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シンポジウム「遺伝子時代の「医食同源」
〜ニュートリゲノミクス」開かれる

11月29日日本プレスセンターホールで東京テクノ・フォーラム21、読売新聞の主催で行われました。3人の専門家がそれぞれの分野で講演をされたその後、演者相互の質疑がありました。高齢化社会を迎え、生活習慣病を予防するため機能性食品が注目され多くの方々が利用しているが、その機能性食品の全体像、効く理由をDNAレベルで調べる「ニュートリゲノミクス」などを理解するのによい機会となりました。


荒井綜一氏(東京農業大学応用生物科学部教授)のお話

「機能性食品とニュートリゲノミクスへの道」

機能性食品は1993年NATURE誌に日本の文部省研究班が世界に発信した。今や欧米では本家の日本を凌ぐ勢いとなっている。広い意味での健康食品には効く理由が分からないものがある。機能性食品はその理由が分かっているもので、欧米ではヒトゲノム解読完了後そのゲノムを利用してなぜ効くのか研究する「ニュートリゲノミクス」と言うゲノム科学が盛んである。日本はこれを激しく追いかけている。
生活習慣病などのリスクを低減するのが機能性食品で、厚生労働省が審査し許可している特定保健用食品がこれに当たる。最初の特定保健用食品は我々が研究したもので、米アレルギーにならないFine Riceである。酵素処理して低アレルゲンとした。
この分野で急がれることは物質科学、生体科学、疫学、そしてニュートリゲノミクスを学術体系へ構築し新しい網羅的な機能性食品科学への発展させることである。




阿部啓子氏(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)のお話

「ニュートリゲノミクスノ現況と近未来」
機能性食品の基礎研究は生理機能効果の解明であり更に安全性の事前予測、標的機能・生体応答マーカーの解明、機能性食品の開発(スクリーニング)である。この研究に手法として注目されるのがニュートリゲノミクスである。Nutrition(栄養)+Genomics(遺伝学)である。機能性食品の効果を遺伝子情報を利用して測定しようとする。世界で最初のニュートリゲノミクスの研究発表は「カロリー制限によってる老化を遅らせる」研究であった。老化に係わる各種遺伝子の変化を抑えることで説明できた。
わが国では東京大学大学院農学生命科学研究科に31の食品会社が共同出資で2003年12月、寄付講座「機能性食品ゲノミクス」を開設した。幾つか研究を紹介する。
大豆タンパク:対照にカゼインタンパクでネズミに8週投与すると中性脂肪(トリグリセライド)、コレステロールがを下がり、げた。遺伝子解析で証明された。
ココア:中性脂肪(トリグリセライド)が下がった。遺伝子解析では直接に中性脂肪を下げるのではなく中性脂肪の蓄積を抑えると予測している。従って、抗肥満となる。
フラクトオリゴ:免疫賦活作用があった。腸内細菌叢の変化が腸内免疫系を活性化した。
低アレルゲン化小麦:生体にとって不利な遺伝子の上昇がなかった。
食は味覚が大切で匂い味が健康にどのように影響するかニュートリゲノミクスで近い将来に解明されるであろう。




吉川敏一氏(京都府立医科大学附属病院内科主任診療部長)のお話

「予防医学における機能性食品の役割」

今、なぜ生活習慣病なのかである(成人病から言い換えられた)。そのれは一つには日本人の食生活の変化である。食事全体を100として摂取量を1955年と2000年を比較すると、脂肪は8→28.5 タンパクは78.0→87.6と増えている。死亡率の上位はがん、心疾患、脳血管疾患である。心疾患、脳血管疾患は生活習慣病の糖尿病と深く関係する。また、野菜の副成分を1955年と2000年を比較すると、ニンジンのビタミンAは100→7、セロリのビタミンCは100→23と減っている。他にもタマネギ、アスパラもそれぞれカルシュウム、
ビタミンB2が減っている。日本人は野菜をもともと余り摂らないが、こうなると摂ってもだめである。
私は活性酸素を研究しているが、抗酸化ビタミンのEとCの協同作用でがん予防などが検証されてきた。ニンニク、ホウレン草などが大切である。また、最近ではがん予防などのための食品の種類・構成をデザインしたデザイナーフーヅが提案されている。




全体討論

コーディネーター:井川陽次郎氏(読売新聞東京本社論説委員)がコーディネーターで討論が行われた。

Q:まがい物も出回っているようであるが、何が機能性食品か? A:荒井先生
 端的に言うと機能性食品は特定保健用食品である。これは国が審査し許可したものである。ただがん予防のような免疫増強は特定保健食品の範囲に入っていないが機能性食品ではある。
A: 阿部先生
 公表されたデータがあること。科学的なエビデンスがあることです。これには大学に責任がある。研究を進めなければならない。
A: 吉川先生
 昔からよいと言われているもの、理由の分かっているものがお勧めである。抗酸化のようにバイオマーカーが分かっていないものは特定保健用食品にはならない。
Q:今後の機能性食品研究の広がりは?
A:阿部先生
 大豆中のイソフラボンはよい。イソフラボンの入った大豆がよい。このように効果を純化する方向と逆の方向がある。尿とか汗で簡易な方法でバイオマーカーを捕まえるようになり遺伝子チップで解析できるようになるであろう。QOLと食品の係わりが分かってくる。ニュートリゲミクスが手法として可能である。
 A:荒井先生
 食品は多成分で機能性食品も多成分で多機能である。これらを22000の遺伝子を使って網羅的にニュートリゲミクスを学問体系化をしなければならない。
A: 吉川先生
 アルコールに代表されるように個人個人で効き方が異なる。個々人向けの機能性食品が出来る様になるであろう。アンチエイジングドックのように老化予防の機能性食品の研究が進む。
Q:どうやってよいものを選べばよいか?
A:吉川先生
 実践的なこととしてはいろいろな機会を利用して勉強し、自分で調べることである。
A: 荒井先生
 特定保健用食品のように膨大な資料があるもの。公表された文献があるもの。自分で調べられないときは管理栄養士さんの力を借りる。
A: 阿部先生
 しっかりした資料のあるものならメーカーに要求すればデータは送ってくる。そうでないものは止めたほうがよい。


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