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遺伝子組換えイネなどの圃場試験について一般説明会開催される |
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3月18日(土)、「農業生物資源研究所で行う遺伝子組換えイネなどの第一種使用(圃場試験)についての一般説明会」が開かれました。参加者は約80名。
農業生物資源研究所HP 参考資料、添付資料が見られます http://www.nias.affrc.go.jp/pressrelease/20060309/
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説明会会場はこの後、満席になる |
草丈を改変したイネの試験栽培の結果説明 |
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開会 |
はじめに佐々木理事による挨拶がありました。遺伝子組換え技術は交配育種でできなかった農作物の品種改良、洗剤用の酵素合成などに用いられており、イネゲノムなどのゲノム研究より得られた知見を利用して更なる研究を進めている。トマト、メロンなどの野外試験もしているが、問題はおきていない。風評被害、市民の不安・懸念が払拭できるように環境影響に関する研究をしたい
司会者より、今後の説明会改善のためだけに用いる目的で、ビデオ、テープ録音をすることが告げられ、配布資料の確認が行われました。
農林水産事務局技術安全課石橋補佐から「国民の理解のもとに円滑に栽培試験が行われるように、農林水産省では指針を策定しており、そこで定められている説明会が適切に実施されるか確認するため」と今回出席の理由が述べられました。
企画調整部遺伝子組換え研究推進室長 田部井豊
現在、世界の遺伝子組換え農作物栽培の状況(栽培国、栽培面積)、日本への輸入の状況(栽培面積からの推定値。ダイズ、トウモロコシ、ナタネ)
花粉症緩和米と草丈を改変したイネの栽培は、カルタヘナ法による第一種使用規程で承認されたもので、また「第1種使用規程承認組換え作物栽培実験指針」(農林水産省の独立行政法人向けに策定された。交雑・混入防止措置、情報提供などが決められている)に従って行われる。展示圃場で栽培される作物は商品化されている品種
生物多様性評価には、@競合の優位性による生態系への影響、A有害物質産生、B交雑による生態系への影響の3項目がある。
来年度のスケジュール(田植えは4月17日の予定)
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質疑応答 |
配布資料がわかりやすくてよかった。地元への開催案内を回覧した範囲はどこか。何キロ以内に行ったのか→農業生物資源研究所周辺の観音台1−2丁目、若葉、南中妻の各町内、つくば市で何キロ以内というような距離で判断していない。近隣からは6−7名が説明会に参加。市役所のHPにも掲載
新生物資源創出研究グループ新作物素材開発研究チーム 主任研究官 古賀保徳
17年度に栽培した遺伝子組換え技術によって草型を低くしたイネ(半矮性G系統)と、葉が直立するイネ(直立葉B系統)に関する報告を行った。
栽培試験をした場所は、民間圃場まで400メートル、試験場内の保存用種子栽培の圃場まで50メートルの距離。栽培後、地上部は焼却処分、地下部は冠水により腐敗させ、種子は保存。
調査した項目は、(1)付加した諸特性の確認、(2)栽培密度、与える肥料の量を変えて最適条件を求めた、(3)草丈、玄米の量、穂の数、一穂あたりの捻実数、収量、(4)花粉飛散距離等
調査結果は
(1)遺伝子導入によって特性が付与されたことが確認された
(1)収量について、半矮性G系統は減少し、直立葉B系統はやや減少傾向にあったが統計的な有意差なし
(2)もち米にうるちが交雑するとうるちになって粒が白濁する(キセニア)現象を利用して調査したところ、60,835粒中、うるち米になったのは4粒。4粒の遺伝子検査をしたら、遺伝子組換え米との交雑ではなかった。したがって、今回の花粉飛散防止への栽培距離は適切であり、民間圃場で交雑が起こる可能性はない。
今後、収量の改良を加えると、倒れにくく、収量の高いイネの品種改良に役立つことが期待される。
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質疑応答 |
・収量が減ったのは、草型改変以外の変化が起こっていることになり、予想しない変化をもたらしたのではないか→減収はプロモーターの性質によって起きた変化。このプロモーターは茎だけでなく穂でも多少は働くために穂の数が減ったと考えられる。
・うるち粒4粒に交雑が起こったというが、組換え米との交雑でないとどうしていえるのか→4粒のうるち米はその回りの非組換えうるちイネと交雑したため。4粒のDNAを調べたが、組換えイネに導入された遺伝子は検出されていない。
・花粉飛散を調べるなら、遺伝子組換えイネの圃場を研究の端でなく真ん中に位置させるべきではないか→できる限り交雑する可能性のあるイネのないところに配置したため、ほ場の端になった。モニタリングのためのイネポットは組換えイネを栽培した圃場の周囲においている。うるちとの交配が見つかったのは、周囲に植えておいた非組換えイネとの交雑によるもので、遺伝子で確認済み。従って今回の交雑試験の設計は適切であったといえる。
除草剤耐性ダイズ及び害虫抵抗性トウモロコシの展示圃場の結果報告と18年度栽培計画について |
企画調整部遺伝子組換え研究推進室長 田部井豊
展示栽培の目的はみんなに見てもらうためで、除草剤耐性ダイズ、害虫抵抗性トウモロコシを栽培する。去年は、開花すると不安を感じる人がいるので、ダイズの開花まえに抜き取った。早く抜き取ると展示の役目をなさないので、4回種をまき、9月まで展示。殺虫剤はまかなかった。トウモロコシは除雄(トウモロコシの植物体の上に咲く雄花をとる)したが、それでも、外から来た非組換えトウモロコシの花粉により組換えトウモロコシに身ができる可能性があったので、袋に詰めて処分。
18年度は、除草剤耐性ダイズ(種が熟す前に取り除く)、害虫抵抗性トウモロコシ(開花前に除雄)を栽培予定。
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質疑応答 |
・展示栽培の目的は何か。どこの会社の種か。去年は開花前に切り取ったのに、今年は実まで実らせるのはなぜか。見学者はどのくらいで何を示せたか
→モンサント社。他社を使いたかったが、適当なのがなかった。メディアや500名の見学者は普通のダイズと変わらないですね、という声が多かった。そういう印象を持ってもらった上で話し合いの場をつくりたいと考えている。除草剤耐性効果を見せるような試験栽培は農業試験場ではやっていないので、展示栽培を行っている。来年は今年の様子を見て考えます
・見学者は500人の人は、なんだ普通のトウモロコシかと言って帰ったというが、自然は研究者が理路整然と考えるようにいっていないというのが、何度も見学に来た私の印象。切ったオバナの途中から穂が出ていた→とうもろこしの植物体では上に雄花がつき、その花粉が落ちて、下についた雌花がトウモロコシの食用部になります。出ていたのは雌花。他の質問は全体討論で答えます。
・主婦がきてはいけないのですか。誰のために説明会ですか。自然は理路整然といくものでないと感じたことをいいたいのです。
・展示栽培の目的は議論を深めるためだということだが、米国、カナダで除草剤耐性を持つ雑草がでてきたというような、デメリットの情報提供も行うのか→耐性を持つ雑草の情報は聞いたことはありますが、きちんとしたデータがないので、データがあればそれをもとに議論しましょう。
スギ花粉症緩和米平成17年度の隔離圃場試験の結果と平成18年度栽培計画について |
新生物資源創出研究グループ遺伝子操作研究チーム チーム長 高岩文雄
花粉症は国民病といわれているが、現在行われているのは対症療法ばかりで、根治治療への期待が高まっている。
キタアケ(イネの名前)にアレルギーの原因になるエピトープと呼ばれる部分を組み込んだ。
隔離圃場試験の目的は、環境影響評価と食品としての安全性評価試験に用いる材料確保。
圃場は一般農家と750メートル、試験場内のイネの圃場から46メートル離れている
収穫後、種子はラット、サル、マウスの試験に使用中。地上部は裁断して隔離圃場にすきこみ、地下部は腐敗させた。
交雑の調査は、モチ米ポットを花粉症緩和米の周りに同心円状において行ったが、交雑はなかった。
形態、花粉の形には非組み換えと同じで、種子特性(形、穂の数、一穂の粒の数)
土壌への有害物質産生について、土壌細菌を田植え前、出穂期、収穫後に調べ、アレロパシー物質(植物が他の植物・昆虫・微生物に阻害や促進などのなんらかの作用を及ぼす天然の化学物質を生産する現象。例えば、セイタカアワダチソウは自身や他の植物の種子の発芽を抑制する物質を出して新たな植物を侵入させない)も調べたが、キタアケ、花粉症米に差はない。
周辺植物への生長影響として、キタアケと緩和米の麦わらを混ぜた土に、レタスを植え、出芽状況を調べたが、有意差なし。
脱粒性、穂発芽、越冬性(刈り取り後のヒコバエのかれ方を調べる)、雑草性を調べたが、緩和米、キタアケで有意差なし。
飛んでくる昆虫の種類を8月から9月まで調べたが、有意差なし。
吸汁虫(クモヘリカメムシ)にイネの穂をすわせて生存率を調べたが、緩和米、キタアケで有意差なし。
18年度の計画
研究所内では33メートル、外の農家と750メートル離して栽培し、開花期を2週間ずれるようにする。防鳥網をかけ、もち米ポットによる交雑試験を行う。
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質疑応答 |
・今後、機能性を持つ米を作るのか→消費者にメリットがある遺伝子組換え作物を作りたい。糖尿病に効く米の研究をしている。
・米に着目した理由→腸管免疫が働き、寛容になる。生産コストが安く、貯蔵が容易。
・研究所の中で、人間の病気治癒力と食品でなおすことなどについての倫理的な問題の議論はしたか→実験をするときには、安全性を第一に考えている。商品化のときには倫理性も考えるが、現在は安全性と機能に注目している段階。しかし、倫理を無視しているわけでない。
・花粉症緩和米の効果は食べてからどのくらい続くのか→現在実験中
・私は生産者として食によるアレルギー改善を願っていた。3−4年内にマウス実験をしてできれば一般に普及すればいいと思っている→現在、努力中です。
・動物実験は何頭にどこでどの位の期間するのか→何頭やったから安全という問題でないと考えており、しっかり調べてから世に出したい。食品の安全性は雌雄のカニクイザル3対。食べさせる期間までは把握していない。サルは6ヶ月くらい食べさせるので、まだ結果が出ていない。この結果は、今秋までに出る予定。試験場所はいえないが、結果は論文として発表する予定。
・花粉症緩和米の研究には新規性があるといったが、新しいと実質同等の考え方が使えないので、安全性評価基準の見直しが必要なのではないか。それをしないで栽培試験を進めていいのか→新規性というのは健康機能性付与という意味。食品と医薬品の区別もまだ。基本の安全性試験を先にしてから食と医薬品の別を検討する予定。
・試験には花粉症のマウスを使っているのか→今回は安全性なので、普通のマウスに食べさせ予防効果をみている。
・花粉症のマウスに対する効果は→試験中
・花粉症緩和米を食べる人は花粉症患者だけか→予防的な効果があれば、普通の人も食べるかもしれない。
・展示栽培のトウモロコシに虫がついていたが、これは抵抗性を持つ虫ではないか。自然は、予想に反して変わるので心配です→ご意見として承ればいいのか。今まで農薬などと同じように、抵抗性を持つ虫はできうる。Bt抵抗性の虫が出て、繁殖しないように、米国では非組換えを栽培し、抵抗性を持たない虫も発生するようにし、交配により抵抗性を持たない虫を増やすなど、耐性昆虫が出ない工夫している。
→もし虫が見つかったら担当に知らせてください。
・農林水産省の方いうかがいたい。国として花粉症緩和米の研究を推進するというが、人体に影響する組換え技術に導入されてきているので、従来の実質的同等の評価ではないはず。東大医学部、慈恵医大の医者を含めた説明会をしてほしいといったが、それはできないということだった。説明会の環境影響を越えた検討会や説明会が開かれるべきだと考える→今日は栽培実験の説明会。それ以外の目的の説明会の必要性について、どういった形で進めていくかは、ここでは答えられないが、今後、考えていかなくてはならないものだと思う。
・農林水産省技術会事務局の方に出席してほしいとお願いした。動物実験が続いている状況の中で、所轄の官庁も含めた検討が進むと考えていいですね→実用化に向けて広く受け入れられたものとして進めていきたい。
・実用化前に食品としての試験が進んでいる。免疫系は複雑で判断が難しいというのに、試験をどこでやっているかも秘密という姿勢で開く説明会には問題がある。技術会議事務局も考えてほしい→ご意見賜りました。
→机上の空論になるので、サルの実験の論文が出た段階で、薬か食品か、どんな説明会をするかなどを考えたいと思っています。サルの実験結果によって中止する可能性もあるので。
→安全性確認が第一段階。議論の必要がある。承ります。
・17年度の実験結果の報告会では動物実験の結果、医学的な質問にも答えられるような会をしてくれるか→論文が学会誌にアクセプトされないと(審査に通過して掲載が認められる)オープンできない。そういう節目には報告と議論ができると思う。
・食品としての安全性試験の結果はいつ出るのか→今いっている結果とは、サルの結果までで、そこがスタートだと思っている。
・食品は食べて蓄積されるので、何世代か先のことを考えるべきだから結果がでるのは何百年先。この研究所には何百年先の問題や生物の持つ力を生かす研究をしてほしい→こどもへの影響は変異原性試験、生殖試験で調べる。私たちの研究所では遺伝資源評価や保管、イネなどのゲノム解析およびその機能の研究をしており、これは生物の持つ力の研究にあたる。遺伝子組換えはその一部。
・予防的効果のある食品であるということだったが、まだ薬かどうか決まっていないのではないか→治療に使える可能性もあるということ。
・モデルマウスとはどんなものか→卵白アレルギーを持つマウスで、試験で標準的につかわれているものを利用した。
・守秘義務とは何か→実験経過、実験場所は医薬品開発過程において結果が出るまでは公開しないという、試験を行っている機関と交わした契約内容のこと。
・国の研究なのに、守秘義務で公開できないのはおかしい→研究中は知的財産の問題、中立に試験を行うためなどの理由で、国の研究でも守秘義務はある。
・もち米に交雑が出たそうだが、そういうことは普通のイネの栽培でも起こっているのか→起こっている。今回は組換えイネの抗生物質マーカーを指標で調べたが、交雑した米からマーカーを出なかった。
・新聞では共同研究の大学名も入っていたが、メディアにはいえても市民説明会ではいえないのか→共同大学は東大、慈恵医大、島根大学。昨日のプレスリリースでは大学名は出していない。前回のプレスリリースで大学名を伝えた。このほかに全農、日本製紙も連携していることまでしかいえない。
・何匹でやっているかは教えてほしい→マウスは15頭ずつ、条件を変えて2群。ラットも15頭ずつ条件を変えて2群。サルは3対ずつ
・サルはどんな形で米を食べるのか→精米し、炊いて、パックしたものを使用している。カニクイザルの体重は3−5キロで、人間の2合相当に当たる量を与えている。試験的に炊いてパックして流通させる形を考え、現在もパックしたものをサルに多めを食べさせている。
・花粉症の効果はどうしてわかるか→今回のサルの試験では花粉症への効果はみず、食べて大丈夫かだけ。マウスでの効果は以前に調べた。
・隔離圃場内の不活性化処理と水の処理について→水田の浸透枡で地下に浸透させている。大水でもしも枡があふれたら、網をはって外に出ないようにする。去年の大雨では大丈夫だった。遺伝子組換え作物の不活性化とは、腐敗させたり、細かく裁断してすきこむという意味。
・展示栽培は除草剤や害虫被害への効果を見てもらうというが、普通の作物と変わらず安心させようという心理的戦略ではないか→そんなことはない。配布資料に書いてあるとおり、ジュラシックパークのようなイメージを持っている人にみてもらいたい、農家の人には除草剤や害虫被害への効果を見てもらって議論を始めたい。これはサイエンスコミュニケーションのひとつ。
・防除効果をみるためだけなら豆をつけないでもらいたい→開花前にすきこむと雑草も伸びていないので防除効果が見られない。種子が成熟する前には草丈が大きくなり雑草も生えるので、そこですきこむ予定。
・国民の遺伝子組換え作物の宣伝をして受容させるのもこの研究所の仕事のはず。農家が見てすぐ使えると思ってしまうかもしれない。搾油用ダイズのように日本で使えないものを見せて安心させるのは、きちんとした議論をしようとするならおかしい→搾油用のダイズは栽培しても豆腐などには確かに使えない。また、現在は地方自治体の規制もあってすぐには栽培できない状況。必要に応じて説明を加えていきたい。一方的に情報を与えるPA(パブリックアクセプタンス)ということばは使わず、サイエンスコミュニケーションの立場で実物を見せて議論を広めたい。これは、私ひとりの意向ではなく、研究所全体の意向です。
・私は生産者です。醤油、味噌に使うダイズは外国産だから、みんな組換え遺伝子を食べています。組換えを食べていないと思っている人は手をあげて下さい。私は自分の家で作ったダイズでみそと醤油も作るので、組換えは食べていない。
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隔離圃場の見学に参加した人たち |
隔離圃場は施錠され、人やものの出入りが厳しく管理される。使用する脱穀機なども隔離圃場内の倉庫に格納されている |
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隔離圃場を監視する設備 |
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試験圃場にはビデオカメラが設置され監視される。また赤外線報知器を設置予定。
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質疑応答 |
・研究所の中央にイネの栽培圃場を設置しないのはなぜか。悪い影響が他の試験作物に及ばないようにしているのではないか→他のイネとの隔離距離を30mとる必要があり、試験設計に影響を与える可能性があるため、中央に設置せずに土地の有効利用を図った。
・脱穀機は去年は非組換えと共有にしたのではなかったか→去年の春の指摘により、組換え専用の機器を昨年、購入し使用。今は、隔離圃場内の倉庫に格納してある。
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