くらしとバイオプラザ21

くらしとバイオニュース

ホーム
What's New

くらしとバイオニュース

バイオイベント情報

やさしいバイオ

リンク集

バイオカフェ

くらしとバイオプラザ21とは


バイオカフェ(札幌)開催レポート

1月12日(木)札幌ビズカフェにおいて、北海道経済産業局、NPO法人サッポロ・ビズカフェ、NPO法人北海道バイオ産業振興協会との共催で、北海道で初めてのバイオカフェを開催しました。
URL サッポロ・ビズカフェ

札幌大谷大学の駒井さん、岡本さんのフルート二重奏(エルガーの愛の挨拶)で始まり、はじめのスピーカーはNPO法人くらしとバイオプラザ21外山博視さん。タイトルは「酵素の巧妙さ、すごさ」でした。酵素を知ってもらおうと、ホタルの光に関与する酵素ルシフェラーゼ(商品名:ホタライト キッコーマン(株))を使ったミニ実験をバイオカフェにとりいれてみました。
次に休憩をはさんでフルート二重奏(グリーンスリーブスなど)の後、二つ目のスピーチは長崎大学経済学部嶋野武志さん。「日本の政策の決め方(バイオ政策の場合)〜これを聞くと新聞がわかるようになる」
札幌駅から徒歩2分の会場には、親子での参加も含めて予想以上にたくさんの方が参加してくださったために「会場が狭い」といったご意見もありましたが、ミニ実験も含めて「二人の講師のお話や内容は分かりやすかった」、「参加者間の議論の盛り上がりがすばらしい!」といった声も聞かれ、札幌バイオカフェは大盛況でした。

北海道経済産業局 参加者のアンケート結果


音あわせから好評だったフルートの演奏 酵素には身近なところでお世話になっています



外山さんのお話

酵素とは
酵素は、@たんぱく質の1種でアミノ酸がつながったものである。A生き物が作る触媒である。B酵素の特徴として、()酵素と基質は鍵穴と鍵の関係にあり、これを基質特異性といいます。()酵素が最もよく働くpH(水溶液の性質を示す因子で、酸性・アルカリ性を表す)があり、至適pHという。()酵素が最も働く温度があり、これを至適温度という。C加熱や酸やアルカリで活性を失う。これを変性という。生き物は、生きていくのに必要なものを作る経路と、分解したりする経路(巧妙なネットワーク)を持って生命を維持しており、経路の全てに酵素が働いている。このネットワークはコンピューターのIC回路のようなものである。

ミニ実験
ホタルが光る仕組みは、ルシフェリンという物質(基質)に、ATPとルシフェラーゼ(酵素)を作用させると活性型のルシフェリンができ、これが酸素によって酸化されるときに光を発することによる。
ミニ実験では、真っ暗にした会場で、@ルシフェリンとATPを溶かした液とルシフェラーゼを溶かした溶液とを混ぜて、蛍の光を再現した。A @の光っている溶液を氷で冷やしていくと、光が鈍りはじめ、ついには光らなくなった。至適温度から外れていくのでこの現象が見られる。冷えた溶液を温めると光りはじめることを観察した。B光っている溶液に、食酢を入れると光らなくなった。至適pHを大きく外れたことによる。

酵素の応用例


  1. ルシフェラーゼは、結婚式の披露宴のイベント、また、まな板の微生物の検出試験検査などに使われている。1966年には、月に微生物がいるかを調査するときにも使われた。生き物は全てATPを持っており、ルシフェリンとルシフェラーゼがあれば光るという原理に基づく検査法である。
  2. 洗濯用洗剤には、弱アルカリ性のプロテアーゼ(蛋白分解酵素)やセルラーゼ(繊維分解酵素)やりパーゼ(脂肪分解酵素)が使われている。メーカーにより使われている酵素は異なる。外箱の表示を見ると酵素を使っているかどうかを知ることができる。
  3. 果糖は、ブドウ糖の3倍、砂糖の1.7倍の甘みを持ち、低温で甘みを強く感ずる糖である。グルコース(ブドウ糖)にグルコースイソメラーゼを働かせると、通常は、ブドウ糖(約55%)と果糖(45%)の混液ができる。1988年のJAS規格では、果糖が50%未満のものをブドウ糖果糖液糖、果糖が50%以上のものを果糖ブドウ糖液糖と規定。飲料の表示を見るとどのような糖が入っているかを知ることができると同時に酵素も身近に感じられる。
  4. チーズの製造には、酵素「キモシン」が使われている。従来は子牛の生後3-5週間の胃袋の粘膜を使っていたが、現在は、遺伝子組換え技術によるキモシンが使われている。他には、ムコール(カビの一種)から作られるムコールレンニンも使われている。
  5. 健康診断用酵素には、GOT(グルタミン酸-オキザロ酢酸・トランスアミラーゼ)、GPT(グルタミン酸-ピルビン酸・トランスアミラーゼ)、γ-GPT(γ-グルタミントランスペプチターゼ゙)などがある。医薬品としては、風邪薬にリゾチームが、胃腸薬に、セルラーゼやプロテアーゼやリパーゼが入っている。
  6. インフルエンザウイルスの表面には、酵素「ノイラミニダーゼ(NA)」とヘマグルチニン(HA)がある。NAは、細胞内で増殖したウイルスを細胞外に出す役割を持ち15種類の型があり、HAには9種類の型がある。インフルエンザに有効な薬である「タミフル」は、NAの合成を阻害し、ウイルスができなくする。インフルエンザウイルスの命名は、HAとNAの型の番号を使ってつけられる。1918年に流行したスペイン風邪と1977年のロシア風邪はH1N1、1957年のアジア風邪はH2N2、1968年の香港風邪はH3N2。ヒトに感染したトリインフルエンザウイルスはH5N1だった。


質疑応答
(・は参加者、→はスピーカー)

・酵素は微量しか生物体内で合成されないと思うが、ホタルの酵素を大量に集めるのはどうするのか→ホタルのルシフェラーゼ遺伝子を遺伝子組換え技術を使って大腸菌にいれ、この大腸菌を培養して作っています。
・洗剤には至適pHがあるが、食器洗い機では酢を使った料理をのせた食器も洗うと思う。そのときに至適pHは狂わないのか→洗い始めは、至適pHから外れるが、酢は水で流されるので洗浄には問題はないと思う。
・洗剤用酵素をつくるときに組換え技術は使われているのか→表示されていないのでわからないが、特許では、組換え技術を使った洗剤用酵素が掲載されている。
・合成ビタミンと天然ビタミンというどちらがいいのか→厚生労働省が認可したものが売られている。
・ミニトマト、サクランボを生産している。りんごには消化酵素があるというが、他に酵素を持つ作物はあるだろうか→りんごとキウイフルーツとを一緒におくとキウイフルーツが熟すが、これはりんごから発生するエチレンガスによる。
・大根おろしのジアスターゼは消化を助ける。
・トロピカルフルーツを入れるとゼリーが固まらないのも、果物に含まれる酵素の働き。
・私が作っているトマトには抗酸化酵素があり、血圧上昇抑制効果のあることがわかりました。ジュースにしたものやトマトそのものを使い、更に、試験中です→ビズカフェに今日集まった人たちの中で実用化されるかも----。
・大田胃酸は重曹で、胃の酸を中和している。消化剤の酵素が胃酸で変化することはないのか→錠剤やカプセルなどの剤型にして胃酸の影響をうけずに通過させる。
・イベントで使う蛍光グッズの蛍光物質は酵素か、生きているか→蛍光グッズは化学物質。
・化学反応と酵素反応の関係→化学反応は、一般的に、高温や高温・高圧条件であるが、酵素反応は、特殊な場合を除き、常温常圧条件である。
・酵素剤は時間がたつと効かなくなるのか→酸化されたり、水分を吸ったりして、酵素の働きが弱くなる。効かなくなる。ラベルに記載されている保管条件、使用期限を守って使うこと。
・バッファリンは劣化するとパッケージがふくらんで変性してしまう→化学的な分解が起きたためで酵素は関係していない。
・組換え食品の安全性では、光学異性体の生態系への影響までも調べて発表したほうがいい→わかっていることについては十分に説明することが大切で説明しきっていない点もあるかと思います。遺伝子組換え害虫抵抗性作物で作られるBtたんぱく質を例に説明するとアワノメイガなどの特定の害虫では、虫の消化液がアルカリ性で、完全に消化されず、腸管にある受容体と結合して、栄養吸収ができず餓死することになる。一方、ヒトを含めた哺乳動物は、消化液は酸性で、他のたんぱく質と同様にアミノ酸まで消化されて問題は起きない。
・遺伝子組換え酵素を使った洗剤が川や海に流されるのはどうか→海や川にいる微生物により分解される。
・洗剤の酵素やチーズの酵素では、微生物の作った酵素だけを使っていて、微生物が入っているわけではないので、微生物は川や海には持ち込まれない。
・国内産のチーズは1割。残りが輸入された組換え酵素を用いたチーズであることを知らないで食べているのが現実。過剰に意識しすぎではないか。もっと広報が必要→素直に書いて、素直に読み、意見をいうようにしたらいいと思います。
・モンサント社の作っているダイズやトウモロコシは組換え技術を用いているが、飼料として使われて、それから人が食べる順番。日本はまず人が食べる前提で検討している。
・北海道で遺伝子組換え技術への疑義が残るとバイオ産業もしぼんでしまうだろう→みんなでしっかり知って理解し、ユーザーが決めることが大事。


北海道初のバイオカフェは嬉しい満員御礼 質問に答える嶋野先生




嶋野さんのお話

日本の政策がきまるとき(バイオ政策の場合)〜これを聞くと新聞がわかるようになる
   長崎大学経済学部 嶋野武志さん

1.法律と省令・政令(政策を具体的に実施する手法)
法律は国会でつくり、政令は内閣(総理大臣と全閣僚)、省令は各省大臣がつくる。
法律と政令・省令は法令とよぶが、憲法は法令より一段上で、法ではあるが、法令ではない。
法律は国民の権利義務に影響を与えることを定める。政令・省令は専門家がより具体的に決める。例えば、納税義務に関することは法律でしか決められない

予算
政府や地方公共団体のような公的部門は税金を予算という形で配分していく
・一般会計 使い道を決めないで納められている税金 例えば法人税などを使う。
・特別会計 使い方が決まって納められている税金を使うことが多い。 
・財政投融資 財政投融資は、理財局が担当している。かつて財政投融資の行き先は特殊法人であったが、これは減りつつある。
国家の主権を持つ国民たるもの、どこでどんな税金を払っているのかを知っておくべき!

2. 政策決定プロセスの関係者(プレーヤー)
(1) 国会 
衆議院と参議院をあわせて国会という。衆議院と参議院は平等だが、内閣総理大臣指名や予算などでは衆議院の優越が認められている。
国会は唯一の立法機関→法律をつくる
(2) 内閣 
内閣総理大臣は国会で指名
米国の大統領選挙は形式は間接選挙だが、実際は直接選挙に近い。米国は議員内閣制のイギリスに迫害された(英国は米国から議会への代表参加を認めずに課税のみ行った)ので、議会独走を嫌って大統領制にした。米国大統領には法案提出権がない。
日本やイギリスは三権分立で、議員内閣制
日本の法律のかなりの部分は内閣から提案されている。
内閣は国会から委任を受けて行政を行い、国会が決めた法律や条約、予算を執行する執行機関
(3) 裁判所
日本の議会制はイギリスに学んだが、裁判は米国に近い。
米国の最高裁は連邦議会や連邦政府の行為を審査する。
最高裁判所と下級裁判所(地裁、高裁)は権限が異なる。
裁判官は選挙で選ばれていないことに注意が必要
日本も最高裁判所は違憲立法審査権を持っている(日本の裁判制度は米国に近い)
日本の裁判官は違憲立法審査権の使い方が消極的だと批判されたが、日本の裁判所でも人権に関わるところでは違憲判決を出している。
例1)同じ投票でも重みが1:2になるのは不平等
例2)尊属殺人罪を重くするのは許されるか。人間の命は親であってもなくても平等という違憲判決が出た。

3.縦割り行政について
各省の仕事は、国会が決めた○○省設置法で定められている。役人が勝手に決めているわけではない。
例)IT分野は経済産業省と総務省が関わっていて、重複するので無駄だといわれることがあるが、これは総務省設置法、経済産業省設置法の両方でITが扱われている結果
権限を整理する提案が出たときには、なぜ、そもそも権限が分けてあったのかを知り、考えてみるのがいいかもしれない。

4.政策決定プロセスの課題
IT革命の中で情報収集、情報整理が容易になり、いろいろな人が意見をいえるようになったが、パブリックコメントには感想文のようなコメントが多い。どこがどうおかしいというような、役人がたじたじするようなパブリックコメントを出すようになると、いろいろなことが変わると思う。これからは一般市民の出番。そもそも主権者は国民!
みんなで新聞をしっかり読んだり、情報収集して意見をいえるようになるといいと思っている。
納税者としては税金から給料をもらっている公務員、議員、裁判官にはしっかり働いてもらいたいと思うだろう。情報公開は大事だが、その後の議論が本当に大事で、そこを市民が監視する仕組み。教育が大事!


質疑応答
(・は参加者、→はスピーカー)

・国民・市民が勉強しなくてはいけないが、市民参加が突出して行政が市民におうかがいをたてすぎるような進め方は障害が出てきている。声の大きい人に行政がひきずられているのではないか。市民参加といっても官でできることはしてほしい→まず、税金から給料をもらっている人が責任を持って働くべき。
・エネルギー政策について感想を聞かせてほしい→とても難しい問題。中国のエネルギー消費は確実に増大している。石油代替エネルギーの導入を図りつつ、無駄なエネルギー消費削減を心がける。
・こどもにはクールビズは気休めだと教えていいのか→エネルギー問題は教科書になかなか書いてもらえなかったが、二酸化炭素削減の文脈で記述されるようになった。家庭でもエネルギー問題は取り上げてほしい。
・学校でディベートを教えている。原子力をよく扱うが、原子力は危ないと煽る記事が多い。政府が声をあげてもいいのではないか→議論の前提の情報が大事
・小さな政府を目指すと、官は不要で民で全てできるということか→なんでも民で、ということでなく、今の政府より小さな政府という意味。例えば安全規制は公的部門がすべきだが、公的セクターでなければできない仕事のみをしているかの見直しは必要ではないか。

当日は北海道大学サイエンスカフェを開催しておられる同大科学技術コミュニケーター養成ユニットの皆様も多く参加してくださいました。今後もみなさんと連携しながら、この続きのバイオ政策のことを考えたりする場ができたらいいですね、というお話になりました。(講師の嶋野先生もバイオに進む前に時間が来てしまい、反省しております)



copyright © 2006 Life Bio Plaza 21 all rights reserved.
アンケート投票 ご意見・お問い合せ