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米国視察レポート最終号「参加者による感想文集」

米国視察レポートも最終号を迎えることとなりました。ここに参加者の感想文(全く手直しなし)を提出順に掲載します(締め切りは9月末日だったはずですが)。私たち参加者は、今後も実物を見る!立場の異なる人と意見交換をする!の精神で共に意見や情報の交換を続けていきたいと思っています。なお、夜の反省会に参加したのは一部の参加者であったことを申し添えます。ご感想などお待ちしています。

小泉望

1984年に植物の遺伝子組換えが可能になり、1994年にこの技術を用いて育種された作物が、初めて店頭に並びました。2004年には世界の半分以上、米国の86%のダイズが 組換え技術を用いたものとなりました。日本の農業ではこの技術が未だ使われていない一方で、約75%のダイズを米国から輸入しています。その米国の一面に続くダイズ畑をトラックの荷台に載って見学したのが印象的でした。米国では「バイオテクノロジー」が発酵や製薬などの産業へと同様に、農業へもすでに溶け込んでいることを実感じました。また、この技術の環境にとって良い点は想像以上でした。農業先進国米国が最新技術を用いた農業を展開しているのに、日本では実質的に、その使用が許されないことに対する日本の生産者の方の苛立ちがよく判りました。日本農業の将来にとって、新しい技術の導入を否定することの是非を、国民が真剣に考える時期に来ているように感じました。


早朝マウナケアに虹がかかった(ハワイ島ヒロ) 朝から晩まで通訳で休む間のない浜本さん USDAのインタビューに応じる長友さん(ハワイ島)


長友勝利

この度、私達バイオ作物懇話会では、米国生産者、消費者、行政の方々と意見を交わす機会を頂き、これまでにない実りのある勉強ができました。

私達懇話会では、これまでにGM技術についての勉強を続け、既に理解は致していましたが、今回の訪問で改めてこの技術のすばらしさを実感することができました。

今回私達生産者の目で感じた一番の成果はなんと言っても、ハワイ州でのパパイヤ農家のお話でありました。これまで続いてきたパパイヤ栽培がウィルスの発生により壊滅状態という、生産者にとっては死活問題が現実に発生。ほとんどのパパイヤ生産者が農業を辞め、ハワイでのパパイヤ生産はなくなると、誰もが予想したそうです。

そのような中、ハワイ大学を中心にした研究者の方々による、ウィルスに抵抗性を持った遺伝子を組み込む技術によってパパイヤ壊滅の危機を脱することに成功。「現在ではほぼ以前の栽培面積に戻り、安定した経営ができるようになった」とこの技術に感謝していた生産者の声が特に印象に残っております。

また、遺伝子組換えトウモロコシやダイズ生産者の言葉に「雑草防除や殺虫剤散布などの作業時間の大幅な減少と、何よりも農薬の使用量が減少し増収増益につながった。安全性の高い除草剤を使用することで、これまでのような農薬飛散による体への付着の心配もなくなり、子供や孫たちが畑に入って遊ぶことを気にすることもなくなった」といわれる声がありました。私達生産者としても安全性の声が高まる日本の農業に、安全性の高い農産物であるなら、日本での栽培を検討してもいいのではないかと感じたところです。また、消費者、生産者に対しての安全性についての質問には、「行政に対する国民の信頼が高いということ、誰もが選択の権利を認めている。数年間にわたり安全性について審議を行い認可された品種が危険なものとは思えず、これまでにひとつとしてトラブルも起きていない。私達は逆に既存の作物よりも安全性が高いと考えている。」と自信を持って話されるのもGMダイズ90%という米国でのGM作物普及の所以であると強く感じた次第でした。今後日本国内において、この技術の理解を進める上でも、今回の米国視察は大きな成果であったと思います。

私達バイオ作物懇話会では一日も早く国民の理解を得。複雑な気象条件や雑草防除、病虫害問題を抱える国内農業に安全で収益性の高くなる低コスト栽培の可能なGM農産物を取り入れ、安定持続型の農業ができるように努力することが大事な役目であると思っています。

今回の研修に多大なるご尽力をいただきました米国大使館、米国農務省、米国農務会、その他沢山の方々に心より御礼を申し上げます。





浜本哲郎

2004年8月下旬に行われた「将来の農業とバイオテクノロジー」視察団を主催した米国大使館農務部は、米国産の農作物、食品の対日輸出を振興することを目的のひとつとしています。健全な対日農作物輸出は、米国内はもちろん、日本国内での農業生産の健全な発展があってこそ成り立つというのが、私の持論です。日米間の交流は深く、食品の分野でも産業界や行政の方々は米国との意見交換の機会を持つことが多くなってきています。しかし、農業生産に携わる人たちどうしの交流はそれに比べて少ないのではないでしょうか。この視察では、日米の農業生産者の方々に、直接、意見交換をしてもらうことによって、将来の両国の農業の発展と、お互いの農業生産への理解を深めるための一歩となることを目指しました。

今回の視察のもうひとつの大きなテーマは、バイオ作物、いわゆる遺伝子組換え農作物の生産現場を訪問し、理解を深めることでした。日本では、バイオ作物について、必ずしも食品の製造業界、流通業界に受け入れられておらず、バイオ作物を供給しつづけようとする米国に対する不満すら感じられます。このような感情的なわだかまりを無くすために、日本で否定的に受け止められているバイオ作物を、なぜ米国の生産者が作っているのかということを知ることが重要であると考えました。

今回の視察は、参加者と訪問先の方々との意見交換のみならず、参加者ひとりひとりの真実探求の熱い思いと、バックグランドが異なる参加者どうしが、お互いの意見を尊重しあいつつ、積極的に自論を展開させていくというすばらしい人間関係に支えられ、大きな成果を生むことができました。今後も、このような企画をさらに継続することによって、日米両国の農業、食品の生産の視点からの相互理解を深めていきたいと考えています。





取材後もビデオのために単独インタビュー 角田さんはいつも真っ先に畑におりて、土を調べる 穀物は写真右の建物から下を流れるミシシーピー川に停泊した船(バージ)に積み込まれる(左は穀物を倉庫から運び上げるベルトコンベアー)

香月隆之

今回訪問したアメリカ中西部の農家ではいずれも広大な農地を経営するがすべて三人から四人の家族経営であった。彼らは農薬の散布に手間がかからない、遺伝子組み換え作物の導入が必要不可欠であったと話す。遺伝子組み換え作物がアメリカでこれほどまでに広がったのはまさに生産者側の事情によるものであることを改めて実感した。一方で、こうした組み換え作物によって作られた食品を食べているアメリカの消費者は意外なほどに関心が薄く、アメリカの市場で大きな反対もなく受け入れられる原因の一つになっているようだ。ただ、アメリカ人にとって主食ともなる小麦の場合は果たしてアメリカ人がこれまで通り受け入れるのかどうかは今後注目すべき点であろう。また、ヨーロッパをはじめこれまで懐疑的な姿勢を取ってきた市場が今後どのように反応するのか。遺伝子組み換え作物が将来にわたって、受け入れられるかどうか、今、重要な分岐点にあることを痛感した。

佐々義子

遺伝子組換え食品と市民の関わりを調べる仕事について7年になる私にとって、どうして米国では組換えのトウモロコシ、ダイズ、パパイヤなどが表示なしに受容されたのかが、ずっと疑問でした。小麦の商品化が遅れていることについて、日本ではビジネスの選択という理由しか聞けなかったのに、今回の視察で、直接食べるものに対する素朴な躊躇も含まれていることを個々のヒヤリングから確認できました。組換え食品の不安は情報不足によるというのが通説でしたが、不安と理解の間を埋めるには情報プラス「なじむ時間のようなもの」が必要なのだと、当然のことなのに、気づくことができました。私にとって、それがこの視察の最大の収穫でした。

西田純一

このたび、関係各位のご厚意に浴し、念願の米国農業現状を拝見できましたことを、心より深く感謝しております。私自身の半世紀を越えた土作り農業を通じて、日ごろから痛感し直面している「農地痩薄化〜砂漠化を阻止するには」「現在の進行方向をどう軌道修正するか」について研修の全日程、可能な限り観察してきました。

一言で記しますと、米国の農地は予想以上に疲れ切っていました。品種改良技術の一大革命が実現して既に米国で実用化され、営農レベルで普及しています。生産現場でこれに追いつき追い越さなければならないのは、疲弊し瀕死の重態に陥っている農地の復活です。すなわち、私が一生かかった土づくりのプロセスを何分の一に短縮できるかです。耕土中の善玉微生物の復活、在来種の十倍も力を付加し、劣化土壌中で爆発的に増殖する実用種の研究開発を農林水産省主導で早急に行動計画を実行。量産体制を整備稼動させ、農地に供用することを目指し、その一方では明年度からすぐに着手して、品種改良が実用化し、生産量が倍加する地力消耗に備えるため、耕作放棄地は勿論のこと、収穫期の早い作物の後作として栽培することを主力とし、全国に緑肥を徹底的に増反して早急に地力回復を!共に、今年度中から、消費者みなさんにご理解とご支援をいただくための「正確親切な情報普及」を徹底して、農林水産省、関連省庁連携して、推進していただきたい。あらゆる機会を活用して、積極的に提言することの必要性を感じ帰国しました。農業一筋人生で、今年は52回目の収穫を終わりました。現行農法の延長線上に人類の食は未来がありません。肥料と農業の残渣の蓄積を継続する農地で、どうして食べる人の健康を保つことができるでしょうか。この悪連鎖を断ち切るのは、漸く人類が手にした品種改良技術を促進する以外になく、このことと消費者反対意識を持つ皆様に説得させていただきますよう、お願いいたします。以上、感想です。


角田誠二

遺伝子組換え作物の栽培に対する日本とアメリカの生産者と消費者の受け止め方や考えにどんな違いがあるのか、アメリカ農業の現状とアメリカの農家の農業に対する考えについて関心を持って見学してきた。

アメリカでは国の責任でGM作物に対し、その安全性に対するあらゆる検査、規制をクリしていて生産者、消費者にその結果が受け入れられている。それに対して日本では、消費者的な考えからくる新しい科学技術に対する不安感を唱える一部の人の主張に共感を感じる人が多いのではないか。食品に関しては、その安全に対し生産する者と、消費者の間に理解のずれがしばしば起きることがあるが、GM作物に対してもそのような一面を感じる。

アメリカ農業は、国際農産物価格の中で、競争を余儀なくされており、コストダウンに役立つ新しい技術を取り入れることに積極でなければ生き残れないが、日本では国の農業政策の中で、コストに対する意識が、高いとはいえない面がある。

アメリカの農業界には、安くて質の高い農産物を、世界に対してどのように供給していくかが必要とされているが、日本の農業は基本的に、今までは国内の問題であった。

GM作物では、ハワイのパパイヤのウィルスによる壊滅的な被害からパパイヤ栽培を救ったウィルス耐性を組み込んだGMパパイヤの開発と、普及を進めたデニス・ゴンザルベス博士の使命感と、郷土愛に感銘を受けた。ウィルス病に対してほとんどの農作物が大きな被害を受ける可能性がある中で、ハワイのパパイヤのような被害を受けた時には、遺伝子組換え技術が非常に有効であると思う。

今後、日本の農家も、生産性の向上をはかり、より室の高い農産物の生産と、経営を、自己責任において、進めなければならないことを痛感した。


川原 鏡子

米国中西部の農場見学に同行し、米国と日本の生産者の交流から多くのことを学ばせて頂いた。訪問したある大豆農家の方が、「私がGM作物を生産するのは、生産性を高め、農薬の使用を減らすため。当然であるが、安全でないものは作らない。米国大豆の半分以上が輸出されている、世界の消費者に大豆を届けるということに誇りをもっている」と言っていた。一方で、米国でも農業人口の減少や宅地開発の影響など農業をとりまく環境も変ってきている。日本では、全体の農業人口は減少しているが、若年層で農業を始める人が増えているという。とても嬉しいニュースである。生産する場所が違っても、様々な課題を克服し、農業の発展を真剣に考え取り組んでいる両国の生産者の姿に胸が熱くなった。


植物の様々な形を見て、生物多様性に感動!(ハワイ島植物園) 広大なとうもろこし畑に春日さんのハーモニカの音色。今日の視察もやっと終わり。(トラックの荷台に乗って) 行く先々で友達作り名人の西田さん

春日 主計範

サッサと書きなさい!すみません、編集長。ああ言われる立場になってしまった。そう思いつつ、気が付いたら何と訪米視察から2ヵ月あまり。つい昨日のように新鮮な感動と出会いの場面が甦りました。
あのビーフステーキを「もう一度食べたいね」浜本さん、ビーフ素敵ですよ。反省会の名目で連夜グラスを傾け、ウィ好きーなんて。食品産業界に身をおいている者ですから、どうも食べ物の話が先に出てしまいます。のっけからすみません。

農場主のようなデカイ顔をして、トラックの荷台から広大な畑を眺め、大型トラクターに乗って「なかなかトウモロコシの出来栄えがよい」と自己満足。果ては青々と広がる大豆畑で天ぷら(食用油)、味噌汁、豆腐の日本食を連想。そういえばパパイヤも美味しかったな。いけない、ここはアメリカなんだ。GM作物を学びに来たのだ。
「人類を救うGMO」、「遺伝子構造」、「日米の貿易摩擦」。難しい言葉が脳裡を行き交いしまいには右から左へ。そうだ、霞が関情報を忘れてもアメリカンニュースを必ず伝えよと言われていたっけ。まして洗面器のような大皿に盛られた健康食をたらふくご馳走になったのだから、恩返しをしなければ・・・。
日本の皆さま、飽食だ選択肢だのとワイワイ騒ぎ、安全・安心を金科玉条のように唱えていますが、例えば天ぷらでGM大豆のお世話になっております(昔の流行歌「俺は知っている」より)。消費者は政府を信頼しています(ペン農務省次官の記者会見)。農作物の歴史は品種改良の歴史でもあり、その延長線上に遺伝子組換え技術があります(愛唱歌「線路は続くよ」のハーモニカ演奏)。

最後に超真面目な春日節で感想文を締め括ります。
@米国大使館・農務部初の「日米生産者が直接交流する企画」は、視察団の多彩な顔ぶれ、米国側関係者(行政・議会スタッフ・研究機関・農業団体・農家)との意見交換など、全てが新鮮な体験。特に視察メンバーとの人間関係を深めることができたことや、専門家の視点・分析方法・考え方を知ることができたことは、大きな収穫でした。

A米国GM農作物の現状と将来展望を学んだ中で非常に印象的だったのは、農家からスーパー経営者に至るまで、一貫して政府(行政当局)に対する信頼感が大きかったことで、消費者保護に立脚した透明な情報開示、安全性の評価方法などUSDA(農務省)やFDA(食品医薬品局)、EPA(環境保護局)の密接な情報交換、オピニオンリーダー等に対する情報提供方法など、日米の違いをまざまざと見せつけられました。

B今回の訪米に際し報道側は「ビザ」取得を求められましたが、テロ警戒を強める空港・議会・農務省の厳重な警備など、5〜6年前の訪米(2回)当時に比べ様相が大きく変化しており、貴重な体験になりました。




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