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第14回談話会「現場で考える食の問題」が開かれました

4月22日(金)第14回談話会が開かれました。タイトルは「現場で考える食の問題」。スピーカーは「趣味は農業で10年来、20人程の仲間と横浜・十日市場で農家と組んでお米や野菜を作っている」といわれる東京青果滑J発第一部長本岡俊郎さん。翌日も本岡さんは5時半から市場でお仕事だということで、参加者全員がよいテンポで発言し、楽しく充実した2時間でした。市場を通じて紹介された日本の農業の実態、消費者の心理、互いの乖離。「市民には、(政治ばかりでなく)農業についても、真実が伝わっていない。官と産の責任」という参加者の発言が全員の感想をまとめていました。


スピーカーの本岡俊郎さん いつもの記念撮影

本岡さんのお話

青果市場のお仕事
月曜日から土曜日まで毎日、夕方から午前2時ごろまで、全国の産地から150−200台の10トントラックが入り、午前2時から5時ごろまでに2−4トントラックで首都圏に大半が配送される。以前はセリでの販売が主流だったが、量販店の販売が中心になりセリで販売されるのは一部になった。卸売市場では東京青果(株)のような大卸(オオオロシ)は産地から入荷した青果物をその日に中卸(ナカオロシ)に売りわたし、5日目には大卸から農協に代金を支払う仕組みになっている。こういう市場制度を設けている国は、日本以外では韓国、台湾のみ。

食の問題を考えるときの背景
1994年から65歳以上の人口比率が14%を超え日本は高齢社会になり、明治維新以来続いてきた右肩上がり発展志向が終わった。

国内外の食料事情
日本は食料自給率が低い。40%。そして石油・天然ガス等のエネルギー源はほぼ海外に依存している。輸入額は食料品で4.3兆円、エネルギーは5兆円に達している。海外での動きとしてはBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の生活水準が急に上昇し、中国は食料輸入国に仲間入りしている。これまで通り海外から食料を調達できるだろうか。これに対して、欧米諸国では政府保護政策により農業自給率は上昇し、フランス、米国は100%を超えている。

日本の農業の現状
日本農業は歴史的に国営事業のような保護政策が続いており、後継者不足、農業従事者の高齢化(65歳以上が51.2%)が問題になっている。日本の米については昭和40年代から供給過剰。他に、日本人の食生活の変化、果物、野菜離れなどの問題がある。

「食」の安全・安心問題
有機肥料と減農薬栽培は安全、おいしいといわれているが必ずしも科学的な根拠はない。たとえば、家庭菜園の野菜がおいしいのは農薬のせいか、新鮮なせいか、手作りの満足感からか。
安全・安心の関心が高まりトレーサビリティシステムの要求が進み、高齢化した農業従事者にとって大きな負担になっている。また、システムの費用を販売価格に反映させるのは難しい。
科学技術進歩により分析・検査能力が高まり、かえって市民の不安は高まるという皮肉な「負のスパイラル」が進んでいる。

食文化
伝統的な食生活が崩壊し、コンビニ、外食、デリカ惣菜など「食の外部化」が進む。
これから人口が減少していくために、女性も労働力として期待され、食事つくりにかける女性の負担減も十分に配慮されてなくてはならない。かつ少子化の問題の解決にも女性の労働環境や家事負担は深く関わっている。

健康を作る食
バイオテクノロジーは、機能性食品の研究・開発面でも活用されているが、健康のためには、まずは野菜や果物を多く摂取する健全な食の習慣が重要ではないか。ベジフルセブンといって、野菜や果物をもっと多く食べようと運動も始めている。
野菜は50gで1ポイント、果物は100gで1ポイントと数え、野菜を5ポイント、果物を2ポイントで合計7ポイントという品目を毎日摂るのが目安。


質疑応答
(○は参加者の発言、→はスピーカー)

減少する日本の農業従事者
○農業従事者を増やす必要がある。市民も農業に関わるような仕組みはできないだろうか。→現在の食料自給率は40%。この数字を上げることよりもこれ以上下げない努力をすることが大切。そのためには儲かる農業を考えねばならない。海外の農産物と対抗するために「内なる国際化」即ち外国人農業労働者がもっと働ける環境を作るという考え方もできる。農業参入の壁を低くし、就農者が新規参入しやすくする、開かれた農協にすることも必要ではないか。一方、土地の財産価値と生産価値の差が小さくなってきているので、農地の流動化の可能性がある

○65歳になったら全員が農業をするというアイディアは
→2030年には年収300万円の年金生活者が3000万人になり、時間はたっぷりあるので、自分で栽培して野菜を作る事は意味がある。しかし、農作業は忙しく他の趣味がなかなかできなくなる。私は、ゴルフ道具を処分した。農作業が忙しい時期は、ゴルフが楽しい時期と重なってしまい両方するのは不可能。

○農業を始めるのはそれほど簡単ではない。慣れるには時間も必要、技術もさまざま。グループに入って始めるのもいいと思う

日本の種子会社
○種はF1ですか→青果物は大半がそうだ。日本の種苗会社の技術は優れている。大手種苗会社は、良い種をとるには交雑しない広い土地でかつ整った気候条件が必要なので、海外に種用の農場を確保している。7割以上は海外生産になっている。

有機農業について
○有機栽培には多くの人がよいイメージを持っている。遺伝子組換え技術の理解促進にもイメージ作りが必要ではないか→日本人の生活水準は世界最高水準に達した。その中で富裕層は無農薬、無添加、非組換えの農産物を求めている。しかし、これからは決して豊かでない層も増えていくわけで、低いコストで生産される農作物への選択の幅を広げることも必要となる。

○有機野菜は圧倒的に人気があり、有機栽培にはよいイメージが作られている

○「食育」をわざわざ実施するより、食べ物と栄養の関係がしっかり教えられていれば、テレビ番組「あるある大辞典」等の噂に振り回されずに済むはず。

○果実、緑黄色野菜を食べると、喫煙していてもガンのリスクが低くなるという疫学研究があると聞いたが→バランスの取れたよい食生活を続けることが結果として医療費削減につながると思う

○昭和の人間は、食生活が整っているので、リスクにそんなに神経質にならなくてもいいのではないか。そんなに有機栽培にこだわるのだろうか→特別栽培農産物は市場では普通の農産物価格の2割り増しくらい高く値をつけるのが限界で、手間がかかる割には、決して農家の収益改善につながらない。小売段階では、2倍以上の価格になることもあるが・・・有機栽培は日本全体の農業全体の光明にはなり難い。減農薬栽培は高齢就農者にとって負担が増え営農を続ける意欲をむしろ減退させる。農業就業者は語ったり、書いたりは苦手。農家も市場で働くものも閉鎖的な社会に暮らしているので、外とコンタクトを持ちにくいので、本音が世の中に伝わっていない。

減農薬について
→農家は安易に農薬を使用しているわけではない。農薬の価格は決して安くはなく、
また、農家は常に自然に減農薬を心がけていることをご理解いただきたい。

米英の食生活
○イギリスは食生活に関しては個人的なもの。菜食主義者はいる。一方、日本は野菜や果実の消費量が減って、健康食品が増加している。
昔は煮物や漬物で野菜を調理することで量を多く食べていたが、塩分を減らす傾向から漬物消費が減り、生で食べるサラダが流行っているが、これでは量を食べがたい。

○野菜にも流行がある→日本は育種が上手で、人気の作物を次々に上手に作ることができる。

○ 米国は貧富の差が大きい。普通の人は日本人より気にせず食べたいものを食べている。豊かな人は有機を好んでいる。米国では一日に野菜を5皿食べる運動がある(ファイブアデイ;一日に5皿)。外国の人は日本の果物はおいしいという。

日本の流通システム
○日本にはどこに市場があるのか
→大田、築地、など公設市場は全国主要都市に80数箇所ある。市場の経由率はジュースまで入れると60%、野菜や果実そのものだけだと75%。
公共投資の成果として農産物の市場流通システムは優れている。日本は南北に長い国だが、当然のように北海道から九州にいたるまで同じ品質の農作物を手に入れることができるようになっている。全国民が中流以上の生活を実現できた背景にこの制度もある。昭和46年に制定された卸売市場法によって最終的に整備された。

高価な日本の果物と高齢者の購買力
日本の個人資産1400兆円。人口は1億3千万人。ちなみに米国の個人資産は人口2億人で2200兆円だからその豊かさがわかる。そのうちの8割を65歳以上が保有していると言われる。私見だが、更にその6割以上の人が首都圏と関西圏の主要ターミナルから急行電車で30分以内の距離に住んでいるのではないか。あるデパートでは、1個2000円以上する高級果実(国産マンゴー)が3ヶ月で12000個売れた記録がある。豊かな高年齢層が購入しているのが窺える。




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