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ブライトンサイエンスフェスティバルに参加しました

2月17日(土)から25日(日)、ブライトン(イギリス)で標記の催しが行われました。その中のいくつかのカフェやそれに類するイベントと、ダナセンター(ロンドン)のイベントに参加する機会を得ましたので、報告します。
ここ数年来、日本でも科学と社会の関係づくりにサイエンスカフェのようなコミュニケーションの必要性が唱えられるようになり、全国の大学や科学館などでサイエンスコミュニケーター養成講座などが開かれています。一方、一般に日本人はディスカッションするのが苦手だと言われており、日本型のサイエンスコミュニケーションとは何か、サイエンスカフェは日本人にとって適切なコミュニケーションのひとつなのかが、議論されています。今回は、ほんの一部ではありますが、クリスマスレクチャーに代表されるような「市民の科学」の歴史を持つイギリスでのサイエンスに関わるイベントを体験してきました。

ブライトンサイエンスフェスティバル http://www.brightonscience.com/07home.php


ビッグサイエンスサンデー

2月18日(日)には今回の催しの中心的なイベントであるビッグサイエンスサンデイはコメディアという繁華街の真ん中のクラブで開かれました。

3Rフォーラム
3Rとは、リサイクル、リユース、リデュースの3つのRのこと。10時から12時まで、環境問題が扱われました。初めに9人のスピーカーが5分ずつ、自分のテーマ(仕事、研究)を紹介し、それから参加者は自分の興味を抱いたスピーカーのそばに集まり自由討論をしました。テーマは省エネ建築、節水、ソーラーシステム、節電、情報ネットワークなどばかりでなく、屋上で植物や作物を栽培して、人々に植物を育てる心の栄養を与えるようなライフスタイルの提案も行われました。

開会の挨拶をするリチャードさん 思い思いに集まって自由討論。そして自由解散

スピーカーズオンステージ
ふたつの会場にそれぞれ、4人のスピーカーがひとり45分の持ち時間でスピーチと質疑応答をしました。スピーカーオンステージの入場料は全ステージを通して、7.5ポンド(1ポンドは約230円)で事前カード決済でしたが、ステージ1は約300人、ステージは150人ほど入る会場で各回ともほぼ満席。同じビルをあがったり下がったりして席をとりますが、遅れて満席で入れなかった人も多くいました。
「私たちは星くず」では、宇宙の誕生、星の一生、太陽について、きれいな宇宙の写真を用いて、お話がありました。子供から大人まで幅広い年代の参加者がスピーチを楽しみ、活発な質疑応答が行われました。
「コーラル」では、進化について、中国の古い伝説の生物の図、ダーウィンの話などを、科学者は悲観論者というやや皮肉った立場でのお話がありました。ここでも字はほとんどなく、声色を変えたり、テンポを変える巧妙なお話で、子供から大人まで笑ったり、聞き入ったりしました。
「バッドサイエンス」はガーディアン紙に同じ名前をコラムを持つ、栄養学の研究者・ライターの見事なひとり語りで、会場からは質疑応答の時間を削っても話してほしいというリクエストの声が出るほどでした。新聞コラムのファンだという元大学講師は、たまたまチラシを見て楽しみに参加したといっており、彼の食生活への警鐘は重要だが、そもそも市民への学校教育が乏しいことに問題があると嘆いていました。
ステージ1の最後の出し物は、「ポエトリ・スラム」というパフォーマンスでした。パフォーマーが身振り手振り、声色を変えて演技しながら詩を朗読し会場参加者から選ばれた審査員が点数をつけます。ポエトリスラムはすでにブライトンで人気のパフォーマンスで、今回はふたりの有名なパフォーマーが、科学や環境に関係する詩を選んで朗読しました。

ステージ1の会場にはバーカウンターがある ステージ2の会場は地下室

アリーナの展示
ブライトンの近くの大学、企業、中学校、有志のグループが展示をしたり、ワークショップをしたり、科学図書やゲームの販売をしたり、それぞれが自分の発表したいことを11時から5時までやっていて、まさにアリーナ(古代の円形競技場)。

 
アリーナ会場風景  


カタリストクラブ

2月19日(月)、海に近い繁華街にある「ジョーグルベリープレイハウス」の地下のシアターで、サイエンスカフェが行われ、3人のスピーカーがひとり50分の持ち時間で話をしました。この参加費(飲食は含まず)は5ポンドでした。カタリストクラブは月に1回、話したいことがある人が話す催しで、参加者には常連が多く、会場は80名くらいが収容でき、隅にステージがありプロの司会者がスピーチの間にゲームなども交えてにぎやかに行います。
今回はサイエンスフェスティバルの一環として、「5本の指〜ヘッジホッグ遺伝子の働き」、「含み笑いの心理学」「ウイルス、鳥インフルエンザ、そして次にくるもの」という3つのスピーチがありました。大体20−30分のスピーチが、パワーポイント(主に写真や絵)やぬいぐるみ、模型などを用いて行われました。その後の15−20分はスピーカーもそっちのけになるほどの活発な話し合いがありました。

 
会場風景   



カフェシアンティフィークブライトン

イギリスは世界のサイエンスカフェブームの発祥の地で、カフェシアンティフィークというポータルサイトにはイギリス各地のサフェシアンティフィークの情報、カフェシアンティフィーク開催の勧めなどが掲載されています。しかし、これらは全く独立して運営されており、やり方、参加者も異なっています。2月20日(水)、ブライトン駅近くのブランチターベンというパブの2階で開かれた、カフェシアンティフィークブライトンもそのひとつで、3人の発起人の意思だけで月に1回行われ、すでに4年続いているそうです。
できれば、会場費が無料で、ある程度広さのある会場を固定したいが、特別な資金もないため、数箇所の会場を回って開催しているとのこと。今回の「動物実験」のスピーチをしたマーガレット・スロットウォーシさんは Europeans for Medical Progress(医学の進歩を目指す欧州人の会)で動物実験に関する市民の理解を高めるキャンペーンの一員として派遣された形でスピーチを行いました。会場には、動物実験反対運動家もいたために、かなり険しい議論となりました。

カフェシアンティフィークブライトンサイト http://www.cafescientifique.org/brighton.htm 
医学の進歩を目指す欧州人の会 http://www.curedisease.net/

 
世話人のティムさん  


ダナセンター イベント

2月21日(水)にダナセンターイベントはダナディナーでした。ダナセンターは4つの財団の支援により、自然史科学館と連携して運営されています。毎週の火曜、水曜、木曜の夜にイベントがあり、すべて予約制です。月に1回のダナディナーは13ポンドでベジタリアン用とそうでない献立から選べるのとおいしいので人気。参加者は、カップルや友達同士が多くひとりで話を聞きに来る人はほとんどいないようでした。おいしい夕食が目的の人も歓迎されます。 この日のテーマは、Adventure in the Deep SeaでBBCプレゼンターのポール・ローズ氏が美しい深海の写真、アラスカの写真を交えながら、このような仕事をするようになった経緯から心に残るアラスカの経験について20分のスピーチを行いました。おいしいデザートの時間(20分)におしゃべりが弾んだ後、全体で20分くらいの質疑応答があり、ダナディナーは終わりました。 ダナセンターイベントプログラムマネージャーのネルソンさんのインタビューの概要を以下に示します。 「普通の人は科学を知りたい、学びたいとは思いません。ダナセンターのイベントは、大人を対象とし、科学への恐れをなくし、リラックスし、いろいろな人達がやってこられるように、とにかく、画期的なイベントを行っています。科学者の声も市民の声も全く平等であることが大切です。コメディアンなどのパフォーマーを招くことの方が多く、ダナディナーのようなスピーチ中心のものはむしろ少ないくらいです。私たちはいつも挑戦的な企画をしています。今、一番期待しているは1月に行ったdrugfutureで、科学者や行政関係者も交えたディスカッションの結果は、公的な提案にしたいと思っています」 ダナセンターホームページhttp://www.danacentre.org.uk/

ダナディナーの会場風景 スピーカーのポール・ローズさん(右)
ダナセンタープログラムマネージャーの
ネルソンさん
ダナセンターのお隣のダーウィンセンターには、
2200万種の魚類、哺乳類、鳥類などの標本
があり、研究されている。ダーウィン自筆のラ
ベルのついた標本瓶も見られる


まとめ

サイエンスビッグサンデーで最も驚いたのは、子供の参加、家族ずれの参加が多いことでした。これも主催者であるリチャードさんの「科学は面白くなくちゃ」という精神が反映されているのでしょう。地球をよくしたいから、そのために「普通の人とサイエンスをしよう」としたら、お祭りをする、それも面白いお祭りをする、というのが彼の主張です。彼は、その信念のもと、ブライトンでは今までに2回のフェスティバルを開催しています。初めに参加を頼んで歩いたけれど、今は、ほとんどが申し込んできてくれるようになったそうです。
面白くないと人は来ないし、楽しくなければ科学への心のバリアは低くならないというのは、ダナセンターのネルソンさんも同じ。多くの科学者を輩出し、「市民の科学」の歴史を持つイギリスでこれだけ謙虚に、科学の世界ですべての人の声が平等であるような努力を続けているのはすばらしいことだと思いました。ダナセンターの隣にはダーウィンセンターがあり、1日に数回行われる「ダーウィンセンター探検ツアー」の1回の定員はたった9名です。説明者が「たった30分のツアーですが、私たちは家族です」という言葉に代表されるような、丁寧なコミュニケーションの実践があらゆる場所で継続して行われていることは、すばらしいことだと思いました。


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