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バイオカフェ(銀座トリコロール)開催報告
「くすりの飲み方・つき合い方」

11月19日(土)銀座トリコロールにおいてバイオカフェが開かれました。お話はくらしとバイプラザ21の真山武志さんによる「くすりの飲み方・つきあい方」でした。はじまりは今村さんのバイオリンと寺井さんのチェロの演奏。今回は製薬会社の滋養強壮のドリンク剤などのコマーシャルから、「四季・春」(ビバルディ)など2曲が演奏されました。「茶のコマーシャルもバックに流れる音楽は、ともに元気が出たり、さわやかになったり、リズムが共通している」という今村さんの分析が紹介されました。


くすりのコーマーシャルにはくすりの効果が
伝わるような曲が選ばれている?!
 血中濃度とくすりの効果は山形のグラフになる


真山さんのお話の主な内容

薬の飲み方
薬は、コップ1杯の水で飲みましょう。
血圧の薬をグレープフルーツジュースで飲むと効きすぎます。牛乳は薬の吸収を遅らせます。制酸剤を牛乳で飲むと、血液がアルカリ性になってカルシウムが排泄できず高カルシウム血症になります。お茶のタンニンが鉄と結合すると鉄剤が吸収されず効かなくなります。グレープフルーツジュースがだめでも、果物そのものは降圧剤に影響したりしません。

薬の飲む量と血中濃度
薬を飲むと血液中の薬の濃度が変わります。血中濃度の高さによって、薬の効果が出ない無効量域、効果が現れる作用量域、多すぎて副作用が出る中毒量域という関係があります。

肝臓と薬
薬物は肝臓で代謝分解されていろいろな形に変えられます。個人によって肝臓の酵素が少し異なるので、薬の効き方も違い、これは個人の遺伝子によるものです。
狭心症の患者さんの使うニトログリセリンは舌下錠といって水で飲むと効きません。水で飲むと、胃腸で吸収され静脈に運ばれ、肝臓を通って分解されてしまうからです。坐薬、舌下錠は肝臓の酵素によって分解されないように作られています。

食べ物との関係
骨ソソウ症の薬は食べ物と結合して水に溶けない物になるので、空腹時に飲みます。
食間というのは食事と食事の間の空腹時のことで、食べながらではありません。
ワーファリンのような血液の凝固を抑える薬を服用している狭心症の患者さんが納豆を食べてはいけないのは、ビタミンK(血液をかためる効果がある)をつくる納豆菌が生きていて、薬の効果をなくしてしまうからです。

副作用 
主作用に対しておこるものが副作用。都合が悪い現象を副作用と定義しているわけではありません。副作用で毛深くなる薬が発毛剤として開発されたこともあります。アスピリンの副作用の中に、血液凝固を抑える働きがあるので、アスピリンを飲んでいると鼻血がでやすかったり、打撲のあざがひどくなったりしますが、血液の凝固を抑える薬として利用されています。

薬の反対読みはリスク
薬にはリスクがつきもの。リスクは危険性の発生する確率を加味して考えたものです。薬にも食物にもリスクはあります。高濃度の食塩は危険ですし、エビ、カニ、そばはアレルギーのヒトには危険な食物です。
間質性肺炎を起こす副作用がある漢方薬がありましたが、これも息切れという症状に早く気づいて治療すればなおります。
抗ヒスタミン剤は風邪薬に入っており、眠気という副作用がありますが、副作用とうまくつきあい、風邪薬で眠くなったら、早く寝てしまうのも上手なつき合い方です。
薬による死亡者がでると、大きく新聞にとりあげられます。年間30万人の通風患者に処方される薬で4年間に6人の死亡者がでました。患者さんの苦しみを考えると、4年で30万分の6という数字は高いとはいえないのではないでしょうか。交通事故死の発生率よりかなり低いです。母数のことを考えなくてはいけません。副作用が気になったら、医者に相談するよう心がけること、医者や薬剤師とコミュニケーションをよくとれるようにしておくことも大事です。

薬の役目と効き方
鎮痛剤は痛みという症状をとる薬。一方、抗生物質は感染症を起こす菌を殺します(病気の根源をなおす)。高脂血症そのものは死に至らないので、コレステロールを下げる薬は延命のための薬といえます。つまりコレルテロールが高いという症状をとる薬です。
昔は、胃潰瘍は胃を切除し半年、寝なくてはなりませんでした。今は薬で治せるようになりました。働き盛りの人が入院せず働くことができ、入院費がいらず、経済効果が大きい例です。

リスクとベネフィット
薬はリスクとベネフィットのバランスで成り立っています。
抗がん剤は全身倦怠、血液障害、脱毛という副作用が深刻ですが、ガンが治るならばリスクも仕方ないということになります。
サリドマイドは40年前くらいに不眠症の人などが飲んで、リスクが大きく、消えた薬ですが、現在は多発性骨髄腫の患者にとって欠かせない薬になりました。イギリスでは使われていますが、日本ではまだです。副作用は厳しいが多発性骨髄腫の人のための薬としてよみがえってきています。管理をきちんと行うことが大事
自動車や飛行機の事故で死者がでても、使い続けられているのは、リスクよりベネフィットが大きいことを示した例です。

健康食品と薬
健康食品と薬の問い合わせをよく受けます。
ワーファリンを飲んでいる人が認知症に効くと言われるイチョウ葉のエキスを飲むと、ワーファリンの作用を増強します。健康食品と薬は一緒に飲むことが多いので特に注意が必要。
特定保健用食品、栄養機能食品は、国が効果を認めたもので効果、含量、用途がわかっていますが、サプリなどは国が認めていないので、気をつけて利用することを薦めます。健康食品を一度でも飲んだことがある都民は85%だそうで、関心が高いことがわかりますが、効能がどこまで明らかか難しいところがあります。健康のために、利用するときは情報を理解して、薬との相性、リスクとベネフィットを考えてください。


挿絵を描かれた安達さん 会場風景


安達さんのお話

今回のお話は、真山さんが毎日新聞に掲載された「服用するまえに〜薬の基礎知識」(全13回)をもとにしたもの。その挿絵を描かれた安達さんから製作秘話をうかがいました。
「本文を助け、読み慣れていない人の助けになるようにと心がけて描きました。肝臓の分解酵素は映画のエイリアンからヒントを得たり、血中濃度に届かない状態はとびあがっても鉄棒に届かない錠剤くんの絵にしました。副作用があることイコール悪い薬だと報道されると、それで助かる患者さんもは救われなくなってしますので、作る会社、使う医者の管理責任をしっかりしてほしいと思います。全国紙掲載の機会だったので、実は登場人物に、家族や同僚の似顔絵も入れてしまいました」



質疑応答
(○は参加者、→はスピーカー)

○日本では、風評にならないように考えるのは難しいのか。海外では販売が中止された薬がよみがえることがあるそうだが。→風評被害は当事者にはダメージが大きい。カイワレダイコンがO157の風評被害が出たことがある。風評被害にはマスメディアの影響が大きい。マスメディアの報道の本当の意味を理解するのは難しい。
○私は新聞を信用しない。
○目をひくキャッチコピーだと、母数はわからないことが多く、問題の大きさがわからない記事が多い。タミフルはウィルスに効く画期的な薬。効いて助けられている人は多いはず。一方、こんなに効きましたという広告も何人がためしているのかわからない。キノコ由来のガンの薬の会社があり、広告が怪しいと思っていたら、つぶれてしまった。
○健康食品では錠剤の中の成分量を表示されていないことが問題になっている。効かない量しか入っていなくても、表示している。飲まないより気持ち的にいいという程度か。特定医療食品の認定されているものも、効かないという研究データが出ているものもある。
○病気をしない人はどうやって主治医を探すのか→近所にかかりつけ医者、薬局を持つ。自分の体質を理解していることが薬剤投与には大事。話しやすい、行きやすい医者を選んでいくようにしておく。薬暦をつかんでおきコミュニケーションをとるのも大切
○薬局を一箇所にすると、いろいろな病院に行っても飲む薬を薬局で判断してくれる。
○抗生物質が出た時、効きすぎると思い自分で減らす→効いた気になっているのでは
○睡眠薬も4分の1で効く人がいるそうだ→気のせいではないか。鎮痛剤にはプラセボ(偽薬)効果が大きいといわれている。血中濃度から考えると4分の1で効くのはおかしい。
○抗生物質は一定量で菌を殺せるが、中途半端な量だと抗生物質に強い菌を作ってしまう恐れがあるので、きちんと飲んでほしいと思う。私は、抗生物質を飲み切っていい菌、悪い菌を殺した後、ヨーグルトでよい菌をふやすことを勧めている。
○抗生物質を飲みきらないことは手負いの熊を逃がすということになる。抗生物質の投与は前より減っている→薬は必要量を飲むことが大事、不必要に多く薬を出す医者はだめ。
○最近は抗生物質を出す時期を選んでいるような感じを受ける。
○行く医者ごとに薬がどんどん出る→同じ病院で連絡ができていないと心配
○アメリカはホームドクターと専門病院の役割分担が分かれている。緊急病院は痛みがおさまるとホームドクターにさしもどされた。日本人は近所の医者を信用しないで、大病院に行きたがる。
○日本人には効きすぎるので分量を減らしたと駐在している人に聞いたが→カナダ人、アメリカ人は日本人の1.5倍くらい大きいので、血液量も1・5倍になるので、血中濃度も中毒域に入ってしまう。

○酒で薬を飲むと効くという人がいる→酒と薬の関係は最悪。健康日本21(厚生労働省)は飲んでもいい純アルコール量として20ミリグラム(お酒なら1合)としている。よく効きすぎることもある。肝臓の酵素が強すぎて、薬を分解して効かなくなることもある。
アルコールを飲むと肝臓に負担がかかりすぎるのか。→はい。
○若い人で抗がん剤が効かないといわれて手術のみという話を聞いた。
○乳がんのように女性だけの病気でホルモンに関係しているものがある。抗がん剤よりホルモンバランスを調整する治療もある→乳がんの原因はホルモンバランスのくずれによることが多い。抗がん剤を使えない理由はひとつでないと予想されるが、副作用が出すぎることも考慮されているはず。
○抗がん剤の効き方は血液検査でわかるのか→遺伝子解析から解明されるかもしれない
○乳がんは難しい→男性にも5%はある。男性だけの病気では前立腺がんがある。
○脳溢血は早朝が多いので、その時間にあわせて薬を飲むといいと聞いたが→病気に対し薬の飲み方が決まっていない。心筋梗塞、脳梗塞はよく朝に起こるが、研究中のはず。
○昼間は細胞が活発なので、抗がん剤は夜、投与すると聞いた。日本では看護師は夜、働かないので、そういうことができない。
○自動車も原子力もリスクとベネフィットを比べている、ガンのときはリスクが大きく両者が見えるが、インフルエンザはリスクベネフィットが見えにくいので選びにくいと思う。
○日本はいろんな権威が崩壊している、新聞記事の捏造もあるらしい、霞ヶ関も怪しい、点数稼ぎで薬を出しすぎる医者がいるそうだ。権威が崩壊しているとき、リスクベネフィットは見極めにくい。情報収集より、情報選択の問題だと思う。
○製薬会社が医者向けに書く注意書きはあっても、患者向けの注意書きはまだ整備されていない。これは行政や会社がしないといけないと思う→情報過多の時代、情報選択の上手な人が長生きできる。薬の適正使用協議会のホームページの薬のしおりでは、わかりやすい情報提供をしている。
http://www.rad-ar.or.jp/siori/
○常に批判的に新聞を読む姿勢が大事。活字になっているものは正しいという前提はだめ。
○記者の立場からいうと、「〜のようだ」、「〜と思われる」という記事では、当事者に確認していない。「△日に明らかになった」という記事は内部から聞いたもので記者会見はしていないと考えてよい。




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