10月22日、文部科学省ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室、厚生労働省大臣官房厚生科学課、経済産業省製造産業局生物化学産業課より、標記意見募集が始まりました(締め切りは11月19日(金)18:00)。10月13日(水)に行なわれた第4回個人遺伝情報保護三省合同委員会の議論の末にまとまった案文(正確にはその議論に沿って、座長と事務局で整えてくださったもの)が掲載されています。どうぞ、ご意見をお送りください。http://www.meti.go.jp/feedback/data/i41022aj.html
参考サイトはこの記事の最後に掲載してあります。
これまでにくらしとバイオでは、第1〜3回までの議論の内容をご報告してきました。
https://www.life-bio.or.jp/topics/topics94.html
https://www.life-bio.or.jp/topics/topics102.html
4回目の報告が間に合わないうちに、意見募集が始まったわけですが、最終案がどのように議論されて作られたかをご報告します。特に、くらしとバイオプラザ21として繰り返しお願いしてきた国民の理解に関わる項目が13日の検討案には全く入っていなかったのですが、委員の方々の応援もあって、その意味が認められ基本方針の最後に加えられました。大変、嬉しいことだと思います。議論された項目の中には指針案に反映されたものと、重要であるけれど今回の指針案には検討不十分でもりこめなかったものがありましたので、それらの主な内容を以下に示します。
1.指針案に反映された項目とその議論
- 国民の理解を進めるという項目を入れてほしい(1ページ:基本方針)
・疫学研究における地域住民との対話の部分で、国民の理解を図ることを含むとするのか。
・社会全体の理解を高める趣旨を基本原則の最後に新たに入れるべき。
・「対話」ということばも入れたほうがいい。
- 連結可能匿名化された情報は対応表がない部署では個人情報として扱わなくていいのではないか(3ページ:保護すべき個人情報)
・現実には匿名化を専門に行なう部署を持つような大きな機関はあまりないので、対応表を持たない場所を想定するのは現実的でない。
・ 同じ機関内で対応表の有無で扱いが異なるとしたところで、外部から見れば同じひとつの機関であることに違いはない訳で、この点に拘ることにはあまり意味がないのではないか。
・ 同じ状態にある情報が、同一機関内他部署に対応表があるかどうかだけで、個人情報になるという複雑な扱いは、研究現場に混乱をきたす危惧がある。
・対応表を持たず、連結できない部署には縛りは不要ではないか。
・対応表の有無にかかわらず、遺伝情報は気をつけて扱わないといけないことには変わりはない。
- 統括的な責任の意味の確認(4ページ:研究を行う機関の長の責務)
・統括的とは、責任はすべての長が持つ。大学なら総長や学長とし、責任の所在を明確にする。しかし実際の研究の管理・監督は医学部、所属する研究所などの部門の長が行うことができるとし、円滑・機動的な研究の実施はこれまで同様できるようにする。
- 多施設共同研究における倫理審査について(6ページ:研究を行う機関の長の責務)
・大きい医学部が全国の町の医者に依頼して試料を集める(10−20床くらいの病院)場合、そういう小規模な病院には倫理審査委員会の設置は現実的でない。
- 試料採取においては、説明だけでなく同意をとるのも医療従事者でなく履行補助者でいいのではないか(12ページ:インフォームドコンセント)
・説明は医療従事者だけでなく、履行代行者が行なえるのは、検体数が多く必要なときには必要であるが、採血(医療従事者しか行なえない)以外の試料(髪やツメなど)は医療行為を伴わずに採取できるので、こういう場合には、個人情報管理ができる状態であること倫理委員会が審査することを条件に代行者でもいいのではないか
・数千、数万の検体が必要だからといって、説明、同意ともに履行補助者に広げるのには同意できない。
・個人情報の重みという観点からすると、今の法制度で守秘義務のある医療従事者が同意をとるのがよい。やりにくいから指針で変えるのでは法律の意義が問われる。
- 郵送によるインフォームドコンセントの取得について(12ページ:インフォームドコンセント)
・研究責任者が郵送で説明をするという形を細則で認めてほしい
・インフォームドコンセントに関わのを守秘義務を持った医療従事者に限る理由は、守秘義務を守らなければ解雇されるという、厳しい状況であるから。
・郵送まで広げる細則はまだ早いと思う。研究者の勇み足に見えてしまう
勇み足といわれても、試料が多数なくては研究が進まないことも理解してほしい。研究者も理解を進める活動に努める
・郵送の場合は本人のものかどうか保障できないので、細かい検討が必要
・例えば、糖尿病患者の兄弟が遠方にいて、治療に協力したいといっている場合も出てくるので、ケースごとの判断も必要かもしれない。
- 遺伝カウンセラーについて(12ページ:インフォームドコンセント)
・医療従事者には守秘義務があっても、カウンセリングのプロでない。そういう意味では遺伝カウンセラーがいない現実の過渡期であることを理解してほしい。
・履行補助者が説明を行なえる所までを今回の前進とし、それ以上の前進は社会の信頼が育まれてからが好ましい。
2.指針に盛り込まれなかった項目
- 治験について
・治験は指針の対象範囲に含まれていないが、非常に重要なことなので、治験を担当している厚生労働省医薬食品局に、十分に検討してもらえるようにお願いする。
・ 治験の扱い方については業界もすでに検討を始めている。適切な対応を期待したい。
- 守秘義務について
・今回、十分に議論できなくても付帯事項として、残していくべき。守秘義務を破ったときの罰則を定めておくべき。
- 体質に関わる検査や研究について
・医学中心に進んでいるが、栄養学、運動学の分野など体質に関わる研究の扱いには、今後検討が必要。
・医療関係機関以外では遺伝子検査よる体質検査はすべきではないと考える。
今後は、個人情報の保護に関する法律案に対する衆議院付帯決議、個人情報保護に関する基本方針(閣議決定)に基づき、法制化の必要について議論することになっています。
ご意見を送られるときの参考として
審議会等における議論や提出資料が以下に掲載されています。
文部科学省ホームページの科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報等の取扱いに関する小委員会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu1/index.htm)
厚生労働省ホームページの厚生科学審議会科学技術部会医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会
(http://www.mhlw.go.jp/shingi/kousei.html#kojin)
経済産業省ホームページの産業構造審議会化学・バイオ部会個人遺伝情報保護小委員
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