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シンポジウム「インフルエンザ罹患後の異常行動とタミフルについて」

2007年5月20日(日)、日本薬剤疫学会主催・日本計量生物学会共催の専門家による特別シンポジュウム「インフルエンザ罹患後の異常行動と薬剤疫学」が、東京大学鉄門記念講堂で行われました。主な内容を専門家の発言順に報告します。(発言者の敬称略)

日本薬剤疫学会ホームページ  http://www.jspe.jp/symposium.html



薬剤疫学研究を理解するためのキーワード解説
   佐藤俊哉(京都大学医学研究科)
薬剤疫学研究を理解するためのキーワード(オッズ比、ハザード比、累積発現率、比例ハザードモデル)の分かりやすい解説があった。


インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究1-研究の背景、インフルエンザ罹患後の臨床症状と治療薬剤の概要
   横田俊平(横浜市立大学医学部)
厚生労働省「インフルエンザに伴う随伴症状に関する調査研究」で2,846名の調査票が回収され、その約90%にタミフルが服用されていた。異常言動の累積発現率はタミフル服用群が11.9%で、非服用群が10.6%。統計学的には異常言動とタミフル服用の因果関係は少なく、偶然変動の範囲である。タミフル服用例は非服用に比べて肺炎の発症は約1/3であった。
今後は調査の対象人数をさらに大規模なものにし、異常言動で問題になる10歳以上の小児の調査を充実する。


インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究2-臨床症状と治療薬剤の関連についての統計解析
   藤田利治(統計数理研究所)
厚生労働省「インフルエンザに伴う随伴症状に関する調査研究」は、小児におけるインフルエンザによる発熱後の臨床症状発現、発熱及び薬剤使用の時間経過を明らかにした初めての大規模調査である。
タミフルと異常言動発現の関係は、比例ハザードモデルでのハザード比は1.16(p=0.259)でリスク増大は確認できなかった。
今後は臨床症状の発現と治療薬剤使用との時間的前後関係の厳密な把握、行動範囲が広く結果として事故に結びつきやすい、比較的高い年齢の児を含む調査年齢幅の拡大、などを考慮して例数を増大して行うべきである。


タミフルは中枢抑制作用により異常行動死や突然死を起こす
   浜 六郎(医薬ビジランスセンター)
この報告された調査研究で、タミフル服用初日午後の異常言動のオッズ比は4〜5で有意である。
タミフルは動物実験(幼若ラット、700mg/kg以上、注:この量は人の服用量の350倍以上に相当)で中枢抑制作用があり、異常行動死、突然死があり、因果関係を支持する。


自分で経験した症例からの報告
   水口 雅(東京大学大学院医学系)
自験例(6歳、女児)でタミフル2mg/kg/回を3回服用し、3回ともその1〜2時間に異常行動を起こした。タミフルは異常行動の主因のひとつである可能性が高い。


討論

軒端晴彦(薬害タミフル脳症被害者の会)から異常行動とタミフルの因果関係などについて質問があり、横田俊平が「今後、しっかりした、さらに大規模な調査研究を早急に行うことが回答になる」と回答しました。座長大橋靖雄(東京大学医学系研究科)も「今回報告された調査研究の目的が薬剤と異常行動の因果関係を調べるものではなかったのでいろいろな面で限界があるのはやむをえない」と発言しました。

浜六郎の主張する「タミフル服用初日午後の異常言動発言の発現頻度は非服用に比べて有意に高い」に対して、藤田利治は「解熱剤(アセトアミノフェン)服用初日午後での異常言動の発現リスクはさらに高いことがわかっており、タミフル服用時の異常言動の発現頻度が最も高い初日午後6時から翌日午前6時まででは有意差はない」と述べました。

横田俊平も「インフルエンザ罹患後の薬剤の異常言動については、さらなる大規模調査研究を小児神経学研究者などの協力を得て集学的に研究し解決すべきである」と発言しました。



まとめ

本シンポジウムに参加して、現時点では、社会問題化しているインフルエンザ罹患後のタミフル服用と異常言動の因果関係が不明であることがわかりました。透明性のある研究費で何の問題もないと思われますが、研究費問題などで、次に行うべき調査は頓挫しています。さらなる大規模調査研究を早期に行うことによって確認するべきだと思います。



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