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セミナー報告「GM/バイオ作物の商業栽培
の現状と将来展望を含めた10年の歩み」

12月2日、(社)日本記者クラブにおいて、バイテク情報普及会主催により、標記セミナーが開かれました。講師は国際アグリバイオ事業団(ISAAA)会長 クライブ・ジェームズ氏(ISAAA:The International Service for the Acquisition of Agri-biotech Applications)でした。



ジェームズ氏の講演主な内容

1.ISAAAとは
クライブ・ジェームズ博士は、1990年、発展途上国の飢餓と貧困の軽減を使命とし、発展途上地域の資源の乏しい農業者のために先進国の農業バイオテクノロジーの技術や技術供与を促進する目的で、非営利公益法人ISAAAを設立。フィリピン、ケニア、米国他多数の国にまたがる国際的ネットワークを持ち、遺伝子組換え作物(GM)関係では、GMが初めて商業化された1996年以降、GM作物の世界的状況、ならびに世界の食糧、飼料、繊維の安定確保に対する遺伝子組み換え作物の貢献に関して、年次報告や各種作物の国々での栽培状況の詳細などを刊行している。2005年度の実績については、2006年1月12日に公表される予定。(※)

講演するISAAA会長 クライブ・ジェームズ氏

2.GM作物の社会的受容に関する課題
@食品安全性(表示とトレーサビリティ)、A環境影響(遺伝子拡散-生物多様性の保全―共存、非標的生物への影響、Bt抵抗性の持続性)、B貿易関連の問題、CGM技術へのアクセスの制限ならびに管理(民間セクターの役割、知的財産権)、D倫理的配慮

3.貧困と飢餓の現状
世界で、1日100円以下の所得で貧困に苦しむ人が13億人、飢餓に苦しむ人が8億5,000万人、栄養失調による死亡者(大半は子供)は、1日に24,000人となっている。2050年には、人口は、2000年に比べ30億人の増で90億人となり、食料や飼料は持続可能な農業システムで同じ土地面積で作物生産量を2倍にする課題がある。貧困と飢餓に悩まされている人たちの大半は,アジアの農業従事者であり、それを軽減する解決策のひとつとして、GM作物の生産がある。

4.バイオ作物の1996年から2004年での成果
1)収量は5%〜40%増加し、270億ドルの農業所得利益があった。
2)農薬の使用の低減で17万2千トンa.i(有効成分)を節減した。
3)社会的利益として貧困の軽減、環境と健康の改善があった。
  750万人の農業者を貧困から解放した。
        
5.2004年では、途上国の方が先進国よりも栽培面積の伸び率が高い
2004年では、バイオ作物栽培国は17ヶ国、バイオ作物栽培農業者数は、825万人、バイオ作物栽培面積は、8100万ヘクタール(ha)となった。
1)バイオ作物の栽培国数は、途上国が11カ国で、先進国(6カ国)の2倍となっている。
2)バイオ作物の栽培面積の伸び率は、先進国が610万ha(13%の)増加であったのに対して、途上国は720万ha(35%)の増加であった。
3)途上国におけるバイオ作物栽培主要5カ国は、中国、インド、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカである。5カ国の合計人口は26億人(世界人口の40%)、バイオ作物の栽培面積は、2600万haで世界の総バイオ作物栽培面積の1/3に相当する。中国が牽引している。

6.バイオ作物栽培主要国途上5カ国の動向
1)中国:2004年小規模農業者700万人がBtワタの恩恵を受けている。作物バイオテクノロジーのPhD(博士)は2000人を集めており、GM作物の研究、生産がすすむものと思われる。2010年までには、組み換えイネ(近い将来承認される)とワタから50億ドルの利益が予測される。
2)インド:2002年にBtワタの栽培をはじめ、2004年には50万haに達した。15品目が研究開発段階にある。
3)アルゼンチン:世界第2位のバイオ作物栽培国で、2004年では、世界の栽培面積の20%を占めた。組換え大豆・トウモロコシ・ワタで年間約20億ドルの利益があった。
4)ブラジル:2003年に除草剤耐性大豆が認可され、2004年には500万haが栽培された。組換え大豆・トウモロコシ・ワタで年間約10億ドルの潜在的利益があった。組換え大豆は数年後に第1位になる見込み。
5)南アフリカ:アフリカのバイオ生産国で、2004年には、組換えトウモロコシ・ホワイトコーン(食料)・イエローコーン(飼料)・ワタが栽培された。

7.今後に向けて
1)ISAAAは報告書を発行しており、2003年版の報告書は、22カ国に配布、メディア関連の記事は1000以上になり、1億6500万人に提供した。透明性のある情報を渡すことが大切である。更に多くの国に情報発信を進めていく。
2)バイオ作物の生産により貧困と飢餓の軽減を目的に、社会とのコミュニケーションの改善を進め、バイオに関する知識(ナリッジ)に基づく判断をするとともに、透明性のある情報を発信し、知識と経験を共有していきたい。アジアにおいても積極的に進めたいので日本がリーダーシップをとってほしい。


1月12日、ISAAAから2005年に商業栽培された遺伝子組換え作物に関する報告書ISAAA briefs 34-2005が発表されました。2005年の栽培国は21カ国(2004年より4カ国増加)となり、栽培面積は9000万ヘクタールとなり、1996年の商業化当初の50倍以上になりました。新たに栽培国となったイランは遺伝子組換えイネの商業化に着手するということで注目されています。  http://www.isaaa.org/


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