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バイオカフェレポート
「農薬って安全なの?〜ポジティブリストのもたらしたもの」

2007年7月13日(金)、茅場町サン茶房にて第32回茅場町バイオカフェが開かれました。お話は消費生活コンサルタント森田満樹さんによる「農薬って安全なの?〜ポジティブリストのもたらしたもの」でした。始まりは齋藤篠さんのクラリネットの演奏。

森田満樹さん     齋藤篠さんの演奏


お話の概要

安全と安心の違い
食の安全は科学者が評価するが、これだけでは消費者の安心の気持ちはついていかない。私はいつも、100%安全は存在しないことを初めにご説明するようにしている。
不安と安全の間を研究する手法がリスク分析手法で、食品安全基本法ができ、食品安全委員会で検討している。
消費者が嫌いなものは、農薬、食品添加物、輸入食品など。市民は汚染というと農薬をイメージするようだが、重金属、微生物などいろいろある。

農薬とは
日本は高温多湿で、消費者が見栄えのいい食品を好むことから、その農薬使用量は世界でも多いほうだ。農業は害虫、雑草、病気との闘いで、そこに農薬が使われる。農薬には、除草剤(グリホサートなど)、殺虫剤(クロルピリホスなど)、殺菌剤、植物成長調整剤(種無しブドウに使う植物ホルモン・ベレリンなど)がある。
農薬開発には、10−20年かかり、費用も膨大。それは、農薬には登録制度があり、作物に効果があるか、周囲の植物に影響しないか、人間の健康に悪影響を与えないか、土壌への汚染状況などの試験を行わねばならないからで、毒性試験だけでも30種類近くある。
一般的にいえることは、昔は農薬というと「毒」というイメージだったが、最近の農薬は分解が早く、選択性が高く、毒性が低くな、残留性が低くい。
地産地消など大量に作られないマイナーな作物に対しては、登録されている農薬が少なく、これらのためにお金をかけて農薬登録はしないので、使える農薬の種類が限られてくる。
数年前までは、よく効く無登録農薬使われていたものが、取り締まりが厳しくなり、それらを使うと農家も罰せられるように厳しくなった。

ADI(一日摂取許容量)とは
毎日農薬を一生とり続けても慢性毒性が出ないであろう農薬の量をADI (Accetable Daily Intake) 一日許容摂取量といい、単位は通常「mg/kg/day」で表します。
毎日エサに農薬を混ぜで食べさせ、問題が出なかった量を無毒性量 (NOAEL) といいます。この量に安全係数の1/100を掛けて算出した値。(生物種の違いを考慮 して1/10と個体の体質を考慮して1/10の積。)


残留農薬基準設定の仕方
ヒトが平均的に食べる食物の種類とその量を国民栄養調査から調べる。
それぞれの食物に含まれる可能性のある農薬の量を、お米からこのくらい摂取、コムギからこのくらい、りんごはこのくらい、というように200近くの農作物ごとに振り分けていく。例えば、ドイツならジャガイモを多く食べるという食習慣を配慮して設定する。
最後に国民栄養調査で示されている量をかけて、合計して8割を超えないようになっている。2割は、呼吸、接触などで直接、体内に入るかもしれないと考えて、8割にしてある。
200品目と799種類の農薬の組み合わせに対して残留農薬量が決まっているので、200×799の表をおさめたCDが販売されている。国産品、輸入品ともに値を超えたら食品衛生法違反となる。
最近の例では、
春にイチゴのトチオトメの違反が見つかった(残留農薬基準値は0.05ppm)。
検出能力があがっていて、検出濃度ぎりぎりで、0.6-0.7ppmが見つかり、基準値を10倍超えた例だった。生産者が特定できなかったので、鹿沼市の1万パックがすべて焼却された。このときに鹿沼JA担当者が、「1日、10個以上食べなければ危なくないのに」というコメントが話題になったことがある。国民栄養調査では、イチゴは1日2個となっており、それをもとにイチゴに使う農薬の基準値が設定されている。毎日、基準値の10倍になったものを食べて、健康に被害を与える量ではないという表現したことが問題になった。
実際には残留農薬検査は農作物を洗わず、皮ごと検査するので、調理では皮をむいて8割、水洗いで半分の農薬が無くなり、ゆでたり、油炒めして食べると更に減少する。
基準値を超えた例は、平成14年度、国産品0.2%、輸入品で0.3%。
最近使われている農薬は分解性が高く、日に当たると分解し、0.5ppmを超えるものが万に2−3件あるぐらい。
スーパーで農薬を減らして顔を見える野菜を売っているが、何も表示されていなくても、基準値以下で栽培されることになっている。

ポジティブリストの誕生
平成18年5月26日までは基準値が設定されているものといないものがあり、これはネガティブリストといわれていた。設定されていない農薬は罰せられなかった。
ポジティブリストになってすべての農薬、農産物に対して基準値が決められた。
従来は250農薬しかなかったので、ポジティブリスト作成にあたり、日本であまり使われていないず、データがないものには0.01ppmという厳しい数値がつけられ、違反例が増える結果になった。
日本にデータが無いときには、国際基準などを使う。
食卓ではわからないが、ポジティブリストができて、中国のものは命令検査が行われシップバックでしょうがなどが返されている。国内に入るときと、国内で流通時に保健所が検査をしている。中国のシソ、ショウガ、葉ものが輸入されにくくなっているが、にんにくにはあまり違反事例はない。
命令検査とは、違反が続くと、モニタリングといって船ごとに検査をすること。

まとめ
農薬は怖いというが、動物実験で無毒性量→ADI→残留農薬基準が決められていて、違反例は万に2−3個くらいしかなく、違反のものでも実際、口に入るまで残るものは少ない。検査は輸入品の方が国産品の倍以上行われている。
食品安全基本法では、消費者の責務として、食の安全確保の知識と理解を深めるように書かれている。
厚生労働省の食品安全情報で、ここ1ヶ月の違反事例が見られる。自分で調べ、プラス・マイナス情報を比べ、どうぞ「食べ物でクイモノにされない」ようにして下さい。

 
会場風景  


話し合い
  • は参加者、→はスピーカーの発言
    • ポジティブリストができて安全性はあがったのか→難しい質問。違反、シップバック(作物を載せた船ごと返してしまう)、命令検査が増えたのは事実で、一部の消費者団体は安全性があがったと考えている。0.01ppmは違反だといって輸入元に返しておいて、日本で実際に使っている農薬の基準が甘いと言っている人達もある。
    • 日本が世界で一番農薬を使っているのか→データとしては明確になったわけではない。
    • クロロピリホスはほうれん草では0.01ppmだが、日本のコマツナでは10ppmだと問題になったので、日本では果物にクロロピリホスを使っている。
    • 蛍がいなくなったので、農薬の威力を感じる。農薬が減っても蛍が復活しないのはなぜ→一度生態系がこわれると復活しにくいということではないか。虫、魚毒の他に希少生物の試験は行われている。昔より蛍やメダカがいると、里山農家からは聞こえてきている。
    • 静岡の大井川で蛍が増えているという話もある。
    • 蛍のシーンが出ると農薬を使っていない場所かと思っていたが。
    • 長野では空中散布をしているが、生息環境が残っていればまた増えると報告している。
    • ダイコンの葉やカブの葉は農薬で危険だと思っていたが→バナナの皮などを含め全体で検査している。
    • 海外のものは残留農薬の基準値が異なり、高く、危険なのではないいか→日本ではポストハーベストといって収穫後は使わないが、米国はポストハーベスト農薬を使うことが許されている。だから危険だというのでなく、海外では収穫後、収穫前という考え方はせず、口に入る農薬の量として考えている。日本ではポストハーベストは食品添加物の基準値の中で設定されている。
    • 海外のものは農薬がとても怖いと思うが、何を避ければいいのか→あるものだけを食べるような、特殊の食生活をしなければ大丈夫です。基本的な考え方は同じなので。
    • 799種類の農薬ごとに何ppmかを決めれば、農産物ごとに決めなくてもよいと思うが→例えば、トマトは10回しか散布できず、収穫まで残存期間なども考えて決めてある。農産物ごとで散布回数や時期も変わるので、農産物ごとに定める必要がある。日本の農家も防除日誌を今まで以上に厳しくつけ、隣の畑から飛んできて検出されないような努力もしている。中国も同じ。厳しくなると、捨てる量は増える。
    • 無農薬作物は、植物が自分を守る毒物を分泌するので危険だと聞いたが→無農薬だと収量が減り、りんごでは3%しかとれないこともある。虫にくわれたときに防衛物質を植物体内で合成するのも事実。無農薬野菜のデータは少なくわかっていないことが多い。「天然は安全で人工物が危ない」という感覚で捉えない方がいいと思う。
    • 今日の話で農薬は極めて安全だと思った。→水洗いで3割。実際に基準値まで残っていても7割は落ちる。マーケット法式といって、口にはいった農薬の量を調べたら、ほとんど検出されず、合計してもADIの1−5%しかなかった。
    • 環境ホルモンに関する農薬の検査はあるのか→農薬取締法で調べられているので、環境ホルモンとしての農薬の基準はない。
    • 環境ホルモンで使用をやめた給食のプラスチックなどがまた使われ始めている。
    • 発ガン物質はいろいろあるが、がん患者に、あなたのガンはこの発ガン物質によるものですと示したデータや検査はあるのですか→ヒトとの相関関係が出たものはない。エイムズテストといってサルモネラ菌を用いた変異原性(DNAの影響を及ぼすかどうかを調べる検査。DNAに変化が起こったからといってガンになるとは限らない)の検査方法がある。
    • 発ガン物質に閾値がないという考え方に問題があるという意見もある→ガンの原因を訪ねると消費者は食品添加物が原因だといい、科学者はたばこや食生活の偏りだと指摘している。現実問題として食品添加物などを避けて食生活に偏りが出ることが怖いと思う。
    • ppmは測定の問題。ごくごく微量でも測れるようになることと分析結果の信頼性はどうなるのか→サンプリング方法は決まっている。分析結果が実態をどのくらい表しているのかは難しいが、数字の一人歩きは怖い。数字の意味を消費者は良く理解しなければならない。
    • レーチェルカーソン(「沈黙の春」という著書でDDTの悪影響について記述)のお陰でマラリアが復活というが→トレードオフの考え方が難しいようだ。おっしゃるとおりだと思う。それを説明していくのは科学者の責務だと思う。
    • 安全係数の根拠は→個体差10と種差10の積。科学者によってはもっと大きく考える人もいて議論になっている。100でいいという人もいる。



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