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花粉症緩和米の収穫マスコミ見学会開かれる

9月14日(水)(独)農業生物資源研究所において花粉症緩和米の収穫マスコミ見学会が開かれました。同研究所ではスギ花粉症の症状を普通の食事によって軽減できるような「花粉症緩和米」を遺伝子組換え技術を用いて開発しており、今年度は隔離圃場(8アール)において栽培試験を行いました。この栽培試験はカルタヘナ法に基づき農林水産大臣及び環境大臣の認可を受け、さらに第1種使用規定承認組換え作物栽培実験指針」に従って行われました。

田植え見学会のくらしとバイオニュース:https://www.life-bio.or.jp/topics/topics145.html
関連指針:第1種使用規定承認組換え作物栽培実験指針 http://www.s.affrc.go.jp/docs/genome/saibaikentoukai/jikkensisin/sisin.pdf

初めに説明会で生育の経過が報告され、質疑応答後、マイクロバスで隔離圃場に行き、収穫作業を見学しました。 プレスの参加は10数名(新聞8社、テレビ1社)でした。収穫量は栽培面積とキタアケという品種から推定して300Kg。一般向けには、調査・分析が終わったところで説明会を開く予定とのこと。


説明会 隔離圃場入り口で靴の履き替え等、注意事項の確認


配布資料に示されたQ&A

  • 食品としての安全性は?→食品安全委員会で評価する。
  • 花粉症緩和米の花粉が飛散、交雑し、食べたくない人が食べることにならないか→第1種使用規定承認組換え作物栽培実験指針では20m(本年度は暫定的に26m)隔離すれば交雑しないとされているが、より慎重に栽培する予定。
  • 流通過程における混入の懸念はないか→花粉症緩和米が商品化されるときには、高付加価値を持つ米になり、品質保持、知的財産の保全などの関係からも一般の米と厳密に区別する条件下で流通することになると考えられる。
  • 花粉症緩和米には抗生物質耐性遺伝子が導入されているのか→本栽培試験で用いられた米はハイグロマイシン耐性の遺伝子が指標として導入されているが、商品化する場合には抗生物質耐性遺伝子は除いたものにする。



    経緯

    本圃場に関する収穫までの流れは以下のとおり
    4月23日 一般説明会開催
    6月8日 田植え見学会開催
    7月下旬 出穂
    7月下旬〜8月上旬 開花
    9月14日 収穫


    角は手で刈る 機械は2列ずつ刈り取り、
    束ねて脇に置いて進む
    環境評価に用いる米はすでに刈り
    取り済み


    試験の目的

    生物多様性影響調査と動物実験に使用する種子を確保すること
    (1)生物多様性影響調査で評価する主な項目
    ・形態について(草丈、穂の長さ、穂数、種子の大きさ、花粉の形態)
    ・生育特性(出穂、成熟などの時期、発芽率等)
    ・花粉症飛散(花粉症緩和米と元の品種(キタアケ)の花粉の飛び方の比較)
    ・吸汁昆虫への影響(花粉症緩和米とキタアケの籾をクモヘリカメムシに吸汁させた時の生存率を調査)
    ・土壌の生物相への影響(土壌細菌、カビなどの総数を比較する)
    穂の数などが直接、生物多様性に影響を及ぼすとは考えられないが、組換え遺伝子を使ったことによる予期せぬ現象が起こっていないかを調べるために、さまざまな形質について幅広い調査を行うため、上記のように多数の評価項目について調査することになる。

    (2)動物実験で評価する主な項目
    花粉症緩和米の食品として安全性を調べ、それから花粉症を緩和できるかどうかについて調査する。



    今後の予定

    平成18年度は、隔離圃場で花粉症緩和米イネを栽培し、動物実験用の米を確保する予定。
    動物実験から人間が食べるようになるにはまだ安全性評価などのプロセスがあり、慎重に進めていきたい。



    質疑応答(説明会において

    1.研究開始はいつから→ミレニアムプロジェクトとして2000年から
    2.一般向けに分析結果を説明する会の開催時期は→生物多様性については来年2月(刈り取った後のヒコバエの越冬性を調べる項目も含まれるので)まで評価にかかるので、2月以降に開催の予定。
    3.カニクイザルを使って動物実験を行うのですね。→カクニイザルは長期毒性試験を行うとき6ヶ月間、試験するものを食べさせるのに、よく用いられる種類のサルで、花粉症の有効性もカニクイザルで調べる。
    4.花粉症への有効性は→実験に適している系統のマウスを用いて調べる。エピトープ(アレルギーを起こす部位)を食べさせて効果があることはマウスでわかっている
    5.実験・試験の順序は→特定のマウスにエピトープを食べさせたのが1年前(論文は米国の雑誌にのる)。来年度、カニクイザルに食べさせて安全かどうかをチェックする。食品としての安全性がわかった段階で、医療機関と協議して、ヒトへの有効性を調べる試験に進める。最短だと来年の12月ころから1ヶ月ヒトに食べてもらって安全性、有効性を調べられたらと考えている。
    6.300kgの花粉症緩和米の用途は→カニクイザルが6ヶ月食べるのが大部分。マウスの実験用、来年にまく種子、生物多様性実験に用いる分として一部はすでに刈り取り済み。
    7.消費者の見学の状況はどのくらいあったか。その時の感想は→数百人が見学した。田植えでは反対の声があがったが、見学者の多くは研究成果に期待しているという感想や意見だった。マーケティング調査によると、花粉症緩和米の研究は進めてほしいという意見があった。
    8.収穫量300Kg(玄米の重さ)は従来のキタアケより多いのか少ないのか→特定網室などのおける今までの観察結果から判断して、収量においてキタアケとの間に違いはないと思われる
    9.サルの一日の摂取量は→ヒトの体重換算で、1日3食与える
    10.商品化するときは抗生物質マーカーは除くというが→マーカーフリーの品種(ニホンバレ)はすでにできている。隔離圃場で栽培するのは19年度になる。マーカーフリーの品種のエピトープの実験は行っている。キタアケはエピトープがうまく入ったので、ハイグロマイシン(ヒトの感染症には使われていない抗生物質)耐性のマーカー遺伝子を用いて栽培試験を行った。


    様々角度から写真をとる報道陣 組換え籾を持ち出さないように
    長靴を洗う
    ホームに入ってきたつくば
    エクスプレス (秋葉原駅)


    収穫作業

    圃場に入るときは長靴を着用し、出るときは長靴を洗って、自分の靴に履き替えます。籾が外に運び出されることがないようにするためです。機械が入らない角の部分は、手で刈り取ります。機械は2列ずつ刈り取って紐で束ねて、脇に出していきます。
    刈り取った稲は隔離圃場から出せないので、「はせ」という稲の束を干すものを、隔離圃場内に刈り取った後に設けて干すそうです。


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