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「ゲノムDNAの抽出と遺伝子情報の解析〜ALDH2遺伝子の多型」
が 行われました(その1)

6月22日(木)、23日(金)、福島県立福島明成高校にて、「ゲノムDNAの抽出と遺伝子情報の解析〜ALDH2遺伝子の多型」と題する授業が2日間にわたり行われました。この授業は、福島県学校教育力向上支援事業の一環として行われ、生物工学科3年生(37名)が参加しました。
くらしとバイオプラザ21では、昨年度、3省指針(ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針)の改訂に関わり、ヒトゲノムに対する国民の理解を深めるための活動や教育が重要であることを主張してきました。
参照ページ:https://www.life-bio.or.jp/topics/topics117.html
改訂された倫理指針全文 http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/seimei/genome/04122801.htm

ヒトゲノムDNAを教育目的で用いた実験や授業を行うときに生命倫理的な配慮が必要であることはわかりますが、実際に学校や教師がどのような手続きをとり、どのような方法で行えばいいのかについては、試行錯誤で取り掛かるしかないのが実態です。従って、このような実験実施の手引きになるようなガイドラインについては、必要性の議論も行われていません。
このような状況のままでよいのかという問題は、高等学校だけでなく、医学系の新入生にも、やがては私達、市民の理解増進の場にも該当するでしょう。そこで、今回の同校の取り組みをご紹介することで、今後、ヒトゲノムの理解を深めるための活動や教育を学校や科学館で行うとき「配慮すべきこと、準備すべきこと」を考える助けになることを願い、福島明成高校のご協力のもと、この取材を行わせていただきました。



山、水田の見える教室 暑い二日間、みんなよく頑張りました


生命倫理面での配慮、福島明成高校の場合
同校では、実験と行う前に事前学習としてヒトゲノムDNA の意味について講義をし、これらに関するプレテストを行いました。そして、この学習から自分のゲノムDNAを用いることの意味を理解したとして、生徒たちは署名をしました。(ヒトゲノムDNA取り扱いのチェックポイント用紙1)
実験終了後にも、プレテストと同じテストをもう一度、用紙2で行い、理解を確認した上で、自分のゲノムDNAの入った試料を塩酸で加水分解し、処分し、これをチェックポイント用紙2で確認し、署名をしました。これは自分のゲノムDNAという物質をこわしてしまうことが、個人遺伝情報も失わせるものであることを意味しています。(ヒトゲノムDNA取り扱いのチェックポイント用紙2)

用紙1と2の内容
用紙1にはプレテスト「ヒトゲノムDNA(自分自身のDNA)上の遺伝子情報」と実験開始前内容確認と署名欄、用紙2には同じプレテストと実験終了確認と書名欄があります。

「ヒトゲノムDNA(自分自身のDNA)上の遺伝子情報」
1. ヒトゲノムDNA上にある情報には、どのようなものがありますか
2. ヒトゲノムDNA上の情報が一人一人の人間の個人情報である理由はなんですか
3. ヒトゲノムDNAが他人に渡るとどのようなリスク(不都合なこと)がありますか

「実験開始前内容確認」
私は、ヒトゲノムDNA(実験では自分の細胞にあるヒトゲノムDNA)を取り扱います。事前授業でヒトゲノムDNA上にどのような情報が含まれているかを理解しました。学習授業では、私のゲノムDNA上にあるALDH2遺伝子配列の個人差をPCRと電気泳動という実験手法により調べます、実験終了後、私自身で、ゲノムDNA溶液に1モル塩酸を添加し、15分間放置することでゲノムDNAを加水分解しゲノム上の情報を壊します。上記内容を踏まえ実験を開始します。  2005年6月23日 署名

「実験終了確認」
( )エタノール抽出後、ゲノムDNAが糸状の物質として肉眼で確認できた
( )PCR反応後、電気泳動によるALDH2遺伝子のバンドが確認できた
( )抽出ゲノムDNA,PCR産物に1モル塩酸を添加し加水分解をした
上記項目を確認の上、実験を終了しました 2005年6月24日  署名


教育目的DNA実験との比較

2002年1月より教育目的組換えDNA実験が認められました。それまでは、組換えDNA実験は研究目的で行われるものに限られていて、安全な組換え実験(よく知られている大腸菌に、毒性のないたんぱく質をつくる遺伝子を組み込んで観察する)も、市民や高校生は行うことはできませんでした。そのころ、欧米では、安全性が審査されたこのような実験を学校や博物館で行って、遺伝子組換え技術について知る機会をつくような実験のセットの販売が始まり、広く普及しました。日本でも、この技術について知り、考える機会づくりを促すためにこのような実験の必要性が唱えられましたが、それらを実施するときの手引きになるようなものがありませんでした。そこで、指針が改定され、市民や学生・生徒にこのような学習の機会が与えられるようになりました。
2005年2月からはこの指針は廃止され、教育目的で行われる遺伝子組換え実験は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」という法律にカバーされるようになりましたが、実験をすると同時にDNAの意味や働き、安全な扱い方を学ぶ大切な機会であるため、指導者のための勉強会や、指導者のネットワークが作られています。

教育目的組換えDNA実験連絡研究会:http://www.gifu-u.ac.jp/~lsrc/dnaedu/index.html
文部科学省の通達:http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/seimei/04022302.htm

ヒトゲノム、ヒトの受精、身近な内容には、全員が熱心 生徒たちの育てた植物は販売されている リンドウの新品種シンデレラ

福島明成高校について

同校で、このような授業が行われた背景には、多くの先生方のご努力がありました。SPP(サイエンスパートナーシッププログラム)の支援を受けたくても、実際の学校では理科以外の教科の授業もあるので、時間割調整など学校をあげての協力がないと、なかなか実施は難しいそうです。その点、同校の生物工学科の生徒は組織培養など、高度な技術に慣れ親しんで、1クラスしかないこの学科はクラス替えもなく、担任の伊藤先生は3年間持ち上がりで信頼関係が築かれており、主任の鴫原先生との息もぴったり。さらに専門性のある高校として積極的に運営されているなどの条件が整っていました。 シンデレラという珍しいリンドウの組織培養を行い、株を増やして農協に提供するなど、高校での研究成果が実用化されたりしているそうです。手作りいちごジャムや心をこめて育てられた桃がさわやかで、なんとおいしかったこと!


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