くらしとバイオプラザ21

くらしとバイオニュース

ホーム
What's New

くらしとバイオニュース

バイオイベント情報

やさしいバイオ

リンク集

バイオカフェ

くらしとバイオプラザ21とは


第18回バイオカフェ「酵素の巧妙さ、すごさ」開催レポート

5月19日(金)、茅場町サン茶房で標記バイオカフェが開かれました。お話はくらしとバイオプラザ21の外山博視さんによる「酵素の巧妙さ、すごさ〜ミニ実験を含めて」でした。始まりは、高橋節子さんによるバイオリン演奏。クライスラーが作曲した3つの曲を弾いていただきました。当日は、テレビ(NHK)やラジオ(文化放送)の取材の方がいらして、参加者全員、緊張したり、照れくさかったり。

高橋さんの演奏 外山さんのお話


「酵素の巧妙さ、すごさ〜ミニ実験を含めて」

1.酵素とは何か
酵素というと、消化酵素(アミラーゼ、トリプシン、リパーゼ、ペプシン)、食べると唇が荒れるイチジクのフィシン、タンパク質の汚れなどを落とす洗剤に配合されている酵素などがある。
酵素は生物がつくる触媒で反応を促進する物質である。酵素はたんぱく質でアミノ酸が70−700個(分子量1万―10万)くらいつながっている(300-400個つながったものが多い)。生物が生きていくには、メタボリックマップ(代謝マップ)といって、物質が分解されたり、合成されたりするような経路(たとえていうなら、コンピュータのIC回路)ができており、その各ステップには必ず酵素が働いている。

2.酵素の3つの特性
基質特異性がある:それぞれの酵素には反応する相手(基質)が決まっている。例えば、でんぷんにアミラーゼを作用させると麦芽糖(マルトース)になり、麦芽糖にマルターゼを作用させると、グルコース(ブドウ糖)になる。ところが、アミラーゼを麦芽糖に作用させたり、マルターゼをデンプンに作用させても反応は進まない。
酵素にはその能力を最も発揮する温度があり、これを至適温度という:化学反応は温度が高いほど進むが、私たちの体内にある酵素の至適温度は体温くらい。
酵素にはその能力を最も発揮するpHがあり、これを至適pHという。特異的な例として胃にあるペプシンの至適はpH2である。

3.ミニ実験
発光には3つの仕組みがある。
○物理発光の例:電灯、雷
○化学発光の例:ルミノール反応(鉄分があるところでルミノールと過酸化水素水が反応すると青く光る)、イベントに使われるペンライト
○生物発光の例:ホタル、オワンクラゲ、ホタルイカ、ウミホタル、ツキヨタケ、ナラタケ(夜、光るキノコは毒)

ホタルの発光は、ATPがあるところでルシフェリン(基質)とルシフェラーゼ(酵素)とがそろったときにおこる。
ATPはアデノシン-3-リン酸という物質で、生物に共通のエネルギーである。
ルシフェラーゼ遺伝子を変異剤で処理すると、ルシフェラーゼを構成するアミノ酸が換わり、色の変わったルシフェラーゼができることが、キッコーマン社の研究者によって明らかにされている。今日は市販されている黄色と赤色の蛍光の出る酵素を使って実験する。
この発光のセットは結婚式のアトラクションで使われていて、年間約2000セット売れている。
この他にまな板や手の汚れを調べるのにこの発光の仕組みが使われており、その場で判定できる。月に微生物がいるかどうかの判定にも、このシステムが使われた(1966年アメリカの月ロケット)。

ミニ実験1 ホタルのルシフェラーゼにルシフェリンとATPの混合液を混ぜると、発光する。
ミニ実験2 氷で冷やすと、発光しなくなる(酵素の至適温度から外れた)。暖めると再び発光する。
ミニ実験3 酢を加え、酸性にすると発光しなくなった(酵素の至適pHから外れた)

4.酵素の使用例
*タンパク質や脂質の汚れなどを落とす洗濯洗剤には、アルカリ性で働く酵素が使われており、更には、洗濯の水の温度である15℃でも洗浄力を持つ酵素に改良されている。
 洗剤の箱が小さくなったひとつの理由として酵素の利用があげられる。
*果糖は甘味料で飲料水に使われており、グルコースに酵素グルコースイソメラーゼを働かせ作る。グルコース(ブドウ糖)の甘さを1とすると、砂糖は1.7、果糖は3である。果糖は砂糖より甘く、低い温度で甘さを強く感じさせる性質もある。果糖が50%未満でブドウ糖が50%以上のものをブドウ糖果糖液糖という。果糖が50%以上のものを果糖ブドウ糖液糖という。飲料水の表示に使われている糖が記載されているのでご覧になるのもよい。
*チーズを固めるのも酵素。牛乳などを酵素で固めて沈殿させた「カード」を熟成させて作る。アオカビを混ぜるとブルーチーズ、白カビを塗ってカマンベール。チーズを固める酵素であるレンニンは子牛の胃にある。今は遺伝子組換え技術により微生物によって作られるようになり、子牛を殺さないですむようになった。ただし、日本では遺伝子組換えによって作られたレンニンは使われていない。
*医療への応用として、風邪薬には菌の体を溶かすリゾチーム、血栓溶解剤にはウロキナーゼが使われている。


取材風景1 取材風景2

質疑応答
(○は参加者の発言、→はスピーカー)
  • インフルエンザにタミフルが効かないというのは→ウィルスは宿主とする細胞の中で増える。ウイルスが細胞外に出るときにはウイルスが作るノイラミダーゼが必要である。このノイラミダーゼを抑えるのがタミフルである。効かないということについては、確かな情報を得ていないが、もし効かないとしたら、ノイラミダーゼ遺伝子に変異がおき、ノイラミダーゼが形を変え、タミフルが作用しなくなったのではないか。
  • ホタルはなぜひかるのか。昼間も光るのか→ホタルは幼虫でも少し光る。今回調べてみたら、オスもメスも光るそうだ。オスの方がよく光、光り方で仲間を集め、グループを作ったりしているようだ。
  • 洗剤に酵素を入れると汚れが落ちるのか→でんぷん、たんぱく質や脂質を分解する酵素などが入っているので、でんぷん、たんぱく質や脂質の汚れを落とすことができる。
  • ホタルがピカピカする(発光したり消光したりする)するメカニズムはどうなっているのか→スイッチオンオフのしくみはよくわからないが、ATPの供給機構がオンオフになっているのではないか
  • 他の生物の光るメカニズムはどうなっているのか→分泌物が光ることも、その生物についている微生物が光ることもある。
  • ホタルイカは光ったまま食べても大丈夫だが、毒キノコは蛍光を発するというのは矛盾するのではないか→暗闇の中で蛍光を発するキノコは毒性があるので食べてはいけないことを薬用植物の講義で教わった。
  • 光るブタ、光るサルも作られたという報告があった→実験系として医学や生物学の研究のためにつくられたものではないか。観賞用に作られることはよくない。 科学の進歩ためになるような実験に使われるべき。
  • 酵素の由来について→酵素(エンザイム=Enzyme)とは、ギリシャ語で、「酵母(ザイム=Zyme)」の「中にある(エン=en)もの」を意味する。酵母の中で、様々な生命の活動を行なっている物質が発見されたのにちなんで付けられた。
  • 酵素が原因で起こる病気があるか→フェニルケトン尿症はフェニルアラニンからチロジンが生ずる反応に働く酵素又は補酵素の欠損によってフェニルアラニンの蓄積とその副産物の生成が起こり、生ずる。適切な治療を行わないと精神遅滞を起こす。
  • 酵素は美容に役立つのですか
  • 私はパパインという酵素が入っている化粧品を見たことがあります。パパインやパパイヤなどのトロピカルフルーツに含まれる酵素で、生で食べると口が荒れることがありますが、そういう酵素は化粧品に配合すると皮膚を柔らかくするそうです。


copyright © 2006 Life Bio Plaza 21 all rights reserved.
アンケート投票 ご意見・お問い合せ