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第19回バイオカフェレポート「遺伝子組換え食品のおはなし」

6月23日(金)茅場町サン茶房でバイオカフェが開かれました。お話は、食品総合研究所 日野明寛さんによる「遺伝子組換え食品のおはなし」でした。はじめは馬渡さんのフルート演奏で、ゴセックのガボット、バッハのソナタなど3曲。


フルートの演奏 具体的に説明される日野明寛さん


お話の概要

世界の遺伝子組換え作物
耕作面積は10年間で50倍の10万ヘクタール。第1位はアメリカで、アルゼンチン、ブラジル、カナダなどが続く。各国の作物の中における組換え体の占める割合は、米国ではダイズは、1996年には5%だったのが、2005年には90%に伸びた。先進国で商業栽培していないのは、日本、韓国、欧州の一部の国。これらの国にとっては、消費者の直接的メリットが不明確なまま世界の栽培が増えていったことになる。

米国の農家
例えば、ダイズ畑をみると、除草剤耐性ダイズには除草剤のラウンドアップを2回まいただけできれいな雑草管理ができる。米国農家が非組換えダイズも作るのは、日本、韓国への輸出用。日本に輸入されるダイズは油に、トウモロコシは飼料またはコーンスターチや甘味料になる。国産原料との値段の差は、日本国内で最大20倍ほど。米国からは分別流通管理をしたダイズ、トウモロコシだけが非組換えとして入ってくる。

市民のイメージ
「遺伝子組換えというと怖いものだと思う」といわれるが、このことばを使ってしまったので今更変えられないでしょう。「遺伝子を食べても大丈夫?」という疑問をいわれる人がいるが(この会場にはそういう方はおられないようですが)、このような質問は、中学・高校の生物の授業時間数が少なすぎるからではないかと思う。そのうえ、科学者は「100%安全」という言い方はしないので、その結果、「表示を見て非組換えを選ぶわ!」ということになる。
今は遺伝子組換え食品の情報提供のために、いろいろな団体から数十種類の資料が出ている。今日はよくまとまっていて、わかりやすく書かれているものを配布した。

当日の配布物
(社)農林水産先端技術産業振興センター(STAFF)「Do you know?」 
http://www.biotech-house.jp/library/
食品科学広報センターリーフレット「組換え食品シリーズ」
http://www.fsic.co.jp/news/syokai/kouhoushi.htm

ジャガイモが食べ物として広まるまで
中世の欧州では、ジャガイモは形が悪く、芽にソラニンがという有害物質があり食中毒をおこすことがある。めしべとおしべでなく芋で増えるなどから「悪魔の食べ物」とされ、嫌われていた。しかし、今は世界の主要作物として広まっている。
物理学者の寺田寅彦先生は、「ものを怖がりすぎることや怖がらないことは簡単だが、正当に怖がるのは難しい」といわれている。まさに私たちが理解しなければいけないリスクとのつきあい方を表していることばでしょう。

新しい食品の開発
チーズは偶然の出来事から見つけられた人類最初の加工食品。チーズ、ビール酵母など、食品は自然をたくみに利用して人手が加わってできたもの。人間の手が加わっていない食品は殆どなく、逆にいえば、人間の知恵、生物の力を使って出てきたのが現在の食品。
組換え食品に対して慎重な立場をとる人たちは、「遺伝子組換えは生物を改造している」というが、品種改良には遺伝子の改変が付きものであり、改造していない食品はほとんどない。

遺伝子とは
遺伝子とは生体内でたんぱく質をいつ、どこで、どのくらい、何をつくるかの情報が書いてあるもの。植物の遺伝子はその細胞の核の中にあり、4種類の有機化合物がつながってできている。すべての生物は持っている。
遺伝子を私たちは毎日、食物の遺伝子を食べているが、消化・分解されている。

リスクとつきあう
安全性評価は、受入れ可能なある程度のリスクを認めないときりがないと言える。20リットルの水を飲んで死んだ人がいるという記録があるが、飲み水にリスクを論じようとする人はいない。どんなものにもリスクはあること、リスクの捉えかたは人によって差があることを知っておくべきだと思う(例えば科学の専門家とそうでない人では考えが異なる)。
アンケートによると人々の情報源はテレビ、新聞、雑誌が中心。メディアの情報をいかに妥当に評価し、リスクを知り、妥当に判断することが必要。以下のような努力をすることが重要だ。

  • 科学技術を身につけ、一般的科学用語が理解できる
  • 事実と意見を見分ける、編集の有無を見抜く(面白おかしい編集があっても)ことで、メディアの情報の正確性をみわける。
  • 情報を一度批判的に読み取る 「リスクとつきあう」(吉川肇子著)はたいへん参考になる。


組換え食品の安全性評価の基本的考え方
世の中に絶対安全な食品はないことを前提に、今まで食べてきたものと比べるのが「実質的同等性」の概念。このことばが正確に使われなかった経緯から、最近はこの単語は使わずにその内容を説明するようになった。
ジャガイモのソラニンのように、個別成分を見ていても食品全体の安全性は評価できないので、既存の食品と比較することで評価し、導入した遺伝子は徹底的に調べるやり方。
食品安全委員会の16の専門調査会の中に遺伝子組換え食品を評価する委員会がある。評価する項目は、遺伝子組換え食品の履歴書、導入した遺伝子による影響、作られるたんぱく質(一日に食べている全たんぱく質に対して量的にどのくらいか)、遺伝子組換え体の食品成分の比較、生産されたタンパク質の有害性(アレルギーを起こすことが知られている食品由来のタンパク質と性質が類似しているかを調べる)
アレルギーへの不安が強いが、遺伝子組換え食品だからと言ってアレルギーを起こすのではない。どの食品も一部の人にアレルギーを起こす可能性があるし、食品のどのタンパク質がアレルギーを起こしやすいかがわかり始めてきている段階。大人の1−2%、子供の5−8%が一部の食品にアレルギーを起こすが、それがなぜなのかはわからないのが、アレルギー予測の研究の難しさ。新しいタンパク質のアレルギー性の予測では、アレルギーの原因タンパク質のアミノ酸配列が似ているかをを調べる。これまでにアレルギーを起こすことが知られているタンパク質と新しく生産されるタンパク質のアミノ酸配列の全体または一部が一致するか。消化しやすいか(人工胃液や人工腸液によってどのくらいの時間で消化されるかを調べる)。

動物試験
モルモットにヒトに換算して、1500〜8億倍の大量のタンパク質を飼料に混ぜて与えたが、何も起きていない。
遺伝子組換え飼料で育てた家畜(ブロイラー、肉牛、ブタ)を私たちは食べてきたが、何も起きていない。飼料の組換え遺伝子が家畜の肉や乳にうつらないかを調べたところ、移行していなかった。ふんの中に見つかったというデータはある。

どんな組換え作物があるのか
75種類の除草剤耐性などの農作物の商品化が実現または可能な状態。
世の中で開発中の組換え食品には、食べるワクチン、防弾チョッキ用の鋼鉄繊維(くもの糸はステンレスより強い)、スギ花粉症緩和米(薬か食品かが議論されている)、太らないポテトチップ用ジャガイモ(油がしみこみにくい)などがある。
このように遺伝子組換え食品が広がっており、欧州の雑誌には、「今日、お客様が注文されたものはリスクがあります」とウェイトレスがことわれば良いという風刺漫画もあるくらい。



会場風景1 会場風景2


質疑応答

  • は参加者の発言、→はスピーカー
    • 遺伝子組換えダイズと非組換えダイズの値段の差は→米国内では区別されずに同じ相場で扱われる。但し、組換え大豆が混ざらないようにした非組換え作物は値段が高くなる。
    • 農薬を4回散布した非組換えと2回散布した組換え作物の残留農薬の差は→その試験では除草剤耐性作物向けの除草剤(ラウンドアップ)は使っていないが、農薬には残留値が決められている。使用されているラウンドアップはアミノ酸であるグリシンに似た構造で、2−3週間でじわじわと雑草を枯らすものだが、雑草が伸びてきた時期に散布すると雑草だけきれいに枯れる。除草作業は、一般に耕す時に土壌処理剤をまいたり、イネ系雑草、広葉系雑草などを対象とする農薬をまく。遺伝子組換え作物については、雑草の多い場所や気候の差があり、その結果には散布量が減っている地域、変化の余りない地域など様々なデータがあるが、合計の散布量は減っているようだ。
    • アメリカやカナダは抵抗なく食べているのに、日本人に抵抗感があるのはなぜ→1)米国は工業国であるが、農業国でもあり、国の産業として国民が認知しており、家族や親戚に農家の人がいて様子がわかる。2)開発企業が、早い段階から関心のある人を研究所、農場に招いて見せた。3)経済状態に差があり、経済的に余裕がない層は気にしないで食べるし、余裕のある層は、国益になる遺伝子組換え作物を批判しないようで、日本より市民の遺伝子組換え技術への認識は低いと聞いている。4)欧州はお国柄がでているようだ。イギリスは10年前は好意的だったが、組換えを批判するチャールズ発言でエジンバラ公と対立したこともある。「ゲルマン系は食べる前に原理を議論するが、ラテン系は食べておいしければいいという」という笑い話がある。
    • 外国ではダイズ、トウモロコシは飼料。コムギはパンになるので反対が起こったのではないか→世界で日本ほどダイズを食べる人はいないのでこのような差が出たという面もあるだろう。開発企業がコムギの商品化を見合わせることにした理由に非組換え小麦の需要がでてきたときに品種ごとの組換えと非組換え品の分別管理が難しいというものがある。カナダは管理できるようだが、アメリカでは難しいと言われており、そのために商品化を見合わせていると聞いている。また、パンとして食べることを気にしているという考えもある。両国の主要輸出先の欧州、日本、韓国が他国へ切り替えることへの懸念も原因の一つと考えられる。
    • イネの研究における日本の位置は→イネのゲノム情報は解析が終わり、今後はどの有用遺伝子をどう使うかが大事。イモチ病に抵抗性を持つ組換えイネが日本で開発され、北陸センターで栽培しているが、反対運動に合い国内では訴訟中。米国の組換えイネは審査を終了しており、いつでも栽培できる状態になっている。現在では、日本は組換えイネの開発では米国等に負けない力があり、米国特許を使わずに作れるようになっている。カラシナなど、食用植物から有用遺伝子を取り直すなどしている。今は風評被害の原因となるなどで騒がれ、規制を開始した自治体がある。欧州は組換え体と従来農業の作物の共存させる政策を始めており、デンマークは国内法をすでに策定した。ともに共存への取り組みと考えられるが、ECはポジティブで、日本はネガティブに見える。
    • WTOで海外のお米が入ってきたら、日本のお米はどうなるのだろう
    • お米に高い関税がかかっているときいたが
    • 食料を輸入している国が日本への輸出を止められたら、どうなるのだろう→穀物では28%の自給。日本が技術面でアジアの国をリードし技術移転をするなどで、あらたな食料安全保障の関係構築も考えられる。
    • 有機栽培について、日本人は自然志向が多く、慎重派は有機栽培を好むようだが、海外では→一般的には欧州も有機栽培が好き。新潟県では有機栽培農家が試験栽培に反対している。日本の有機栽培は周りが農薬を使っている中での有機栽培だから病虫害が出ないのではないかと言う意見もある。各自が庭等で最低限の作物を栽培し、少しでも農業を知ることから始めるべきだと思う。
    • 日本の昔の農業は有機栽培で、当然のことだった。枯れ草などを土に入れればよい土になるのは当たり前。それでも病気が出てきたときに農薬が誕生したはず→組換えか有機と言う問題より、今の農業体系ではどのくらいの農薬等を使って、病害虫、雑草をおさえていることを伝えるべきだと思う。そのうえで、みんなが議論すればいい。農薬はいいイメージがないが、まずは正しい知識を持つことが重要。
    • 世界の人口増加に世界の穀物生産増加は追いついているのか→1980年から穀物生産は頭打ちなのに、人口は増えている。日本では食べ物の25%を捨ており、消費期限があと5分で切れるときは、売れないといわれたという話もある。そういうことも含めて食料の有効利用を話し合っていく必要があるのではないだろうか。
    • 中国との食料の取り合いが始まると食品は値上がりすると思う。
    • 組換えを食べなくて済むなら、私は食べたくないと思っているが→今の食品で満足しているから研究をやめてしまったら、10年たって食料不足になってから作ってほしいといわれても作れない。新しい技術は長年の研究の蓄積で実用化されていることも忘れてはいけない。
    • 米国はバイオ燃料でも穀物を使いはじめている。日本に回す穀物はなくなるのではないか→日本でも休耕田を使って燃料を作るなどしたらいいと思う。
    • 遺伝子組換えに自分自身がなぜ否定的なのかはよくわからない。有機、バイオなどをわけて栽培すればいいといわれたが、組換えか非組換えがわからなくなってしまうのではないかと不安→私たちのグループが検知技術を作りましたから、調べることは、お金さえあれば可能。しかし、こっそり作って流通されたらわからない。社会が整備したシステムに従う倫理観が前提。
    • 資料をみて便利さとある程度の安全性は理解したが、どんどん認可されていくと、有機でも遺伝子組換えが混じったりするかもしれない。考えて選べる人と仕方なく取り入れていく人に分かれていくと思う。組換え食品は値段の他に味も変わるのか→入れられる遺伝子は1〜3個くらいで、味はかわっていない。
    • 食べ物がなくなることが想像できない→食料は毎日食べなければ死ぬ。そういう意味では食料の確保と安全性の確保は医療より大事であることをもっと世に伝えるべきだ。 原案のようなことを答えたつもりはありませんので。 これはなんでしょうか?このような質問ありました? これはなんでしょうか?このような質問ありました? この質問と合っていませんが・・



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