2002年秋、「新しい生物科学体験学習」プログラムとして、中学校理科教員による中学3年生を対象にした組換えDNA実験が日本で初めて新津市内の6つの中学校で実施されたことはすでにお知らせしました。
新津市小合中学校の理科の授業で遺伝子組換え実験が行われました
中学校で遺伝子組換え実験を行うまでの足取り
12月には新津市教育委員会で、指導に関わった先生方を交えた総括が行われたそうです。このプロジェクトに、はじめから終りまで関わられた新潟薬科大学応用生命科学部藤井智幸先生から総括文が届き、その中で以下のように述べています。
「中学3年生が有意義な体験を実感したことは間違いありません。改めて言うまでもなく、バイオテクノロジーや生命科学への探究心を育てることも大切ですが、倫理面、環境面、社会面に及ぼす影響を考える姿勢を養うことも必要です。単なる体験や知識の習得に留まらず、生徒が生態系への配慮に気づいたことは大きな収穫と考えられます。次年度に向けてクリアすべき問題はまだまだ残されていますが、巨いなる一歩が踏み出されたといってよいでしょう。」
ここに生徒の感想文の一部を以下に紹介しますが、みずみずしい感性があふれる全感想文がのっている総括文全文を是非、お読みください。
とても緊張して:最初は見たことのない実験器具なので恐る恐る実験をしていた。光るかどうか心配でドキドキした。紫外線に当てると緑色に発光してうれしかった。
難しい用語:難しい用語が出てきたが、3日間やっていると内容が分かってきたのですごく良かった。
大学の先生は優しかった:不安だったけれど楽しかった。大学の先生がやさしくて安心したし、分かりやすかった。
液体をこぼしたけれど:いつもと雰囲気が違い緊張した。実験中に液体をこぼしてしまったが成功して安心した。失敗しても実験に参加していたしるしなので許してもらいたいと思った。
実験が好きになった:時間をできるだけピッタリにするために気を抜けずとてもドキドキした。でも、3日目に大腸菌がちゃんと発光してくれて感動したし、うれしかった。もし、発光しなかったら実験が大嫌いになっていたと思いますが、成功したおかげで前よりも実験が好きになれてよかった。
大腸菌について知った:この組換えDNA実験をして色々なことを学んだ。微生物だからちょっと汚いイメージがありますが、今回使った大腸菌はいい菌だとわかった。
忘れたくない経験:遺伝子というのはとても神秘的でよくわからないものだった。とても楽しい授業だった。この経験を忘れないようにしたい。
やる気がなくて:実験をやる前はやる気がなかった。始めてみると面白くなってきた。班員が二人だったので大変だった。ひとつしか光らなかったけどいい体験ができた。
いろんなことを知った:今まで細菌はとても小さいとしか知りませんでしたが、この実験の説明のなかで実は細胞壁があるのだと知りました。今までは何故人体には無害なのか不思議でしたが、抗生物質がどのように細菌に働くか知り、納得できました。
組み換えた大腸菌を持ち出せない理由:この実験で出来た光る大腸菌は人間に害が無くとも他の生物になんらかの影響が出てしまう恐れがあるため持ち出してはいけない、という事が勉強になった。
実験は厳粛:無菌操作のため机・手は70%エタノールで消毒する、実験中は出入り禁止などのきまりや、水槽を密封しているところを見てこの実験の厳粛さを知りました。
人工的に作った菌:人工的に作った菌・細菌は、自然界に存在している菌・細菌より「恐ろしいな」と、思いました。菌・細菌は恐ろしいですが、使い方によっては人間を助けるものになったり、生物科学の研究の進歩に役立ったり、人間の食生活を支えたりしている。菌・細菌は「すごいな〜」と思いました。
DNAは不思議:形質転換で生まれた生物は、見ているだけなら、科学の不思議、生物の不思議をかんじることができるけど、ひとたび自然界へ飛び出せばおそらく我々人間を脅かすほど恐るべき存在になるのだろうと思った。ただ、DNAには不思議がまだまだたくさんあると思うので、形質転換の技術はこれからも日々進歩し我々の生活にも多くの変化を与えてくれるのだろうと思った。
ランダムな部分を除く:厳密に実験を行う姿勢も大変勉強になり、先生方のご指導により実験する場合にできるだけランダムな部分を取り除くということも簡単に理解することができました。