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サイエンスコミュニケーション国際シンポジウム「科学を語り合う」開かれる

5月23日(火)、日本大学カザルスホールにて、PCST-9協賛国際シンポジウム「科学を語り合う〜サイエンスコミュニケーションの方法と実践」が開かれました。このシンポジウムは韓国ソウルで開かれたPCST-9のポストコンフェレンスとして、ブリティッシュカウンシルと文部科学省科学技術政策研究所の主催で行われました。

ブリティッシュカウンシル http://www.britishcouncil.org/jp/japan.htm
文部科学省科学技術政策研究所 http://www.nistep.go.jp/top-j.html
このレポートの詳細版はここからダウンロードしてください(質疑応答、国内招待講演の概要も含まれています)


特別基調講演 パトリック・ヴィッテ・フィリップさん 欧州委員会研究総局広報担当官

「科学研究のコミュニケーション――ヨーロッパの取り組み」

投資
科学研究への投資の状況をみると、EUはGDP比率では1.4%で中国に追いつかれそうだが、今3%を目指している。日、米、EUの公的機関の投資は同じでも、民間投資の額は日本や米国では2−3倍あり、投資推進にサイエンスコミュニケーションが大事。環境汚染や遺伝子組換え技術について新聞報道を信じていいのか、EUでは、ナノテクでGMと同じ議論が始まっている。

研究者
人口に対する研究者数は 欧州5.5、米国は9.0、日本の9.7。日本では理工系卒業生の半分近くが研究者になる。EUは5分の1で、彼らは米国で研究し、永住してしまう。また女性の数は少ない。科学に関心はあるが、新聞は読まない傾向の強い市民に対して、科学を有益な道具として社会に根付けることが大事。科学者に市民への説明責任が生まれたが、科学者は説明したがらないと半分以上の市民が考えている。

問題点
科学のメッセージ(科学の文化を語る、欧州の科学プログラムを進める、科学政策のバランスをとるなど幅広い)は複雑なうえ、欧州は21カ国語の翻訳が必要。効果的なコミュニケーションの欠乏、メディアの変化(科学担当記者は権威があって、一方的に教える口調だった、ブログのような多数と多数のコミュニケーション)も影響を与えていると思う。

我々の活動
プレスへの情報提供(ブリーフィング30回/年、印刷物作成、ウェブサイト運営)、ツールの提供、サイエンスコミュニケーション会議開催、メディアトレーニング、科学者とジャーナリストの間で仕事を交換する試み(数ヶ月間、相手の職場で働く)、立派な科学ジャーナリスト、科学コミュニケーターに対してデカルト賞授与、あらゆる場所(タクシー、刑務所、料理教室、公園、カフェ、駅、工場等)であらゆる形で科学を提示していく、テレビ番組の共同制作を行う(6話、12話の形式)

まとめ
互いに交流し、よい事例を教えあっていこう!




基調講演1 リチャード・ホリマンさん 英国オープンユニバーシティ講師

「エンゲージングネットワークとサイエンティフィックシティズンス」

イギリスの歴史
1820年 ファラデーの公開講座開始。大人気を博す(クリスマスレクチャーは1966年から)1851年 ロンドン万博1851年 620万人来場 恐竜人気
1985年 ボドマーレポートに欠如モデル(十分知らない人に教えるのは科学者の義務)登場
1990年代 BSE問題(BSEとクロイツフェルト・ヤコブ病の関係性を英国政府は全面否定)
2000年 BSE調査報告書(不確実性とリスクに関するコミュニケーションが不十分だったことを指摘)
2000年 上院科学技術委員会のレポート「市民は科学者を信用しなくなった。対話、透明性、討議が必要」
2004年 DEMOSレポート「“上流での関与”(ナノテクのような新しい技術が出てきた時には、早い段階で対話を初め、定期的に対話を続けよ)の必要性がとかれる」

科学者の関与
科学者の関与は早い時期がよい。例)遺伝子組換え食品、BSE、ナノテクノロジー 
正当性を担保するためには、関与する人を科学者や専門家に限らないほうがよい Collins and Evans 2002 
国のレベルでの関与が必要なときもある。関与のプロセスの評価についても検討が必要
議論するテーマは、遺伝子組換え食品、低レベル放射性廃棄物などで、議論の範囲は、経済、科学、リスク、価値観にも及ぶ。

市民の関与
方法には市民陪審、サイエンスカフェ、コンセンサス会議、フォーカスグループなどいろいろあるが、サイエンスショップ(リバプール)を紹介する。サイエンスショップは科学者にとっても市民と接して学習する機会になり、市民は科学とともに暮らしていることを知る。
ビデオで市民からの問い合わせにみんな考えて、科学者を巻き込む様子が示された。テーマはアイスクリームのラムレーズンが沈まない方法、家畜にキャベツを与えていいか。

科学的な市民のネットワーク
ITの進歩で視聴者が双方向で関わるようになる。
オープンユニバーシティとBBCが一緒につくっているプログラムがいくつかある。例えば、Rough Scienceでは、身近な問題を科学について活動を通じて解決していく。また、DoNationでは、病院に関するドラマであり、結論が2つ用意されている。それは、脳死者がいるときに、臓器移植を求める二人のどちらに移植すべきか、視聴者が電話で投票し、最後にハッピーエンドになる(Webでは反対の選択肢だった場合のストーリーもある)。もっと知りたい人のための情報提供や、臓器移植者への登録などもできる。
専門家でない16歳の少年が動物実験賛成という意見表明をし、ブログでみんなが討論をしたケースもある。天文ブログでは専門家でない、天文好きの人が国境をこえて対話をしている。ポッドキャストには、いつでも聴くことができるという利点がある。また、「学習の旅路(learning journey)」という考えのもと、テレビやラジオ番組の視聴のようなインフォーマル・ラーニングをきっかけにして、人々をフォーマル・ラーニングに導くというものもある。そのようなものとして、オープンユニバーシティとBBCが共同で制作している番組『青い惑星(Blue Planet)』や『哺乳類の生活(The Life of Mammals)』などがある。テレビを見た視聴者が、ウェブで追加情報を読み、短期講座に登録し、さらには学位の取得へとつながっていく。

これから
期待をどう管理していくか、何が期待できるのか、市場経済の悪影響にどう対応するのか、対話疲れの危険性をどう扱うか




基調講演2 英国ジュニアカフェ副代表 アン・グランド

「ジュニアサイエンスカフェの試み〜あなたの地域で あなたのことばで」

サイエンスカフェとは
 成人向けサイエンスカフェの発展形として、一線の科学者と生徒のあいだにコネクションを築き上げる作業で、対象年齢は14歳から18歳くらい。開始して9ヶ月。
1998年にイギリスでサイエンスカフェが始まった。元TVプロデューサーのダンカン・ダラスが、文化の中での科学の議論が少ないのではないかということで、自宅前のカフェを説得してはじめた。現在では、英国や日本をはじめ世界の100以上の場所で開催されていると思われる。それぞれは独立していて、正確な把握はできない。屋内外のいろいろ所で行なわれており、参加者の男女比はだいたい半々。資金も少なく、参加費を講師の謝礼にあてるような規模

大人のサイエンスカフェ
講演20−25分(自分の研究の紹介) 完全に話してしまわずに。あとで質問できる機会を設けておくのがコツで、休憩後、質疑から議論へ移る。機材は使わず、議論を重視する、一般参加を促進するのであって、理解を促進するのではない。アカデミックな文脈の外側で、独立したグループが行う。

ジュニアカフェ
こども対象。フランスで3年前に開始。100箇所(フランス国内、米国、英国)で行われている
ジュニアカフェが必要な理由は、教師は事実や情報を伝えるのにはいいが、社会の中での科学の役割、位置づけを教えるには適していないから。21世紀に生きるためには、人々には主婦、親、患者、などいろいろな役目があることを理解し、新しい科学とつきあっていかなくてはならない。科学の理解には3段階あり、科学そのものの理解から、科学が与える影響、科学が置かれる文脈の理解へと進む。
場所が議論の性質を決定する。教室は教えられる所で、カフェは議論する所。生徒と一緒に運営する。スピーカーはいろいろ(教授、院生、企業研究者等)だが、若いスピーカーの方が生徒は親近感を持てる。サイエンスカフェは科学を文化の文脈の中に取り戻し、「科学は面白くて、楽しくて、ためになるもの!」であることを伝える。メディア、文系の先生などいろいろな分野の人に参加してもらいたい。

学校での実施方法
学校の環境にあわせ、昼休みや放課後を利用して約40分。生徒が責任をもって実施。オーガナイアーはサポートするだけ。具体的には、サンプルセッションを学校で行い、生徒にイメージをつかんでもらう。生徒と相談し、司会、集客、プログラム、スピーカー探し、食料確保等の役目を分担。スピーカー探しは手伝う。生徒がリラックスできる談話室、図書館、カフェテリアなどのリラックスできる場所と時間帯を選ぶ。スピーチはひとりのスピーカーで10分、みじかい休憩、議論30分。ディベートでなく、会話なので、生徒同士も話し合う。十分にオープンで、こどもの問題を受け止められなくてはならなし、テーマからはずれた質問もくることを想定していなくてはならない。
フランスでは、複数のスピーカーがいるが、生徒よりもスピーカーがいっぱい話してしまうのはよくない。ジュニアカフェは生徒の話す時間が長い方がいい。米国は博物館で行われる。

扱ったテーマ
ロボットは感情をもつのか、男性は妊娠することができるのか、ES細胞とデザインベービー、動物実験は是か非か、パラレルな宇宙は存在するかなどキャッチーなタイトルが大事! 集客に影響する

メリット
1)スタートは先生だが、進めるのは生徒なので、先生の負担にならない、2)大学と学校のリンクができる、3)カリキュラム間の活動(科学とメディアなど)ができて、カリキュラムへのインプットがある、4)現在、活躍している科学者とコンタクトがもてる、6)学生にはキャリアになる
7)若い科学者はヒントを与えられる。仕事場を離れた世界をみることができる

現状と課題
20箇所が目標だが、現在、17箇所でカフェをスタート。スピーカーのデータベースや学校やオーガナイザーのよいリンクができあがりつつある。これからは、オーガナイザーが一歩、引いて、カフェの自立を促したり、教師が一歩引いて、生徒の自立を促す。オーガナイザーから離れた場所でも行われていくこと、学校間のコンタクトによるサポートが大事で、ウェブサイトで学校間の会議を行うことも考えている。3年後には75の学校で年に6回のカフェ開催を目指す。多くのスピーカーが必要になる。資金提供終了後、大人のサイエンスカフェは続いている。



国内招待講演1 小林 傳司(大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授)

「日本におけるサイエンスコミュニケーションの課題」



国内招待講演3 田辺玲奈(国立科学博物館学習課)

「学びの連鎖を目指して――上野の山の文化資源を活用する」



国内招待講演2 佐々義子(くらしとバイオプラザ21主任研究員)

「バイオカフェの展望――サイエンスコミュニケーションの一方策として」



国内招待講演4 高田浩二(海の中道海洋生態科学館(マリンワールド海の中道)館長)

「マリンワールドの挑戦――実物教育の限界と情報教育の未来」




科学技術政策研究所 渡邉正隆さん まとめ

サイエンスコミュニケーションは国策であり、科学なしでやっていけない世界の状況の中でサイエンスコミュニケーションが必要であることがよく現れたセッションとなった。
パトリックさんには、EUの多角的な取り組みの紹介して頂き、ホリマンさんには、イギリスの理念的、歴史的な活動の総括をして頂いた。アン・グランドさんは、学校を舞台にしたサイエンスコミュニケーションの有効性を示された。出前授業のような単発でない継続性のある事業の重要性も述べられていたと思う。
上野や水族館も教育の現場と連携していることがわかり、日本からも欧州に発信できたシンポになったのはないか。バイオカフェは日本型取り組みとして示唆に富むものであった。イギリスの学校、上野、銀座、茅場町から共通して「場の効果」が述べられたことも興味深い。

今後の課題
・関心の薄い層には科学の面白さを訴えかけないといけない。科学者でも自分の専門分野以外の科学に興味のない人は関心の薄い層に入るともいえるかもしれない。
・海外はウェルカムトラストなどの民間団体の資金援助がある。民間ベースで財政的支援が行われていくことが今後の課題
・ネットワーク化による情報の共有、活動の活性化が大事
・国策としてやっていくうえでは、評価手法の研究も必要



オプショナルセッション「サイエンスキャバレー」(18:00〜19:30)

ゲスト:桜井進(サイエンスナビゲーター)「楽しき哉、数学」

シンポジウム終了後、会場アプローチで、サイエンスキャバレーが行われました。桜井さんが数学のπ(円周率パイ)とe(自然定数)の発見の経緯、関わった研究者のエピソード、いろいろな関係式などを美しい画面で紹介しながら、楽しいおしゃべりとバックミュージック。参加者はワインを傾け、おしゃれな一時を楽しみました。


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