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市民参加型イベント「ダイズ畑の除草体験」開催される

2008年7月19日、農業生物資源研究所で市民参加型展示ほ場が行われ、22名の市民(親子、学生・院生、研究者など)が参加しました。除草後の畑の様子は随時、同研究所ホームページに報告されます。
http://www.nias.affrc.go.jp/gmo/exhibition2008/


お話「なぜ品種改良をするのか」

       農業生物資源研究所 田部井豊室長

農作物は人間が原種から変化させて人間にとって都合のよい「変わりモノ(おいしい、病気に強いなど)」を探し、作ったもの。遺伝子組換え技術は変わりモノを作り出す技術のひとつ。よい点は交雑できない作物間で有用な働きをする遺伝子を入れることができること、大変な点は有用な働きをする遺伝子を見つけ出すのに時間と手間がかかること。こうして研究・開発された遺伝子組換え作物は、環境への影響、ヒトと家畜が食べて安全かどうかを審査して、送り出されます。


除草作業

除草されていないダイズの畑(1.5a)を、ひとりが5m2を受け持って除草しました。参加者は尾少ない人で5Kg、多い人は15Kgくらいの雑草を刈り取ったり、引き抜いたりし、各自、計量・記録しました。当HP担当者は6Kgでした。

麦わら帽子に軍手で作業開始 これから除草する畑は雑草がダイズの間に
びっしり生えていました
抜いた草を袋に詰める 草の重さを量り、記録します
除草作業が終わり、すっきりと土の色が見える 遺伝子組換え除草剤耐性ダイズに除草剤を散布する

非組換えのダイズの畑には、雑草をとらない場所(無除草区)、徹底的に手で抜く場所(徹底除草区)、 種をまいた後の土壌処理剤だけを散布した場所(慣行除草区)がありました。雑草がだいぶ生えてきていました。 遺伝子組換えダイズの畑では、除草剤の散布が行われました。この後2週間ほどで、雑草だけが枯れるそうです。7月23日、雑草が枯れ始めた様子が以下のサイトで紹介されました。 http://www.nias.affrc.go.jp/gmo/exhibition2008/20080723/

室内での活動
昼食後にはブロッコリーからのDNA実験を行いました。部屋をP1P施設(遺伝子組換え体を扱える施設)として閉鎖し、遺伝子組換え技術によって作られた光るイネ、光る大腸菌、光る繭が持ち込まれました。その後、ほ場でとった雑草の説明が行われ、輸入されたままの大豆やトウモロコシ、いろいろな種類のダイズの標本も展示されました。

この部屋はしばらくの間、P1施設になります。
飲食はできません。
ダンボール箱に紫外線源を入れて観察
光る繭(左)、光る蚕から抽出された蛍光タンパク
質 (右)   (写真提供 農業生物資源研究所)
不分別トウモロコシやダイズはゴミも入ったまま
港にやってくる

松尾先生から、畑から抜いてきた雑草について説明をうかがいました。雑草とダイズは日照や土壌の栄養を奪い合うようになります。早く背を伸ばす戦略を持つものもあれば、ダイズが小さいうちに花を咲かせ種子を散布させてしまう種類もあります。

松尾和人先生より畑から持 って きた雑草の説明
を聴く
いろいろな雑草。右端のメジャーの隣がダイズ
 
いろいろな種類のダイズ  


除草作業を振り返って
除草作業をした時間(40分)をもとにして、私達が1年で食するダイズの平均量8.3Kgを収穫するにはどのくらい除草作業をしなくてはならないかを試算しました。味噌、納豆、豆腐などだけで、暑い時期の除草作業が736分必要だということになりました。実際には、ダイズは家畜飼料や揚げ物に使う食用油にも必要です。この5倍以上の除草の手間のお陰で、私達は食生活を送っていることがわかりました。
また、去年のイベント参加者の除草した草の重さと実際の収穫量のデータ(よく除草できた方が、収穫量も増える傾向がある)から自分の除草した畑からどのくらいが収穫できるかを予想して計算しました。その結果、私達のやり方では、日本の平均的な農家の収穫量(170Kg/10a)、米国アイオワ州(340Kg/10a)に全く及ばないことも分かりました。ちなみに米国では100Kgのダイズをえるために除草作業に費やす時間は2.5分、日本の農家は120分だそうです。



 
意見交換会  

質疑応答と意見交換     
  • は参加者、→はスピーカーの発言
  • 参加者全員でわからないこと、疑問に思っていたことを会場の先生たちに質問しました。それから、どうしてこの技術に違和感を感じるのだろう、実際に店頭に並んだらどうするのだろうなど、自由な話し合いをしました。

    疑問、質問したかったこと
    • トマトの原種と野生種の違いは?→原種とは今のトマトと同じ種で今のトマトの元になったもの。日本では野生種として食べない植物であっても海外では異なる扱いをする国もある。
    • 海外における品種改良の安全性はどのように確かめられているか?→交雑・放射線・細胞融合・遺伝子組換えなど品種改良の方法は多い。遺伝子組換えはプロセスにおいて放射線などは使わない。外から新しい遺伝子を入れて作るが危ないタンパク質を作る遺伝子は入れていないし、作られたタンパク質に危険性がないか、予期しない事が起こらないかを調べている。
    • 光る蚕「蛍光色素たんぱく質」とは何か?→プロモーター、蛍光タンパク質を作る遺伝子とターミネーターをセットで蚕に入れる。マイクロインジェクションといって、細い針をもつ注射器でカイコの卵に遺伝子を入れる。この方法は植物の組換えの仕方と異なる。その遺伝子を受けとって導入した遺伝子が働いているカイコが生まれれば、そのカイコは光ることになる。
    • 光る蚕は次世代でも光るのに組換え大豆は毎年種を買わなくてはいけないのは何故? →組換えダイズは次世代でも除草剤耐性を示すが、種子会社が開発した種子は種苗法で保護されており、翌年、自家採取した種子を使えない契約になっている。
    • 「遺伝子組換え不使用」表示の中から「使用」を見つける方法は? →「不使用」と表示してあっても5%混入することは認められている。遺伝子組換えダイズの混入を見つけるには、遺伝子組換えダイズに特有のDNA配列を検出する装置を使って見つける。
    • 作物を食べた虫を死ぬようなものは人間にも危険なのではないか?(質問がおかしい)
    • →今日見てもらった害虫抵抗性トウモロコシで作られている殺虫成分は、有機農業で使っても良いとされている農薬と同じ成分。蝶や蛾には毒性があるが、哺乳類には毒性を示さない成分が作られているので、人が食べても安全。
    • DNAを使う場合「植物に植物のDNA」だけでなく「植物に動物のDNA」を使えることに驚いた。→DNAはA・G・C・Tの4つの文字で表すことができ、これは全生物共通。
    • 除草剤耐性の種子を使うと、何故農薬の使用量が減るのか?→農家は少ない農薬・手間・コストで多く収穫できる事を考えている。普通のダイズを栽培する場合、播種の直後に土壌処理剤で除草を行い、さらに何度か雑草防除を行う必要がある。しかし、除草剤耐性のダイズの場合、ダイズが発芽して雑草が伸び始めえたところで除草剤をまくと、雑草だけが枯れダイズは成長する。後からはえた雑草はダイズの日陰で成長できない。気候や土地の状況で雑草の生え方が違い、雑草の種類によって異なる除草剤をまく従来のダイズよりは散布回数が減ることになる。

    遺伝子組換え技術の利用への違和感
    • 動物と植物のDNAが一緒だということにすごく違和感を覚える。
    • 遺伝子組換え技術についてどんな説明を聞いたら受け入れられるのか?と思う。
    • DNAを変化させると合成されるたんぱく質も変化すると考えればわかりやすいと思う。
    • 世の中の人は「DNAがたんぱく質を作る」という事を知っているとは思えない。
    • 動物と植物のDNAが一緒で組換えができると聞いても、自分には違和感はない。
    • 「違和感がない」人は何故、違和感がないのだと思うだろうか。
    • 分子レベルまで分けたら、動物も植物も同じだから、違和感はない。
    • 「品種改良」の研究をしてきたことから考えると、現在の作物はすべて人工的だと思う。目的に合った遺伝子を持ってきて「良い物」を作る事は良いのだと思う。
    • その説明で少しわかったように思う。
    • 種の壁を越えられないものでも「組換え」で越えられる。
    • 「命」の観点から、作物の遺伝子組換えについては皆厳しく言うが、花の組換えに対してあまり言わないことは不思議だ。ハワイで日本人は遺伝子組換えパパイアを食べるのに国内ではダメだというのも不思議に思う。
    • 大学・大学院で勉強したので頭ではわかるが違和感はある。クローンについても「不妊治療」はOKなのに、その他のクローンは気にする人がいるのはなぜだろう。

    遺伝子組換え作物開発企業について
    • 「遺伝子組換え作物種を開発するモンサント社が権利を持っているから使えない」という事を聞くが、何に対して特許を持っているのか?→「プロモーター」という遺伝子の働き始めを制御する遺伝子の特許。DNA配列と機能についての特許などがある。特許は25年で切れ、その後は誰でも使えるようになる。
    • 遺伝子が特許の対象になることは不思議だと思う。

    日本では受け入れられない理由について
    • 日本では何故遺伝子組換え技術で作物が栽培されないのか?
    • 作っても売れないからではないか?
    • もし値段が同じ場合、組換え作物と非組換えとどちらを買うか(イの質問)?
      もし組換え作物の方が値段が安かったらどちらを買うか(ロの質問)?
    • 参加者の挙手数 (イの質問)  (ロの質問) 
       非組換え作物を買う 11人6人
       どちらでも良い 13人0人
       組換え作物を買う 2人21人
    • 値段が同じ場合に何故組換え作物を買いたいのか?
    • 遺伝子組換え作物だと農薬をあまり使っていないと思うから。農薬が悪いというわけではないが、適切に使っていない場合があると思っている。自分のお金で買うので自分で判断する。国を全面的に信用しているわけではないが、身体に有害なものがそう売られているとは思えない。
    • 科学者を信用しないわけではないが、遺伝子をいじる事に漠然とした不安がある。アメリカ追随型の日本人はヨーロッパの動きや考え方と何故違うのか?
    • 近頃は「合法であるがにせもの」を食べさせられていることが多いのではないか。その意味で、遺伝子組換え作物はにせもの的な感じがする。

    店頭で遺伝子組換え食品を見つけたら
    • 母は非組換えを買うが、自分は安ければ組換えを買う。
    • 「組換え」を表示された製品をスーパーであまり見かけないが 、なぜだろうか。
    • 消費者が嫌うので、食品メーカーが遺伝子組換え原料をさけているためだと思う。
    • いくら組換えが安くても安心できる要素がなければ自分は買わない。
    • 自分はもうよいと思うが、将来のある娘や子孫には安全な食物を与えたい。

    生産者は・・・
    • 作る側は遺伝子組換え作物をどう考えているのだろうか?→ある調査では、生産者の4〜5割弱は作ってみたいと考えている。「消費者が買ってくれるなら作る」という生産者の声は多い。また、農薬登録法があり、日本では現在、「ラウンドアップ(遺伝子組換え作物と対になっている除草剤)」は使えないので、日本では除草剤耐性ダイズを作るメリットがない。国はOkでも地方自治体が独自に条例を作って規制しているところもある。農家は関心を持っているところも多いが。
    • 遺伝子組換え種子は高い。しかし、農薬・人件費等を考えた場合収率が良いので、これだけ世界の栽培面積は増加したのだろう。ヨーロッパにはシンジェンタという大きな企業があり、米国のモンサントは南米に早く進出したことが成功につながった。

    今日の印象は如何でしたか?
    • 「遺伝子組換え」は学問のテーマとして一番面白い。「不安感は何か?」知りたかったが、その回答は得られなかった。
    • 去年も来たが今年も面白かった。
    • DNA抽出実験をしたかったので、満足している。
    • 高校・大学で生物を履修していなかったので面白かった。
    • 今、日本の農業はピンチ。国民全体があのくらいの時間「雑草取り」をすればよいなら、そんなに大変ではないと思った。このくらいの体力がなくてはだめ。
    • 一般の人の意見を聞けて良かった。
    • 今日ここに参加している人はレベルが相当高い。普通の人が今日の話を聞いても、どこまで理解できるのかな?と思った。自分にもわかる日本語(専門用語、外国語を使わずに)で説明して欲しい。
    • 隔離圃場を見られて満足。
    • この場に流通、生産者、科学者が入って議論できればなお良かった。
    • 除草作業にはビックリした。あれほど雑草が生えているとは思わなかった。予備知識がなかったので驚いたが参考になった。
    • 隔離圃場は写真で見ているより狭くて驚いた。自分はライターだが、GMOを一般の人に噛み砕いて説明する事は難しい。今日は農具を使って草取りをさせて欲しかった。
    • 「こんなに大変なのだ」と印象づけられると、誘導されてしまうのではないかと思った。
    • スーパーで働いている。食育を勉強していてGMOに興味がある。皆さんの話を聞いてレベルが高いと思った。これから勉強して安全性についてもお客さんに説明できるようになりたい。
    • 「どのくらいのリスクであれば自分で負えるか」を考えて行動したいと思った。


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