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講演会「バイオテクノロジーの現状と今後」レポート

2007年5月11日(金)、経団連会館においてNPO法人くらしとバイオプラザ21の平成19年度通常総会を開催し終了後講演会を行いました。日本経済新聞 編集委員 中村雅美さんに標記ご講演をいただきました。

講演される中村先生 会場風景


主なお話の内容

21世紀はどんな時代か
社会を語るキーワードを考えると、20世紀は供給者重視の「生産」、21世紀は需要者重視の「生活」で。価値観の軸足は健康、環境、交流の3K。コミュニケーションとは3つ目のKである交流の中心にあるもの。
科学・技術に求められていることは、地球環境問題の解決、競争力の維持・強化、次世代への対応、生活リスクの回避で、バイオにも同じことが求められているはず。4つのジャンルに対して貢献する技術はIT(情報技術のことを最近はICTといってコミュニケーションも加えられている)、BT(バイオ)、ST(社会システム技術)、NT(ナノテクノロジー)であり、それぞれから、ネットワーク産業、医療・健康産業、生活産業、ナノテク産業という新産業が生まれる。
21世紀は生命科学の時代といわれており、その市場規模は2004年1兆7470億円。右肩上がりに成長してきている。
その中で生命科学の成果が我々の生活の場に密着してきており、関心も高まっている。一見遠く感じられる遺伝子工学も遺伝子治療、遺伝子診断などで身近になってきている。

バイオテクノロジーの歴史
従来のバイオテクノロジーは酵素を中心としたものだったが、新しい生命科学では遺伝子が中心になった。だから、20年前まで(第1次バイオブーム)で人は微生物の狩人だといわれたが、現在の第2次バイオブームでは遺伝子の狩人であるといえる。新しいバイオテクノロジーでは、扱うものもヒトの遺伝子が中心になった。ヒトゲノム解読が終了し利用する時代が始まった。
バイオテクノロジーの応用分野は医療・医薬品、食品・食糧、農産・水産、環境・エネルギーと広い。平成14年には、バイオテクノロジオー(BT)戦略大綱ができ、バイオテクノロジーは大切な政策と位置づけられた。この考え方はイノベーション25にも受け継がれている。

生命技術と企業
バイオテクノロジーは企業を変える。例えばモンサント社は医薬品、化学、食品の部門を売り払い、アグリバイオ中心の企業に姿を変えた。このように、バイオ企業には、異業種から参入した企業やベンチャー企業もいる。
ゲノム解読のビジネスはどうかというと、以前はヒトゲノムの解析費用は5億ドルだったが、現在は1000万ドルで個人のゲノムの解析ができるようになった(これは個人で負担できる金額かどうか、という問題はあるが、確かに安くなった)。
これからは、プロテオミクス(プロテインエンジニアリングともいわれる)がゲノム解析後の課題で、日本は、理化学研究所(横浜と兵庫県)と播磨科学公園都市の2箇所に大きなタンパク分析施設を持っている。世界でこれだけの施設を持っている国はない。施設だけでなく、今後の成果の活用が重要である。

バイオテクノロジーを応用した食ビジネス
ニュートリゲノミクスは、ゲノム情報を利用した食品の新技術で、個人のゲノム情報がその人に必要な栄養補給に役立つことが期待される。機能性食品が開発され、最終的にはテーラーメード食品も誕生するかもしれない。

環境・エネルギー分野へのバイオテクノロジーの応用
微生物による土壌中の揮発性物質、重金属、油分の浄化では2007年には2500億円くらいの市場が期待できる。
日本の自動車はE10(ガソリンに対して10%のエタノールを添加したもの)でバイオエタノールに対応できるはずだが、実際にはバイオエタノールは高価で、補助金でガソリンと同等になっているのが現状。一方、食料品の原料になる穀物が燃料に利用されて、農作物の物価上昇が始まっている。
生分解性プラスチックなどでは、植物を利用した化成品 バイオポリマーの製造も研究されている。

バイオテクノロジーの応用範囲は広い
バイオテクノロジーはよい点も多いが、デメリットも多いのではないか。
遺伝子指紋(DNA鑑定を親子鑑定や犯人さがしに利用している)を利用したビジネスが始まっているが、人権問題、プライバシー侵害の問題が指摘されている。
このような問題にきちんと対応するためには、ELSI(倫理的、法的、社会的の関わり)への配慮が重要である。

科学・技術には4つの壁がある
以前は次の第3の壁までを突破すれば実用化したが、今は第4の壁も大変。
第1  科学的可能性
第2  技術的実現性
第3  経済性
第4  社会の受容(容認)

第4の壁の突破には、社会と調和していくためのELSI(Ethical, Legal, Social, Issue: 倫理的、法的、社会的な事柄)が重要。それらを支えるバイオコミュニケーションが大事だということになる。



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