くらしとバイオプラザ21

くらしとバイオニュース

ホーム
What's New

くらしとバイオニュース

バイオイベント情報

やさしいバイオ

リンク集

バイオカフェ

くらしとバイオプラザ21とは


岐阜バイオカフェレポート
「新聞記事のウソ・ホント/ポジティブリストって何」

平成18年11月7日(火)岐阜市の岐阜県民ふれあい会館14階のレストランエトワールにて、NPO法人くらしとバイオプラザ21では、岐阜県健康福祉部生活衛生課との共催でバイオカフェを開催しました。お話は、毎日新聞社記者の小島正美さんによる、第1部『新聞記事のウソ・ホント』、第2部『気になる残留農薬〜ポジティブリスト』でした。片側一面の窓からは、大きな空と遠くに山を臨み、始まりは松原宣子さんのバイオリン演奏から。季節柄、「もみじ」を演奏され、会場からも手拍子や歌声がおこりました。

小島さんのお話 バイオリンの演奏


第一部『新聞記事のウソ・ホント〜BSE、鳥インフルエンザに学ぶ』

TVのウソ・ホント

  • 食前にりんごとみかんを食べるだけで、食事制限も運動もしないで痩せられるといった情報を提供したTV番組があったが、本当にリンゴを食べるだけで痩せられるのか?痩せるわけがない!食事以外にりんごやみかんをプラスして食べれば、その分だけ太る。弘前大学の先生は「リンゴの中に脂肪燃焼に役立つ成分が含まれている」と言っただけ。その成分を凝縮させたものをネズミに与えたらネズミが痩せたという実験データはある。これには、りんごとみかんを普及させたいという要望からつくられた情報だというウラ話もある。
  • 白インゲン豆を軽く加熱調理してから粉末にして食べると、ダイエットに効くという情報を提供したTV番組があった。この方法を試した視聴者が下痢や嘔吐などの不調を訴えたという新聞報道があった。消化酵素を利用したダイエット効果とのことだが、それならば、加熱調理しないで生で食べないと、酵素は失活してしまうのではないか?矛盾しないか?結局は、(情報TV番組は)見ない方がよい!!ということになってしまうのではないか。
  • TVの「やらせ」が問題になった新聞報道があった。TVは見た目の完成度を高くするために、やらせの映像を使うことが多い。自然の状態で風が吹けば、岩は転がるので、風を人為的に起こしてでも再現し、岩が転がる映像を撮り、自然現象として放送する。これでは、映像は映画と同じですべてつくられた世界である。これは、どの放送局でも(NHKも含む)やられていること。この辺の考え方が、新聞とTVで見解が異なるところ。

新聞のウソ・ホント
  • 洗濯機のカビがアトピーの原因か?という見出しの新聞記事が出たことがあるが、これは、アトピー患者が洗濯機を新品に取り替えたところ症状が軽減された、というたったひとつの例を、他社が記事にしていないというだけで、特ダネとして扱っていた。
  • 毎日新聞社では、前出の新聞記事に登場している専門家(皮膚科医師)に確認した上で、洗濯機のカビがアトピーの原因か?ということについて、医学的な根拠はないとして、同じ事象を正反対の立場から記事にしている。記事の内容について、新聞社に問い合わせて確認することも必要である。洗濯機を新たに買い換えたアトピー患者もいただろうが、症状に変化がなかったら、新調しただけムダになり、かえって精神的ショックを与えてしまうかもしれない。記者は新聞記事が読者や社会、企業利益に与える影響を考慮し責任を持って記事を書かなければならない。
  • インフルエンザ治療薬タミフルを服用した少年が、異常な行動をおこした後に事故死した例を複数の新聞がとり上げた。どの記事も薬の副作用なのか、原因は不明としている。特ダネ記事の内容は、1紙だけで判断するのではなく、時には複数の新聞を読み比べることも必要である。
  • 食中毒を起こすサルモネラ菌が調査した採卵養鳥場の1/4以上で検出されたとい1面トップ記事が出た。この記事を読む限り、卵のサルモネラ菌汚染が進んでいて、「卵が危険だ!」という誤解を受けてしまう。実際は空気中に存在しているサルモネラ菌からの検出であった。トップ記事の訂正はしにくい。卵自体に汚染があったとしても10000個に1~3個の確率程度。この確率でのリスクをどう見るか?


会場風景 広い空には虹がかかって

情報とのつきあい方

  • 暴力的犯罪発生率のグラフを示して、1950年代以降、発生件数は確実に減少している。マスコミが恐怖心をあおっているのではないか?防犯コストばかり増える。学校周辺では、パトロールが頻繁に行われているが、外部との接触が少なくなり過ぎると地域社会から隔離されてしまうのではないか。他者からの犯罪被害よりも、最近は身内の犯罪、親からの虐待の方が多くなってきている。
  • 低体重児数の年次推移グラフを見ると、年々増加していく傾向にあり、先進国では日本くらいであるとのこと。最近は、昔ほど妊娠しても沢山食べなくて良いという情報もあり、妊婦が体重増加を嫌がる傾向にある。イギリスでは、2500g以下で生まれた子供は、(その後の成長過程で健康状態を調査した結果)成人してから生活習慣病になりやすいという報告があった。胎児のときに栄養を沢山とらなかった子供が、出生後に(体重が少ないからといって)、たくさん食べると栄養が過剰になって糖尿病などになるという考え方だ。
  • BSE全頭検査について。岐阜県はいち早く全頭検査を取り入れた。英、仏、独は全頭検査を実施していない。検査していても脳に大量のプリオンがなければ、感染はわからず、出荷されてしまう。ならば、危険部位を確実に除去することのほうが重要である。日本では舌を好んで食べるので、危険部位である扁桃の完全除去が必要。脳や脊髄意外にも危険部位はあるのに、除去部位の基準はないのはおかしいのではないか。
  • 妊婦は、マグロやメカジキなど水銀が蓄積される魚介類の摂取頻度を減らしたほうが良いとか、大豆イソフラボンを過剰に摂取すると良くない・・といった記事について。
  • 通常の食生活を送っていれば大丈夫という安全情報よりも、危険情報を優先、強調しがちであり、記事になりやすい。しかし、実際には食中毒のほうが、よほど発生件数は高い。食中毒は、自分が注意していればリスクを減らすことは可能であり、危ないと言われる食品は体内に入れなければ当然リスクは減る。よって、リスクの大きさと記事になりやすいかどうかはまったく別なので、読者は情報を見分けることが重要になる。
  • オール電化の危険性についても、1例でも被害事象があれば、記事として取り上げられてしまう。
  • 食品添加物を多く取る子供はキレやすいなどという情報について。過去と比較すると、現在のほうが食品添加物の摂取量は減っている。「○○は危ない・・」といった書籍は
  • 科学的根拠が少なく、恐怖をあおって別の健康食品を勧めるビジネスの場合もある。自分の目で確かめて判断し、情報を鵜呑みにしないという姿勢も必要である。



意見交換・質疑応答
  • 参加者の発言、→以下は小島さんの発言
    • ラジオやテレビは聞き流してしまうが、新聞記事は活字として残るのでよりインパクトが強い。その新聞でさえもすべてがホントではない・・となると何を信じたら良いのかわからなくなる。
    • メディアの世界は恐ろしい。客観的データに加えて記者の主観も含まれている。活字メディアは責任重大だとわかった→いつ、誰が、どうしたという事実報道は間違ってないが、危険情報になるとリスクを強調しすぎる。記事の内容としては間違っていないが、公平に判断するためにも複数の新聞を読み比べることを薦める。文責が書いてある場合は、新聞社に直接問い合わせてみてはどうか。
    • 地域で、登校パトロール活動をしているが、こんなことで子供への犯罪は軽減するのだろうか?無駄な行動とは思わないが、エネルギーのロスではないか→親や教師が子供たちを守るだけでなく、子供自身に危険を回避する方法を教えることも大切なのでは。連れ去られそうになったら大きな声を出す練習(ロールプレイング)など、実態に合った自衛策を考える教育が必要。
    • 以前、教育職に就いていたが、さまざまな情報にふりまわされて学校では対策をとるのが大変だった。出した情報が間違っていたなら訂正する必要もあるのでは?→アメリカのメディアは物事を良い面と悪い面の両方から報告する正しい情報を流してもらうようメディアを見方にすることが大切だ。
    • 今日は、新聞・TVの裏事情がわかり、記者の本音が聞けてよかった。


    バイオリンの演奏2 窓の外は暗くなって


    第二部『気になる残留農薬〜ポジティブリストって何?化学物質のリスクの大きさ』

    農薬のリスクを考える前に

    • ライフル銃での死亡とプールでの事故死、どちらが危険か?統計学的に判断すると、プールでの事故死のほうが圧倒的に多い。この確率のリスクの差をどう見るか?
    • 有機塩素系の殺虫剤DDTは使用して大丈夫か?世界的に使用禁止にすべきであるという声もあるが、マラリアの発生が多い発展途上国では、有効である。インドにおいて蚊帳が有効だとして送った市民団体があったが、実際は出入りする度に蚊が入ってしまうのが現状。使用する量と目的、場所によって使い方を変えれば有効なのではないか。一概に禁止するのもよくない。
    • ポジティブリスト制度とは? 原則規制(禁止)された状態で使用を認めるものについてリスト化するもの。基本的にどの農作物でも人体に影響のない量として一律基準の0.01ppmが適用される(ppmは100万分の1)。
    • ネガティブリスト制度とは? 原則規制がない状態で、規制するものについてだけリスト化する。
    国内外の事例
    基準値がもとになって食品が廃棄された事例をあげて、考えてみましょう。
    • 山形県で、日本では使用禁止の農薬を使って作られたリンゴが大量に廃棄された。
    • 中国から輸入した冷凍ホウレンソウから、日本の残留農薬基準値をはるかに超えたクロルピリホスが検出され、回収された。このクロルピリホスの基準値はポジティブリスト制度の導入で、作物間の基準値の開きが大きくなった。例えば、コマツナの残留基準値は1ppm、ホウレンソウは0.01ppmなので、各々に0.1ppmのクロルピリホスが検出されたとすれば、コマツナは出荷可能、ホウレンソウは出荷停止となってしまう。
    • ポジティブリスト制度を導入しているドイツでは、残留濃度に基準違反があっても、ADI(許容一日摂取量、mg/kg/day)を超えた場合や乳幼児への影響があるときだけ回収される。日本は、すぐに回収し、廃棄処分とするが、やりすぎである。
    • 北海道で、カボチャから30年前に使用禁止されたヘプタクロル(基準値0.03ppm)が0.07ppm検出され廃棄処分となった。土壌に残留していたものと見られているが基準値0.1ppmのニンジンなら廃棄されない。
    • 農作物だけでなく、うなぎもポジティブリストの影響で、輸入量は大きく減少した。
    • 2002年、協和香料が日本では無認可の香料を菓子などに使用し、大量回収、廃棄処分することになった。いままで、長い間食べてきているのに、見つかった時だけの回収措置はおかしい。人の食用にはならないが、飼料として用いるのは可能といった役所の対応もおかしい。
    リスクとリスクの比較
    • でんぷんを多く含む食品を高温の油で加熱すると、発がん性物質となりうるアクリルアミドが検出されるという報告があった。危険度から言えば日常よく口にするポテトチップの方が農薬よりリスクが高いと言えるのではないか?
    • ダイオキシンについて。昔に比べて焼却炉の性能がよくなってきているので、廃棄物を焼却した際に出るダイオキシンの量は、減ってきている。しかし、魚介の体内に蓄積されている量は変わらず、結果的に魚から摂取しているダイオキシンのトータル量は減っていない。報道の量と、リスクは比例してない。


    活発な質疑応答1 活発な質疑応答2


    意見交換・質疑応答
     
  • は参加者の発言、→以下は小島さんの発言
    • ポジティブリストの意味がわかりにくい。実際に使われている農薬に合わせてどう説明できるのか→ネガティブリストは、規制対象となる農薬だけに基準値を設けて規制していたが、ポジティブリストになって、日本で登録のない農薬を含めて、世界中で使用される農薬の基準値が設けられた。国内での使う農薬の基準値はどちらかといえば甘い形をとった。
    • たばこの善悪は?世間で言われる程、悪いものなのか?→吸う人吸わない人では、ガンになりやすさが違う。
    • 夏に蒔いたトウモロコシは虫が多くついて食べられなかった。無農薬にすると、虫だらけになる。お店で買ったものは、虫もなく、葉に穴もあいてないが、どれだけの農薬が使われているか考えると食べられない。涼しくなってから作ったものは虫もついてないので、秋になってから作るのもよいのでは?
    • 組換え作物には抵抗がある。県の農業試験場に行ったが、昔風の交配をしていて安心感が持てた。
    • 組み換え作物が嫌だからといって、将来自給していけるのか。どうしたらよいのか→自治体がもっと積極的に環境へのメリット、デメリットを比較する実験をしてみたらよいのではないかと思う。



    copyright © 2006 Life Bio Plaza 21 all rights reserved.
    アンケート投票 ご意見・お問い合せ