)を決める。物質ごとのADIを決めるのが食品安全委員会の仕事で、厚生労働省は、ADIに従って食品衛生法の中で使用基準を決めている。

食べ過ぎていないかを日本政府は確認している
マーケットバスケット法式といって、品目ごとの国民一人一日あたりの摂取量を調査している。分析に多額の費用がかかる。3年に1回ほど調査している
この結果、ADIを超えて摂取されるものはなく、実際にはADIの100分の1くらいしかとっていないことがわかる。

添加物の品質が決められている
規格基準が決められた添加物しか使われていない。
食品添加物協会で第8版食品添加物公定書(重さ2.5Kgの本)作って販売しており、食品メーカーはこれに従っている。

亜硝酸ナトリウムの話
亜硝酸ナトリウム(蓄肉成分の発色剤)は嫌われているが、ロールキャベツのひき肉をピンクにするのはキャベツの硝酸成分。350gの野菜を食べると、1000分の1の硝酸を食べた事になる(350mg)。この硝酸はヒトの体内で半分は100mgの亜硝酸になる。
しかし、ウィンナーソーセージ1Kgに使える亜硝酸は70mg以下。ソーセージ3本を食べてとる亜硝酸は0.5mgくらい。これが日本の決め方。一方、ドイツではボツリヌス菌中毒防止のために、亜硝酸を使っていないソーセージは違反になる。

食品添加物協会の重点課題
・リスクコミュニケーションがうまくいっていないこと
メディアフォーラムを年に3回開催している。ジャーナリストには、食品添加物協会を添加物に関する記事を書くときのよりどころにしてほしいと思っている。
・コンプライアンス
 会社はしっかりやりましょう。1社が無責任なことをすると、責任を持って働いてきた人に迷惑がかかり、全体の信頼が失われる。

参考サイト 「よくわかる食品添加物」http://www.jafa.gr.jp/tenkabutsu01/index.html

会場風景1 会場風景2


話し合い
  • は参加者、→はスピーカーの発言
    • 家庭科教員です。平成16年国民栄養調査でカルシウム・リンの平均摂取量を計算すると、カルシウム1に対してリンが2以上だった。カルシウムとリンは1:1から1:2が定説だったのに、20-40代男性はリンの取りすぎのカルシウム不足。添加物の危険を訴える本にリンの使いすぎだと思う→リン酸化合物を使わないことを宣伝しているスーパーもある。コカコーラで骨が溶けるというニュースもあった。3500mgはリンの上限となっているが、リンの実際の摂取は平均千数百ミリ。リンはATPのやりとりに絶対必要。骨を溶かして再構築するのが骨の発育。食品添加物から入るリンは食事からのリン総量の3-5%。穀類にリンが多いので、バランスを気にするなら、カルシウムを多く取ることが大事。食品添加物・リン酸塩の入っていないソーセージを食べたところで、バランスには影響しない。穀類を食べない事のがリンを減らすことになる。
    • 外国から来る食品の添加物のチェックはどうやってするのか→180万件の輸入申請があり、検疫所でチェックする。使っている食品添加物、使い方などを申請時に書かせている。国が分析チェックをするのは申請の数%。怪しそうなものを重点的にチェックしている(モニタリング検査)。中国の冷凍ほうれん草など、複数回以上チェックにひっかかったものには、命令検査をする(輸入業者は国の指定した分析機関での成績を添付して、輸入申請する。)これにひっかかると、その国、地域からの包括的輸入禁止となる。但し、違反比率は中国だけが高いわけではない。
    • たたきやすいところがメディアで扱われる傾向があるような気がする。
    • 中国の歯磨き問題は、日本の製造方法では起こらない。日本の国産品だっておなじようなものではないか。厚生労働省医薬品食品局安全監視課が緻密な検査をしている。食品が安全だと限らないという認識は必要だが、大体大丈夫だと思う。
    • 今日の話を聞いて、添加物は余り問題ないと思ったが、どうして高野さんはリスクコミュニケーションに無力感を感じるのか。食品添加物に反対する人たちの論拠は何か→リスクコミュニケーションの前後で考えが変わったかどうかのアンケートをとると1割は絶対反対。食品の危険を訴える本が出すと成功するライターがいて、新聞、本は売れればいいと思っているのだと思うと無力感がわいてくる。
    • リスクコミュニケーションで印象が変わる人はきっといると思う。
    • 食品添加物で手本になる国はどこか→EUの安全性評価は合理的。何百万種類の香料成分を合理的に評価している。物質をグループ分けして論理的に綿密に評価している。欧米で認められていて日本で認めていない添加物が、貿易障壁となっている。1年に決められるADIはせいぜい10種類。貿易障壁になりそうなものからADIを決めているが、なかなか追いつかない。日本の安全性は日本式でよいと厚生労働省はいうが、安全性とはグローバルなものではないか。ビタミン、ミネラルは日本では添加物。欧州は酵素を添加物扱いしていない、など。WTOのSPS協定における技術的障壁を片付けるために、今は一歩一歩進めているところ
    • 環境ホルモンの試験方法の限界はどうなっているのか→環境から人体に流れ込む量は微量。実際にはダイオキシンよりカビ毒の方を検査すべきだと思う。
    • 試験方法が新しくなることはないのか→出てきては消えるものもある。その都度、世界で確認すればいいが、ある説に固執する人がいると面倒なことになる。1986年にBSEが発見され、10年後に人への感染がわかった。2001年に日本で発見された。その都度、世界の科学者が論じ合っていく。このやり方では消費者団体のゼロリスク願望は満たされないだろうが、アカネ色素のようにわかったときに手をうっていくしかないと思う。


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