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一般農場・遺伝子組換え作物実験圃場比較見学会開かれる

平成18年7月7日(金)、(独)農業・食品産業技術総合研究機構(つくば市)で農場見学会を開きました。 例年のように、いろいろな農作物が植えられている見本園、除草剤や雑草の研究をする雑草園、遺伝子組換え作物などを見学しました。今年は最後にバイオカフェの形式で、今日一日に見学したことをふりかえり、話し合いを行いました。見学のスケジュールは以下の通りです。

見学スケジュール

  • つくばリサーチギャラリー(紀村 専門職(広報))
  • 中央農業総合研究センター 見本園、一般農場他(香西 業務第1科長)
  • 農業環境技術研究所 遺伝子組換えダイズ栽培試験場(松尾先生、吉村先生)
        〜  昼食  〜
  • 農業生物資源研究所 バイオプラントリサーチセンター(瀬尾先生)
  • 同隔離圃場(花粉症緩和米)(田部井先生)
  • 遺伝子組換え除草剤耐性ダイズ遺伝子組換え害虫抵抗性トウモロコシ展示栽培圃場
  • バイオカフェ「遺伝子組換え作物について」(田部井先生)

つくばリサーチギャラリー入り口 説明を聞く参加者(リサーチギャラリー内)
こんなにたくさんのお米があるんだ!
(イネの見本園)
除草剤の研究などのために、きれいに整列
した雑草たち(雑草園)
新しい隔離圃場には水田が4枚。遺伝子組
換え体がまだ栽培されていないので、中ま
で入って見学できました
モンシロチョウの乱舞!イモムシに食べられ
てしまい筋しか残っていないキャベツ(害虫の
研究のために、農薬を散布しないキャベツ畑)
飛んでくる昆虫を調査する装置 閉鎖された温室では遺伝子組換えペチュニア
の実験中


バイオカフェ

田部井先生のお話 
はじめに:2010年バイオ産業は25−100兆円規模になると期待されており、現在、遺伝子組換え技術は洗剤の酵素や医薬品の製造等に使われている。
私たちの食べている農作物を考えてみると、今のトマトは野生種(アンデス山脈で自生)を改良されたものであり、種苗登録されたダイコンは600−700種あるが、使われているのはその内の数十種類くらいである。イネの品種改良では、20世紀からこれまで収量が増え、日本では単位面積あたり収量は2.5倍。最近は1993年の大冷害年でも20世紀初頭の2倍の収量となっている。

品種改良の流れ:育種の第一段階は集めた遺伝資源から付与したい形質をもつ品種(系統)を探すこと。目的の形質をもつ品種(系統)が見いだされないときには、その形質を得るため、放射線や突然変異剤を使って、変異を起こさせている。近年では、遺伝子組換え技術を用いて目的とする特性を付与している。
新しい品種をつくるには、通常、トマトで10年、お茶は25−30年かかる。何か問題があってから品種改良をはじめるのでは遅いので、予想して育種研究をしたり、ジーンバンクでは、あらゆる種などの資源を保管し、多くの品種が研究や応用に使えるようにしてある。

遺伝子組換え作物の安全性:遺伝子組換え技術は土壌にいるアグロバクテリウムという微生物の知恵に習って開発されたものであり、安全性は、環境面(従来の生物を駆逐しないか、有害物質を出さないか、交雑性によって生物多様性に影響を与えないか)と食品面(たんぱく質の分解性が重要なので人工腸液、人工胃液でどのくらいの時間で消化されるかなど)について調べられている。

除草剤耐性ダイズと害虫抵抗性トウモロコシ
の展示圃場
ツルマメとダイズの交雑実験。立てた網に
ツルマメを這わせてダイズの距離を管理し
ている(松尾先生、西村先生)
遺伝子組換え花粉緩和米の隔離圃場の前で
説明する田部井先生
8月初めの刈入れを待つ花粉症緩和米。
今年は2期作を行う予定


話し合い
  • は参加者、→はスピーカーの発言
  • スピーチや見学会への質問

    • どうやって必要な遺伝子を見つけて、切り出せるのか→タンパク質をつくる遺伝子はATGというコドン(メチオニンというアミノ酸をコードしている配列)から始まっている。終わりは終止コドン(UGA、UAA,UAG)。これらを目印にして遺伝子が見つけられる。病気に強い遺伝子を単離するまでは何年もかかる。今やっている遺伝子組換えは挿入であって、置き換えではない。今後はねらった場所に入れられるように研究が進められている。
    • 農林8号などの米は品種改良に使わないのか→今はコシヒカリを中心に品種改良が行われている。
    • ジーンバンクに貯蔵されていて劣化しないのか→種の劣化については、作物によって数年経過したときの発芽率というものが大体わかっている。マイナス20度のストックコレクションは半永久、1−2℃のワーキングコレクションは10年くらい保存できる。分譲して足りなくなると増やす。ダイズは3−5年で種を更新する。お茶、芋は栄養繁殖で増えるので、育て続けて保存する。
    • なくなる品種もあるのか→いつ役に立つかわからないので、種子は財産。コストとパフォーマンスとの兼ね合いだが、保存に努めている。成長点の凍結保存もある。
    • イネは浅植えは分岐するが、深植えすると分岐しないと聞いたが→成長点が植物体の下部にある場合、深植えするとその部分が土の中に入ってしまう。
    • ワケギは浅植えだと聞いた
    • ネズミ以外の実験はどんな動物を使うのか→ラット

    全体的な感想
    • 田部井先生の説明がとってもわかりやすくて感動しました
    • いろんな人がどんなことを思っているかがわかってよかった
    • 圃場試験を応援しています
    • ハスの種を10年くらい前にもらっているが、今からまいても芽がでるでしょうか→種の保存状態による。ハスの発芽は不ぞろい。休眠か死んでしまったかは、種に傷をつけた後水につけておくとわかる
    • 参加してよかった。きちっととした話は専門家から聞きたい。最近は、企業の方が情報を出しており、行政の方が遅れているのではないかと思う→実用化を第一にする企業に比べ、国の研究には基礎研究が多い。実用化を意識して研究していたか。特許料を払っても役立つものをつくるべきだったのか、という議論はある
    • コマツナのディフェンシンとは何か?→ディフェンシンはある特徴を持った抗菌性のタンパク質の総称で、生物種ごとにいろいろに異なっている
    • 反対する人たちはどのような意識を持っているのか→反対する人たちにはレベルがあると思う。1)反対のための反対(反対意見を述べることを仕事にしている)、2)慎重派(情報不足であることなどから不安、心の不安)、3)サイレントマジョリティ(反対も賛成も意見を表明しない多くの人々)
    • 今後はどういったものがでるのか→組織によって目標とするものは違う。農業生産に役立つものを目指す組織では、私たちのように機能性を付与した米の研究、経済産業省関係のプロジェクトだとエネルギー関係の研究。まずは人口増大に対応できること。    社会に余裕がある時代だと、お金をかける会社もあるが、お金や時間に厳しい時代なので、国にも頑張ってほしい。アルツハイマーに効くもの、病気と食物の関係が大事だと思う
    • 工学関係だったので、生物分野の今日の話には珍しいことが多かった。リスクマネジメントでは、原子力は100万分の1ならいいという。100万人にひとりだと人間は気にしなくなるというが、明らかに危険か、ほとんど安全の間の領域の問題。安全が確認されたものに対しては、99.99%安全だと思っている
    • おぼろげながら遺伝子組換えがわかった気がする。(目的語は?)品質は安定しているのか→組換え作物を作って商品化する場合は、最初に多数の組換え体を作出して、目的の特性をきちんと示しているか、またその形質は安定して子孫に伝わるかを確認する必要がある。花粉症緩和米については7代目の種をまいて、現在の系統では遺伝子発現は安定しています。
    • 医療に使う米の民間の研究グループに入っている。2月19日のテレビを見た。私の会社では肥料も扱っている。最近は農家の人は元気がない。こういうバイオで意欲が高まり、希望ができると思う。日本の農業の見通しは→農業に魅力がないので、後継者が出てこない。経済性があることが大事。花粉症緩和米は医薬品として出すと10年先、食品として出すと5年先くらいか。
    • メークインで組換えをしたのはなぜ→様々な理由があるが、利用されやすいことや遺伝子導入が行いやすかったから。
    • 塩に強いイネを作ってください。乾燥に強いイネもお願いしたい→シロイヌナズナから取った遺伝子で乾燥、塩害に強いものが作れることが分かっている。メキシコの麦研究所でその遺伝子の研究がはじまっている。砂漠も利用できるようになる。DREB1という塩害に強い遺伝子を日本人が発見している。
    • 私は理系の人間。遺伝子組換え作物は、安全性などの試験が大変なのでがんばってください。
    • 暑い中、丁寧にわかりやすく説明してくださってありがとうございます。がんばってください。
    • かなりわかりやすかった。外国のものの試験は→海外、国内のいずれで開発されても、国内で試験をしている。海外で開発されたこぼれ菜種が問題になっているが、環境影響は十分に評価されているので問題はない。安全性の試験は国際的な議論をふまえて行っている。食品としての安全性に関する議論はOECD(欧州経済開発機構)やCODEXで行っている。環境はカルタヘナ法がカバーしている。
    • 米として開発するのなら、塩害向けの方がいいと思う。
    • オオカバマダラの研究の実態を今日、うかがえてよかった。日本が中国から組換え品種を輸入するのは、なんとなく嫌な気持ちがする。みなさんの研究を応援しますからがんばってください。
    • 遺伝子組換え技術について、今日のような会合が必要であるという意見を聞いた。共存のために何が大事か。表示が大事だという主張が印象に残っている→使用と不分別は義務表示。不使用は任意表示。(重量の5%以下、重要で4位以下なら不使用と任意表示をしていい) 不使用の任意表示が法律の問題だと思っている



    きれいなユリの葉を持ってきて、苗を増やし方
    を習う参加者
    農業生物資源研究所会議室で、和やかバイオ
    カフェ
    手作りケーキを持ち込んで、話も滑らかに


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