情報の伝達では、F:ファクト(事実の整理)、T:タイミング(時宜)、S:ソフトウェア(わかりやすく上手に伝える方法)を選び、受け手の理解水準により情報の質と量を考慮しなくてはなりません。
納得の重要性:将来を選択するのは「普通の人たち」なので、知識を伝えるだけでなく、相手に納得してもらうことが大事な時代になりました。混乱を招くことを恐れて情報発信を制限すると事態は悪化します。
リスクの容認と意思決定:選択にかかわる重要な問題のひとつはリスクであり、リスクが容認できるものかどうかが重要です。自分も巻き込まれるものとして危機を感じ取る欧米人に比べ、日本人は社会的リスクがあっても自分には降りかからないと思いやすいようです。けれど、阪神大震災などからリスクの捉え方が変化してきて、意思決定過程に参加したいと思うようになっています。
危険は確率で話さないとコミュニケーションが成り立ちませんが、現代は因果関係が複雑ではっきり見えないことがよくあります。
バイオコミュニケーションでは、何がどこまでわかっているのか、をしっかり示さないと納得のあるコミュニケーションはできません。たとえば、抗がん剤の開発において、コミュニケーションに失敗するとよい薬の実用化の可能性が抹殺されてしまうこともあり得ます。
リスクの判断にはサイエンス、生物学だけでなく、ビジネスや国益も影響します。例えば、遺伝子組換え作物はビジネスと切り離して議論できません。
究極の目的は納得なので、色々な「普通の人」がいっぱい集まってよく考え、議論していくことが大事です。日本型のコミュニケーションがあるかもしれません。
日本の教育:日本の生物学教育はメンデルの法則で終わるなど、生徒に教える知識量が少なく不十分なところがあり、これではバイオコミュニケーションにおける納得まで届きません。日本の生物学の教育の問題は深刻です。
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