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「バイオコミュニケーション推進シンポジウム」が開かれました

(社)農林水産先端技術産業振興センター(STAFF)主催の「バイオコミュニケーション推進シンポジウム」〜遺伝子組み換え作物の研究開発と双方向コミュニケーション〜が、平成19年1月30日(火)13:30〜17:00、浜離宮朝日ホールで開催された(参加者は約120名)。本シンポジウムに参加したので以下に報告する。

新名先生のお話 会場風景


1.主催者挨拶

農林水産省農林水産技術会議事務局の伊地知研究総務官からは遺伝子組換え作物を進めるには双方向のコミュニケーションを強調する挨拶があった.引き続いて、(社)農林水産先端技術産業振興センター参与の後沢さんからは以下の挨拶があった。
 海外での遺伝子組換え作物の商業栽培が始まって10年、組換え作物が輸入され、バイオセイフティやフードセイフティが叫ばれる一方で表示の整備がされてきた。日本でもオリジナルの開発が進められている。長い目で見て、食料、エネルギー、環境や国際貢献への必須の技術となろう。特許や国際競争の上でもこの分野での研究は大事である。現実のものとするには、国民への理解、社会受容が必要である。



2.基調講演:奈良先端科学技術大学院大学教授の新名惇彦先生「植物バイオが作る持続可能な社会」

 20世紀は著しい経済成長があり、エネルギー資源のうち化石資源のうち石油の可採年数は47年、天然ガスは65年、や鉱物資源の金は20年、銀は19年などと推定され、資源が有限であることが示されている。21世紀においては、このような状況下で再生可能なエネルギーとしての候補として太陽エネルギーとリサイクル可能な植物のバイオマスがある。このうち植物バイオマスは現在のエネルギー使用量の約10倍量と推定されており、豊富である。 (1)未利用のバイオマスの活用としてセルロースをエタノールに、廃てんぷら油からバイオディーゼル燃料、活性汚泥や家畜の糞尿からメタンを、木材や間伐材からバイオマス発電などがある。(2)バイオマスから燃料・工業原料の生産の例として、トウモロコシやサトウキビからエタノールを、ナタネからバイオディーゼル燃料を、トウモロコシ、サツマイモ、サトウキビからポリ乳酸の生産がある。(3)バイオマスの増産と活用では、植物の遺伝子組換え技術を利用して、即ち、高収量高品質品種の開発や、粗放栽培可能なストレス耐性植物の開発によって、バイオマスの生産を10%増産可能である。 私の奈良先端大は、遺伝子組換えデカフェコーヒーの作製法を研究中である。 NEDOでは2002年から2009年にかけて「植物の物質生産プロセス制御基盤技術開発」を、「米国の植物ゲノムプロジェクト」が2003年から2008年にかけて進められている。



3.地域コミュニケーション会議等の報告

バイオテクノロジーに関するコミュニケーションの取り組みを全国的にPRし、関心を高める観点から、全国8ヶ所で少人数(参加者9-16名、傍聴者13-54名)のコミュニケーション会議を実施した。会議の時間は3時間30分、最初の45分間で取り巻く問題は何か、遺伝子組み換え技術を中心にしたバイオテクロジーにどのような可能性があるのか、現在のどのような研究開発が行われているかを説明、その後意見交換2時間、開始前と開始後でアンケート調査という内容となっている。



アンケート結果が報告された。

遺伝子組み換え技術は農業・食品分野にとって役に立つ技術と思うか

  • コミュニケーション会議実施の前後で、役立つが53%が56%に、やや役立つが14%から24%にあがった。
遺伝子組み換え作物を食用等に利用すると不安に感ずるか
  • コミュニケーション会議実施の前後で、やや不安を感じる、不安を感じるは、ほとんど変わらず45%であった。
今後研究開発に力を取り入れて取り組むべきと考える遺伝子組み換え作物(上位3つ)
  1. 病気の予防や治療などの効果が期待できる作物........39%
  2. 病害虫に強く農薬の使用量を減らすことがでる作物.....37% 
  3. 効率よくバイオ燃料の原料を得ることができる作物.....36%
  4. 干ばつや冷害に強く食料の安定供給が期待できる作物...31% 
今後、遺伝子組み換え作物等を利用していくために、特に期待する技術(上位2つ)
  1. 遺伝子組換え食品の検知技術........................51%
  2. 実や種子等の食べる部分には遺伝子組換え由来のタンパク質が現れないようにする技術...37%
  3. 組換えでない作物から一定以上離して栽培するなど農家が栽培する場合に交雑や混入を防止する技術...34%
  4. 昔から食べられてきた作物の遺伝子のみで作られた遺伝子組換え作物...31%

パネリスト  


参加者からは以下の意見があった。

情報提供に対する要望として、普段、遺伝子組み換え技術に関する情報が入りにくい人にまで分かりやすい情報を提供することが重要。遺伝子組換え技術の情報だけでなく、農業や日本の抱える問題も交えた情報提供が必要。嘘のないデータを開示してほしい。
 意見交換に対する要望として、生産者と消費者とで遺伝子組換え技術について議論する場を持ち、意見を汲み上げていくことが重要。ワークショップ形式にするなど、さまざまな意見を取り入れられる手法にすると良い。



4.パネルディスカッション

                     (敬称略)
コーディネーター:高柳雄一(多摩六都科学館館長)
パネリスト:伊藤潤子(日本生活協同組合連合会理事)
金子友紀(株式会社 食品科学広報センター)
小池一平(全国農業協同組合連合会営農総合対策部長)
新名惇彦(奈良先端科学技術大学院大学教授)
平川秀幸(大阪大学コミュニケーションデザインセンター助教授)


初めに全員の自己紹介などがありました。
新名:遺伝子組換え技術は、食料、農業に貢献する。今後の人口増加に対応するためには、食料生産は現在の3倍にする必要があり、改良・交配のみではとても間に合わない。
伊藤:バイオエタノールは賛成になるのでは。食品は、共通認識を早く持つことである。食料の自給率の認知度は14%と低い。
金子:一般の方は、食料の流通とか食料増産に関してイメージしにくく、情報が届いていないと思う。新しい技術についてのメリットがあるという材料が少ない。安全性についての情報も行き届いていないので、情報提供が大切。
高柳:食品の問題、特に、食料の自給率はほとんどわかっていない。この背景には、自分の関心がいかない点にある。
小池:農業者は自立していくことが求められている。生活としての農業、営農は厳しい。手取りを向上、付加価値を高めた生産物(技術力)をつくることであり、遺伝子組換え技術も同じである。基本は、消費者が買わなければならない。国民理解が必須である。
平川:安ければよいのか、付加価値をつけることなど消費者の要求も大事なこと。バイオマスは可能性があるが、食料生産とバイオマスとがバッティングする面を考慮する必要がある。日本の遺伝子組換え技術に関する安全審査・食料の規制はヨーロッパのものに比べてかなりしっかりしていると思う。   
新名:遺伝子組換え技術により、外国では、農業分野での除草や消毒などの重労働からの開放、防虫遺伝子の利用で若者が戻ってきている。  
高柳:関心を持っていただくには
金子:消費者は、普段の生活には遺伝子組換え食品は入っていないと思っている。遺伝子組換え作物が原料として使用されているしょう油や油などを知らないから。日本の農業についてどう考えるかという問題提起で話をしたらネタになる。
伊藤:国としての道筋はどうかということが答えにくい。遺伝子組換え作物については、表示が始まった頃から落ち着いてきたような感じがする。選択の自由を保証したと言う点で。ただ、書いてあれば安心ということに関しては真の理解が必要であり、率直に話をしていくことが必要である。
コープこうべでは野菜は95%、果物は80%、牛肉は65%国産を扱っている。(但し、エサが入っているので牛肉はその10倍のトウモロコシを使い、このほとんどが輸入。自給率にはこの点を考慮する必要がある)
平川:食べ物は慣性で食べている。花粉症緩和米はカプセルにしたらどうか。
関心のない人を関心のもつように変えるには限界がある。メディアが変わればと思っている。関心のある人あるいは専門家間で、議論を公開にしてすることだ。平時と緊急時について議論し、全体としては、緊急時に対応できるようにしておくこと。
新名:日本農芸化学会や日本植物生理学会でシンポジウムを企画、実施している。食の安全宣言には経過を載せてほしい。表示は再見直しをしたらどうか。文部科学省が進めているサイエンスメディエイターに期待したい。
平川:結論だけでは受け入れられないので議論も入れること。
高柳:メディアなどでの数値発表には母数を明らかにすることが必須である。共通の議題にするには調査しているチャンネルがほしい。
小池:研究者は立派な研究をしていると思う。ただ、狭い領域でしか説明していない。学会、研究者、メディア、一般の人がクロスオーバーし取り組むことが大切である。メディアは売れそうなテーマだけを取り上げないこと。
高柳:不安・不信に対して主体的に関わってほしい。
平川:「不安、知らない」の中身には、「@不確実---将来性(科学では応えられない)A不信---信頼できない B不満---声をあげる場面がない、チャンネルがない、参加の機会がない」がある。研究者と農業者、消費者と農業者の話し合いとかサイエンスカフェとかコンセンサス会議などに参加すると良い。
新名:実験教室は良いと思う。奈良先端大では40-50名の参加者を得て実施している。遺伝子組換え食品を食べた場合、100年後も問題はない。DNA、たんぱく質は代謝物であり、代謝されるから。環境問題においても冷害に強い品種の異なる稲が北海道で栽培されているが問題を起こしていない。
小池:不確実、不信については、合意プロセスが大事。生産者サイドで問題を惹起させないことで、トレーサビリティを徹底、生産の工程管理ができるようにすること。
伊藤:@遺伝子組換え作物の商業栽培が始まって10年たった。リスクコミュニケーションを抜本的に見直ししたらどうか。生産者、消費者ともメリットとして捉えていいのでは。全体で捉えるべきだ。A率直な意見交換をすること、はっきり言うことで他の参加者も共感をよぶと思う。
金子:遺伝子組換え作物に関して、地方自治体で「食の安全・安心」を確保する条例を作っている。今は栽培されていない組換え作物と通常作物との隔離距離に集中し、研究も含めて厳しい条件となっている。研究を進める上でも影響が出ている。研究が進んで安全性が示されれば緩めてよいのでは。コミュニケーションの積み重ねは必要。研究者が説明することが大切で、生産者の負担が多くなっては大変だ。
高柳:関係者全体が参加し議論するとよい。
平川:ワークショップもレベルを考えて実施するのが良い。
小池:基礎教育のところからの努力が必要。時間がかかっても良い。応援して欲しい。
伊藤:参加者の対象を整理し、参加者の関心は何なのかというアンケートをとって対応する。専門家は余裕を持って歩み寄って欲しい。
金子:わかりやすく情報伝達することです。遺伝子組み換え商業栽培は10年経過、メリット、もやもやしたものを説明し理解してもらうと良い。生産者、技術を利用する人にメリットを説明することも大切である。



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