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中学校で遺伝子組換え実験を行うまでの足取り

新津市小合中学校での遺伝子組換え実験の追加レポート
〜真摯な取り組みと入念な準備〜
 新津市で行われた日本で初めてという中学校での遺伝子組換え実験(前回のレポートのURLまたはリンク)には、多くの関係者の「思い」がありました。体験後に「面白かった」「楽しかった」と言ってもらいたい大人たちの「思い」を加えてご報告します。

これまでの各中学校の実施状況
中学校名 実施日 3年生の在籍人数
小合中学校  9月30日、10月1-2日 41名 
第一中学校  11月14日、27-28日 249名 
第ニ中学校  10月8-10日 160名 
第五中学校  10月4日、11月7-8日 143名 
金津中学校  10月21日、11月6-7日 81名 
新関中学校  10月16-18日 31名 

新津市議会の取り組み
 「日常生活に遺伝子組換え技術が身近なものになってきており、文科・理科系志向ともに常識として遺伝子組換えについて知識を得ることは有意義である。」という考えから、平成14年度の新津市の予算の中に市立中学校の発展学習に遺伝子組換え実験を取り入れるための予算3,988,000円が盛り込まれました。
 この背景には、今年1月理科離れを防ぐことも含めて、文部科学省が簡単な遺伝子組換え実験を中高の授業で行えるような統一指針をまとめたことがあります。

 組換えDNA実験指針の改訂

 今までにも理科教師を対象としたこのような体験研修は、学会やバイオ関連団体、大学などで行われてきましたが、公立中学校の授業で、理科担当教諭によって行われたのは今回が初めてです。

教育委員会と校長会の連携
 体験学習の実施が決まり、教育委員会と6中学校長会の連携が始まりました。校長会のまとめ役や教育委員会担当者が理系であったことも幸いしました。入念な打ち合わせを繰り返しながら、6月には現場の理科担当者が集まり、クリアしなくてはならない問題の抽出、不安材料の整理、丁寧な討論が続き、7月には先生方のために研修会が行われました。

教師のための研修会の実施
 7月29-31日の暑い3日間、窓を閉め切った小合中学校理科室において、教員対象の組換えDNA実験講習会が、生徒が使うのと同じ実験セットを使って行われました。  この講習会には、各中学校の理科担当者、小合中学校の校長先生、教育委員会担当者が参加しました。  2日目には東京大学大学院農学生命科学研究科中島春紫助教授(1999〜2001年まで文部科学省学術調査官を併任し、指針改訂の実務に直接関わられた。)による「組換えDNA実験指針」に関する講義も行われました。

教える現場での努力
(1) 参加生徒の選抜

 新津市の中学3年生は705名、今回の実験に参加できる生徒数は1校につき40名、合計240名。生徒が40名以上いる中学校では選択科目を履修している生徒や生物クラブに籍を置く生徒を優先するなどして、40名を選抜。希望者を募った学校では40名を上回る応募に抽選で対応したところもあります。先生はまず一苦労。

(2) 授業時間の確保と実験内容等の修正

 今回使用する実験キットは米国で高校生向けに作られているものです。前準備を入れて中学には本来、8時間(1時間は50分)が必要ですが、6つの中学校によって異なる事情があり、6時間用に授業の流れを作り直しました。
 また、使う道具やシナリオも日本の中学生が興味を持てるよう作り直さなくてはなりません。配布するワークシート(繁殖プレートのスケッチをする用紙、4種類のプレートを整理する用紙など)の設計も新たに行いました。土台になるのは理科の先生方と生徒の間に日ごろから築かれている信頼関係でした。

 授業の流れ
1時間目  講義1  バイオテクノロジー(遺伝子組換えと私たちの暮らし)
2時間目  講義2  遺伝子組換え実験を行うに当たって必要な用語や知識
3時間目  講義3  大腸菌の遺伝子組換え実験の説明
4時間目  実験1  大腸菌の遺伝子組換え実験の実施
5時間目  実験2  大腸菌の遺伝子組換え実験の結果観察
6時間目  講義4  遺伝子組換え実験結果の考察


(3)新しい技術に対する生徒や保護者の不安への対応

 9月に参加者の保護者に対し、2回にわたって手紙を出しました。特に不安だという返事はなかったそうです。新潟はコメの産地として有名ですが、特に小合には花き園芸農家が多く、植物バイオテクノロジーに対する親しみがあったことがよい方向に働いたようです。

(4)高価な装置の入手

 遺伝子組換え実験を行うには「遺伝子を組換えた大腸菌を死滅させて処分するためのオートクレーブ(高温高圧滅菌装置)」、「組換え大腸菌が蛍光を発していることを確認するための紫外線ランプ」、「大腸菌を培養する恒温槽」という、普通の高等学校や中学校にはおいていないような装置が必要です。この3つを3組購入し、2校ずつで使い回すことになりました。2回目の学校は来年まで装置の管理も行います。

(5)継続して行うにはどうしたらよいか

 大学のスタッフによる体験学習は今までにも行われてきましたが、担当者の配置換えなどで途切れてしまう可能性があると考え、今回の取り組みでは継続的に実施するため、現場の理科の先生の指導によって行われること、行いやすい準備が整うことに重点がおかれました。
 物理、化学、地学、生物を教えなくてはならない「理科の先生」の大部分の専攻は物理と化学です。継続的に行うには理科の先生が教えやすい状況を作り出すことも必要です。

(6)現場のフレキシブルな対応(小合中学校の場合)

 中学生たちが実験を終えて「無形の財産」を残せるように、小合中学校の先生方のほかに、これから実施する中学校の先生や新潟薬科大学の先生も授業の後にいろいろなコメントを出し合います。
 例えば、スポイトを使うときはびんの底まで先端を入れて、大目に吸い上げてから、多すぎた分を押し出して微調整をすること。フィルムケースの水でスポイトの練習すると自信を持ってできるのではないか。など。
 理科以外の先生方も空き時間には白衣を着て理科室に入り、ビデオ撮影など協力的です。ちょうど2日目に参観できなかった3年担任に「面白かったから先生も来ればよかったのに」にいった生徒もいたそうです。

経緯

4月1日 新津市教育委員会より「平成14年度新しい生物学体験学習要領」が示された。
6月25日 新津市中学校理科担当者と打ち合わせを行った。
7月29-31日 小合中学校において体験学習を指導する先生のための研修会を開催。
9月2日 新津市教育委員会、新津市中学校長会より保護者に対して「平成14年度新津市新しい生物学体験学習の実施についてお知らせ」を配布。
9月中旬 新潟薬科大学太田達夫、藤井智幸両助教授より「小合中学校のみなさん こんにちは」を配布





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