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茅場町バイオカフェ 「気がつけば生産者〜農薬、環境、安全性、女性農業士からの発信」 |
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2006年12月15日(金)、茅場町サン茶房で第25回バイオカフェが開かれました。お話は、茨城県の女性農業士である藤井和美さんによる「気がつけば生産者」でした。山形一恵さんによるフルートの演奏はクリスマス特集でした。
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藤井さんの楽しいお話 |
クリスマスのメロディー |
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お話の主な内容 |
農家について
農家は、「自分達が食べる野菜は全部作っている」と思われがちですが、全部は無理です。作れないものは買うことになるため、農家は生産者であると同時に、皆さんと同じ消費者でもあるのです。
お百姓さん、農業者、生産者、農家など様々な呼び方がありますが、自分は(ばりばりやっていると自慢できないけど)「農家」をやっているという自覚はもっています。
女性農業士とは
「自らの農業経営に、積極的に参画し、地産地消など地域の農業振興にも貢献している人(概ね35−45歳、定年は60歳)」を対象に、県が認定します。認定を受けると7−10日の海外研修も受けます。安心、安全、おいしいなどに積極的な活動をしている人。認定のときには農業だけでなく、生活全般(PTA活動など)やその他の分野での活動状況も評価されます。
消費者への働きかけ
消費者との交流のために農作業体験などを企画しています。また、量販店などでPR活動を行ったりして、商品の特性を明確にして有効な情報も提供しています。最近話題のグリーンツーリズムというのもありますが、これは農村生活を通じて癒されようというのが目的。自分の地域では小さな動きはありますが、まだまだのようです。
どんな人が農家に向いているのか
農家は2世代以上で働いていることが多いので、お嫁さんの評価もいろいろ。おとなしい小柄なお嫁さんはかわいがられるような気がする(笑)
HPでは、就農の勧誘をしています。「新規就農のための適性・知識チェック」というコーナーがあるので、見てみてください。農家は時間の都合がつき、自由だと思われがちで、PTAの役員などが回ってきますが、そうじゃないから大変です。
適性、動機・知識面、事前準備、準備状況、生活面などの項目で適正・知識がチェックできます。
消費者として
坂東のレタスは美味しくやわらかい。ライバルである関西や長野で収穫されたものは見た目(形)はよいけれど、坂東のレタスより硬い気がします・・・。
消費者の方の中には、関東の白ネギについて、「白い部分が地上に伸びている」と誤解してる人がいますが、実はネギを白く柔らかくするには「土寄せ」という作業が必要。これはネギが伸びたら土をかける(寄せる)、また伸びたらかけると繰り返す作業で、土の中の部分だけが白くなります。また、緑色の部分は農薬で危ないと思っている方もいるようですが、私たちはその点についてもキチンと対処しているので安心して食べて欲しいです。
消費者が生産者に求めるもの
最近の消費者は食品に対する関心が高まっていてクレームもある。また以下の情報提供を求められていると聞きました。
1)収穫日、出荷日、2)農薬、肥料の使用量、3)生産者の住所、氏名、顔写真、4)品種、銘柄、5)調理方法のレシピなどなど。
自分も消費者の立場で考えると当然とも思えるが、生産者の立場からすると非常に大きな負担だと感じます。でも努力していかないと、と思ってます。
生産者の立場
野菜はみんなが手に取ってみるので、ラップなどの包装が必要になりがち。スーパーマーケットの様子を見ていると、見た目重視の選別で、形、さわった感じなどで選んで人が多いようです。ところが、以前に研修で視察した欧州では、大きさくらいしか見ていないようで、見た目(形)は余り重視していないようでした。見た目(形)をみんなが重視しすぎると、個性的な野菜がなくなる気がします。
一方、「野菜のルネッサンス」といって、決まったものばかりでなく、余り用いられなくなってきている地元ならではの野菜をよみがえらせようという動きもあります。
農薬について
農薬は、値段も高いし使用しないで野菜が栽培できればそれが1番!なんですが、自分も
無農薬で野菜を栽培ことがあります。何ヶ月もかけてせっかく作った野菜が病気になってしまったり、害虫がついて表面が穴だらけ!!食べるところがないくらい、穴だらけになってしまってがっかりしました。農薬を使わずに病害虫から野菜を守るのは大変だなと実感しました。そんなこともあって「農薬は必要・・・」と思います。
現在では、農薬の使用に際して「ポジティブ制度」などで非常に厳しくなっています。私たち生産者も使用は最小限にして、使用時は、ラベルに示された使用方法に従い散布しています。
散布するときに、作業者はマスク、手袋など使用します。風の吹く日には(他の畑にかかる可能性もあるので)絶対に散布しません。
資料より
1、 散布した農薬は環境の中で動き、作物に付着した農薬は雨によって洗い流されたり、光によって分解されたり植物の持つ酵素で分解されます。
2、 畑に落ちた農薬は、ほとんどが微生物か光によって分解されます。
3、 散布の時大気中に広がった農薬は光によって分解されたり、自然に地表に落下し微生物や光によって分解されます。
坂東でおもに栽培している野菜は3つの科に属している。それに合わせて農薬も、ユリ科(ネギ)、アブラナ科(キャベツ)、キク科(レタス)のそれぞれを対象とした農薬を使う。その品目ごとに登録された農薬しか使えません。
近所の民家が窓をあわてて閉めるのを見ていると、「農薬はとても危険!」だと思われているのだと感じます。農薬については、「正しい使い方を守れば大丈夫」という情報発信をもっとすべきだと思います。
有機栽培をして除草剤を使わなければ、草取りなどの労働がどうしても必要になります。これらの作業を行う生産者への負担は非常に大きいものです。労働条件の緩和のためにも、品質のよい農作物を安定的に生産・供給するためにも、作物を病気や害虫から防ぐためにも、農薬は大きな役割があります。
農薬の安全性
農薬は国が安全性を確認しています。
私自身は電気製品の製造メーカーで働いていたので、電気製品についてノイズ、静電気、スパーク試験などの安全性の試験を何種類も行われていたことを思い出します。農薬も同じように多くの試験が行われて安全性が確認されているということです。(資料)
農薬を安全に使い、農家が環境を守るために何ができるか、と考えるとき、農薬でセミやカブトムシが減っている問題を感じています。農薬の認定では、害虫に対する効果はもちろんのこと、魚、みつばち、海藻、ミジンコなどへの影響も調べて、安全性が確認されたものだけが認定されます。私は、農薬にとって一番大切なことは、環境中に残らないことだと思います。
国産の野菜の4−6割は輸入に頼っており、そのことに不安を感じている方も多いと聞きます。そのために私たちは、まず国内の農家の使用基準を厳しくして守り、その活動を外国からの野菜についても広げていきたいと考えており、そのための勉強もしています。
生産過剰のため、畑で処分されている大根やキャベツについては、私たちも「もったいない」とも思います。育ててきたのは自分達ですからなおさらです。でも、採算がとれなくては農家も生活していけないのです。こういうときには、「ダイコンやキャベツを土に返すんだ」と考えるようにしています。「カリフラワーの大きな葉を食べないのはもったいない」と言われる方もいますが、これも土に返しているので、無駄ではないのです。
ミニカリフラワーの栽培
私が特に栽培に力を入れ、栽培仲間を増やそうとしているミニカリフラワーについて。
作業手順は、「播種→苗をつくる→定植(苗を畑に植える)→病害虫を予防しながら栽培→収穫→きれいに梱包して出荷」。
育苗時期の夏の水やりは、朝8時前か午後3時過ぎに。冬場は、乾いたら水やり。
私たちは種まきからしますが、他の産地では苗を買って定植から始めるところもあるようです。
「ミニカリフラワー」は、8−10センチくらいの大きさのもの一番おいしい品種です。そのサイズの時の収穫が旬!食べ切りサイズで、レンジで調理できるので栄養も逃さず便利です!
ベビーカリフラワーとは、若どりしたものです。
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会場風景 |
紫とオレンジの色のミニカリフラワー |
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話し合い |
は参加者、→はスピーカーの発言
- 地産地消とは?→1980年代に生まれた言葉。「地元で作ったものは地元で消費しよう」という考え方。これに対して、遠地遠消もある。「地産地消」は「スローフード」に言い換えられている場合もあるが、「地産地消」は、地元で作ったものは新鮮であることを武器に「おいしいものをおいしく食べよう」という意味合いが強い。
- オレンジカリフラワーの食べ方を教えてください→てんぷらがおいしい。オレンジカリフラワーは甘味があり、電子レンジなどでゆでてそのまま食べられる。
- ミニカリフラワーでチーズフォンデュを作ろうと思う。
- パープルカリフラワーの調理は→軽く電子レンジをかけてピクルスにするのがいい。
- 女性農業士とは→都道府県単位で認定。知事が任命する。農業やそれ以外での様々な活動を考慮して、農業改良普及センターの普及指導員が推薦します。農業以外の活動(PTA、普及センター主催の活動など)も評価対象になるらしいです。
- 女性農業士の活動は→茨城県では毎年10人くらいの女性農業士が認定されている。
- 私は高くなくて安全なものを買っている。自分の子供のアレルギー対策に、自分で野菜を作っており、それをゆずってもらっている。→女性農業士でも、減農薬などに積極的に取り組んでいる人は多い。その(自分で野菜を作っている)方は、野菜作りで生活してはいないと思うが、私たちは農業で生活しなければならない。ものすごい手間をかけ、安く売っていたのでは生活できません・・・。
- 女性農業士とJAの婦人部との関係は→重複して活動している方もいる。加工、直売で活躍されている方もいる。ほかにも、フルーツアンドベジタブルマイスターという認定資格があり、私もいつかとりたいと思っている。
- 有機栽培(無農薬)で儲かるとわかれば、転換できると思うか→集落全体で取り組むならできるかもしれない。「虫食いの穴があっても購入する」というような、消費者の意識が変わることが絶対条件になると思う。
- 有機栽培をしている人はいるか→重労働で、虫がつくと売れないので、とても苦労している。有機の認定にはとてもお金がかかる。有機栽培を行うには、周りの畑との緩衝地帯が必要。畑の周りには当然そんな土地はないので、緩衝地帯をつくるためには、自分の畑を狭くするしかないとのこと。普通の米は1俵(60キロ)で1万−1万5000円だが、有機栽培のコメではもっと高くなってしまう。それでも私の近所の有機栽培のグループは、15名から11名になってしまった
- どうすると、農業で儲けがあがると思うか→こちらが教えて欲しい。農家の年収は年々減っている。降水量、気温など気象条件が一定でないこと、販売価格が安いことなど問題だらけ。普及センターでは、収益率を上げるために、加工などを奨励している。他にも、包装などの経費をかけなかったり、手数料を抑えるために自分で売る方法などがある。私はネット販売をいくつかの品目でやってみたいと考えている。こういった苦しい状況を消費者の方にもわかってもらいたい。
- 連作障害とは何か→同じ物ばかり作っていると、うまく栽培できなくなることを連作障害という。特にアブラナ科のみを続けると連作障害になりやすいので、キャベツ以外のネギなどを間に栽培するとよい。
- 女性農業士は元気ですね→はい、最近ではお嫁さんたちが特に元気です!
- 茨城の女性は特に働きモノだそうですね→私が嫁いだ「長須地域」は「長須から嫁をもらっても嫁には行くな」と言われるくらい働き者が多い。
- とれすぎたダイコンやキャベツの利用法はないか→果実はジュースや入浴剤にできる。チューリップで焼酎をつくっているところもあるという。
- たくさんとれたときにバラエティ豊かに料理をしたり、貯蔵ができるといいと思う。長いもを頂いたときにレシピが書いてあってとてもいいと思った。レタスに熱をいれると容量が小さくなっていっぱい食べられる→テレビに出演してレタスのしゃぶしゃぶなどを紹介したこともある。チキンライスをレタスで巻いて食べたり、レタスの白和え、レタスの味噌汁、レタスチャーハンなどいろいろある。
- レタスは軽い方が選ぶとよいと聞いたことがある→よく巻いているものは、重いが、硬くて栄養価も少し低いそうだ。軽めなものを選ぶのがいい。保存方法は、長いもは新聞紙で包んでおく。レタスやキャベツは、シンを抜いて湿ったティッシュを入れて冷蔵庫で保存する
- 野菜は何日目までおいしいのか→買うときに食べる分量だけ買うのがいい。調理時間がかけられないときは、使う分だけカット野菜を利用するのも便利。使わないときは水をかけてラップする。安いときに買って冷蔵庫で腐らせないでほしい。スーパーでは傷んだものは取り替えたり、処分したりする。ウォーターシャワーなどで、新鮮さを保っている。
- 家で食べるりんごにも贈答用を買っていたが、家庭用を買ってほしいと生産者にいわれた。値段は4割安いが味はかわりない。消費者にそういうPRをするといいと思う。→ねぎのB等級は焼き鳥屋さんや、加工品にする。消費者にはA等級が出る。高くてもA等級野菜が好きな消費者もいる。私たちも「B級品は見た目は悪いが味は同じ」だとPRしているが、そういうものは買ってもらえないのが現状。
- 高いものを高く売るのが農家にとって得なのではないか→農家のコストでは農薬が高い。形がいいと高く売れ、加工・包装は形がそろっていると均一で扱いやすい。高く売るためにはいい品種の高い種を買い、苗用の土も買う。しかし、いろんな野菜があるのが本当の姿。直売所だと形のよくないものも「込み込み」で売れる。我が家では、小学3年生の理科の授業のためにキャベツを3つ犠牲にして、青虫を5匹、提供した。
- ミミズのおかあさんという人もいます→化学肥料を減らすとミミズが増える。腐葉土を混ぜたり、ヒマワリを鋤きこんで土壌の養分を高める方法もある。
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