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バイオカフェレポート
「自分でできるヘルスケア〜 コーヒーの効用とミステリー」

2007年5月18日(金)、茅場町で30回目のバイオカフェが開かれました。お話は東京薬科大学教授岡希太郎さんによる「自分でできるヘルスケア」でした。初めに、齋藤篠さんによるクラリネットの演奏がありました。

齋藤しのさんのクラリネット演奏 軽妙な話術で、コーヒーの効用を語る岡先生


岡先生のお話の主な内容

はじめに
私はこの春、リタイヤして年金生活者になった。高齢者の健康管理は、「セルフメディケーション」といって自分で管理をせよ、というのが政府の見解。しかし、健康に不安がある年配者は「あるある大辞典」などの情報に頼りやすくなるのが現状で、世の中の情報は疑わしいことばかりで、セルフメディケーションはどうすればいいのか困ってしまう。薬に副作用があるといっても、出る人と出ない人がいたり、アレルギーの出る人と出ない人がいたりする。
一方、世の中にはプラセボ(偽薬)効果で楽しく暮らせる人もいる。プラセボの語源はプラケーレ。「人と楽しむ」という意味があり、よい薬だと信じて楽しく暮らせれば、飲んだ物が実はうどん粉でも構わないことになる。因みに中国ではプラセボを慰安薬と訳しており、この方が意味は近いかもしれない。医者にかかるときはプラセボ効果を上手に使うといい。藪医者でも親切で話相手になってくれる信頼できる医者にかかれば、治療効果が出ることがある。楽しくつきあえない医者にかかると、病が治らないいこともある。病は気からとはよくいったもの。気分がいいと体も動く。セルフメディケーションの基本はプラセボ効果ではないだろうか。

コーヒーについて
コーヒーの花は、クチナシの花と同じ形だが、小さい、アカネ科の花。実の色は緑、赤、黄色。ハワイのコナコーヒーは赤い実だけを摘んで作るので、手間賃が高い。コーヒーの品種に違いはない。モカ、ジャワなどは赤、黄色、緑色の豆を一緒にして作っている。
コーヒーの歴史は約1000年。原産地のエチオピアでも1200年ぐらいでそう古くない。
古い文献に、エチオピアの豆が海をわたってイエメンのモカ港にきたとき、皮膚病が流行したとき、コーヒー豆には神の力を持つザムザムの聖水と同じ効果があると聖職者が教えたという文献がある。これがコーヒーの起源。

カフェインの働き
セルフメディケーションの実践は医食同源(薬学では薬食同源という)。
カフェインはコーヒー、カカオ、日本茶、紅茶に含まれる。
例えば、タンポポコーヒーにはカフェインは入っていない。タンポポコーヒーはドイツが帝国だったころ、人々がコーヒーばかり飲んでビールが売れなくなり、コーヒー禁止令がでたときに畑のタンポポをこがして作られたもの。コーヒーといってもカフェインがない。でも香りはコーヒーそのものに極めて近い。
コーヒーのカフェインはもともと、喘息の薬だった。今でも、お茶、コーヒーをがぶがぶ飲めとすすめる医者もいる。
50年以上前、カフェインより効果が強いテオフィィリンが発見された。患者は高くてもテオフィリンを飲むようになったが、子供に多く使うと副作用が出ることがわかり、処方のときの第一選択薬からはずされた。それでも、医者は喘息の患者に、刺激になるコーヒーは止めるように薦める。こういう現状を見ていると、先進国で文明が進むと、医食同源から離れていくように感じる。
化学式でみるとカフェインとテオフィリンはとても似ていて、違いはメチル基だけ。
カフェインの方が効果は弱い、副作用は出ない、医者と薬屋はもうからない。
テオフィリンは効果が強い、副作用が出ることがある、医者と薬屋はもうかる。
もちろん発作が出たときはテオフィリンが必要だが、予防はカフェインでできる。
製薬会社はカフェインで薬を作ってもみんなコーヒーを飲むと売れなくなってしまうので、カフェインの研究を50年前にやめてしまった。
一方、テオフィリンは副作用がでる場合もあることから、依然としてカフェインの研究を進めていた人もいる。メチル基の数と形を変えて、カフェインの10倍の作用のある物、1万倍の効果もある物も研究されている。

セルフメディケーションについて
2006年、臨床の海外の学会誌に「生活習慣を正すよりも、よく効くやり方なんてあるのか?」というタイトルの論文が出た。肥満した人(BMI>25)4人が1年で1割の体重減の努力をすると、その内の1人が糖尿病にならなくなる。8人が早足20分/日の運動をするとその内の1人が糖尿病にならなくなる。66人が1日にコーヒーを1杯飲むとその内の1人が糖尿病を予防できる。
一方、1人の人を救うためにインシュリン感受性改善薬なら6人が、糖の吸収をおさえる薬なら11人が飲まなければ救えない。
この報告書を読んでいると、薬を服用しても余り効果はなく、生活習慣を改善した方がいいということがわかる。しかし、それが難しい!
生活習慣3大要素は、食事と運動とストレス。3大要素のひとつを守れば、糖尿病のリスクは11%まで下がり、食後に血糖があがるのを抑えると心筋梗塞を90%減らすことができるという報告がある。3大要素のうち、自分で改善できるのは食事と運動だけ。ストレスは自分が馬鹿になるしか逃げようがない。
食事の改善とは、腹七分目にする(八分目は食べたいけれど)、30品目食べる(経済的に高い)、低脂肪食を心がける(寂しい)、運動をする(毎日はなかなかできない)など。どれをとっても難しい。

コーヒーと疫学調査
消化器系の学術誌に、コーヒーを飲んでいると肝臓病にならないという論文が出た。
別な雑誌には、コーヒーを5杯飲んでいる人は肝臓ガンにならない、アルコール性肝硬変にならないなどの論文がでた。このように、コーヒーと病気のなりやすさを論じた論文を1500編くらい読んで、この病気の予防で、コーヒーに効果があるらしいという表(1つ星から5つ星まで)を作ってみた。2型糖尿病、肝臓がん、慢性肝炎、アルコール性肝硬変には確かに有用性が信頼できるようだ。コーヒーこそ、百薬の長といえそう。
1万人の疫学調査は本当に大変で、健康だった1万人に対し定期的に健康調査を続けて調べる。どんなライフスタイルをしてきたか、10年後はどうなったかというように行う。現在、コーヒーに関するデータがたまってきている。
1960年、秋刀魚の焼け焦げを食べるとガンになるという論文が出て、コーヒーは焼け焦げだからガンになるだろうと1960年から調査が始まった。2000年過ぎてからコーヒーは健康によいという論文が出て来るようになった。複数の論文でコーヒーの効果を認めている。
ウィルスが原因であるC型肝炎からガンになった人、ならない人1000人のライフスタイルの聞き取り調査から、コーヒーを飲んでいた人は肝臓がンになりにくいことがわかった。C型肝炎ウィルスのキャリアは350万人いる。いい新薬があるが高価なので、そういう人はコーヒーを飲むといいのにと思っている。

コーヒーの働きについての研究
生のコーヒー豆の成分の研究は進んでいるが、焙煎されたコーヒーの成分の研究はほとんどなく、香りの成分が少しわかっているだけ。焙煎されても変わらないコーヒー豆の成分はカフェインのみ。
従って、コーヒーが肝臓病にいいといっても、どの成分が効いているのかは不明。
「成分ブレンド」といって、焙煎の状況の違う豆を混ぜる方法がある。異なる種類の焙煎した豆を混ぜる従来のプレンドとは区別していう。
コーヒーを飲むことはセルフメディケーションに役立つことはわかってきたが、今の疫学調査結果では、薬事法の条件を充した上で、コーヒーの効果を表示することはできない。

笑いが絶えない会場


話し合い
  • は参加者、→はスピーカーの発言
    • カフェインに喘息に対する予防効果はあるのか→あっても多分弱いと思う。昔の医者の書いたものを読むと、夕方の発作を予防するというような意味のようだ。
    • カフェインに咳をとめる効果はあるのか→発作はのどの慢性的な炎症で、カフェイン、テオフィリンに炎症を鎮めて気管支の緊張を和らげる働きはある。気管支と血管平滑筋では、同じ薬剤でも緊張、弛緩の効果が逆になるので、処方を間違えると大変。国家試験でこの処方を問う問題を間違えたら、点数が足りていても不合格になるくらい、薬剤師には大事な知識。
    • 肝臓の病気に効果を現すものはカフェインだといえるのか→疫学研究の論文の考察では、カフェインも役に立っているだろうが、カフェインだけではないといっている。別の化合物も働いているのではないか示唆している。クロロゲン酸という成分が効いているらしい。クロロゲン酸入り缶コーヒーが出た。生豆抽出物のクロロゲン酸を多く添加しているので、青臭くて飲みにくいらしい。クロロゲン酸は焙煎10分で徐々に減るので、少し焙煎して添加してはどうか。
    • カフェインの成分ブレンドとは?→カフェイン以外の成分がコーヒーにはいろいろ含まれている。アラビカに対して、ロブスタという品種にはカフェインが2倍入っていて、クロロゲン酸も多い。また深煎り豆には焼け焦げ独特の成分が3種類は入っていると考えられる。ブレンドすると違う成分が混ざりあい、味もよくなり、相乗効果、プラセボ効果も出るのではないだろうか。
    • ブランデーをコーヒーに入れるのが好きで、今日のお話だとこれは「いい習慣」だと思ったのですが→全くその通り。
    • コーヒー豆を焼酎に入れておくとおいしいですよ。
    • コーヒーを大量に飲むと骨のカルシウムが抜けていくと聞いたが→コーヒーの飲みすぎは骨がとけるという説、女性更年期の骨そそう症にコーヒーのがぶ飲みはよくないという説はあるが、疫学調査からはよくわかっていない。
    • サン茶房は昭和26年開店、私が昭和36年にこの店に来たころは、朝から多くのお客さんがブランデーコーヒーを飲んでいた。この店ではコロンビア主体でブレンドしている。コーヒー豆を買う店を変えたら、すぐにお客さんにわかってしまい、仕入先を元に戻したことがある。炒り方、入れ方でも違いがでる。コーヒーはハートでいれるとマスターにいわれてきた(サン茶房のママさんの発言)→今は世界中、コーヒーブームで、北京でスターバックスが増えている。 オリンピックまでに300店舗にするといっている。雲南省でコーヒーを栽培していて、ネスカフェはそこでインスタントコーヒーを作っている。
    • インスタントコーヒーにもカフェイン成分はあるのか→yes.コーヒー牛乳にも少しは入っているし、ノンカフェインでも3割くらいはある。全くカフェインがない木がエチオピアで見つかったが、カフェインの前駆体はある。
    • ポリフェノールとカフェインの関係は→全く別なもの
    • テオフィリンとカフェインの違いはメチル基ひとつだそうだが→その差で働きに大きな違いが出てくる。薬の化学構造式はミステリーだが皆勉強したがらない。
    • カフェインを摂取するのはコーヒーでなくても緑茶でもいいのか。3月のバイオカフェのレポートを読んで家で水出し緑茶を作ったがおいしかった→yes
    • 岡先生がコーヒーに取り付かれた理由は→においの研究をしていた頃、先輩の薬用植物の先生がピラチンの合成をしていた。ピラチンの研究に従事した人が子供に恵まれなかったので、関係があるのではないかと言っていた。1986年のサイエンスにピラチンの構造式が発表された。それはフェロモンだった。ハツカネズミは20日で成熟する。20日たった1匹のメスがピラチンを分泌すると、それをかいだ同じケージの他のメスは3日間発情できなくなるという実験だった。人間の場合はどうかと考え、妊婦さんの尿のにおいの成分を調べた。妊娠前になくて、妊娠中に増える成分があり、それはコーヒーのにおいの成分のひとつであるニコチン酸(ビタミンB3)に近いものだった。においの研究から始まって、脂肪代謝にも行き着いた。香りの研究はメタボリックシンドロームの予防に役立つかもしれないと思っている。
    • 今まで、黒こげは栄養学の外にあったが、大いに研究の余地がある。昔、日本には黒焼きという漢方薬があり、利尿作用、覚醒作用があることがわかっている。



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